新人に身に着けさせたい「20の行動」

これでワンランクUP!相手も自分も責めないコミュニケーション術
立派な新人に育てよう 新人に身につけさせたい「20の行動」

日本看護協会出版会「看護」

日本看護協会出版会「看護」

新型コロナの対策に追われる医療界ですが、そんな時でも桜は咲き、新人も入ってきます。
自粛要請もあり、新人研修どころじゃないといった組織もたくさんあるかと思います。
そうは言ってもサービスの質を落とすわけにはいきませんし、新人にも育ってもらわなければなりません。
となると残るはOJTの質を上げていくことが急務でしょう。

今回はそんな社会情勢を鑑み、私が実地指導者研修や研修担当者、管理者研修でお伝えしている新人の育て方をご紹介しようと思います。
現場の指導に活かして頂けたら幸いです。

新人が身につけるべき20の行動
1,あいさつをする
2,返事をする
3,反応をする
4,メモを取る
5,確認する
6,質問する
7,調べる
8,学習する
9,観察する
10, 先輩の行動を真似する
11, 考える
12, ホウレンソウ(報告・連絡・相談)をする
13, しっかりとした言葉を使う
14, 感謝をする
15, お礼を言う
16, 謙虚になる
17, 体調の管理をする
18, 表情の管理をする
19, ストレスの管理をする
20, PDCAを回す

上記は研修で新人が取るべき行動指針として伝えているものです。
新人はこれをノートの裏表紙に貼り、いつでも目に入るようにして1年間を過ごします。
社会人としてどういう行動を取ればいいのかを示したものですが、新卒の新人指導で重要なことは「行動レベルで教えること」です。
この前まで学生だったという新人に、抽象的な指導をしても動けるようにはなりません。
どういう行動を取ることが望ましいのかを具体的に教え、その行動が取れたら褒め、その行動が取れない、または不足しているときにはフィードバックをし、その行動が取れるように促すのが効果的です。

 

あいさつをする 

人と人とのやりとりは、「あいさつにはじまりあいさつに終わる」と言っても過言ではありません。
対人援助職である我々の仕事にはあいさつはつきもの。
そしてあいさつは「先手必勝」そして、「目下の者からする」のが鉄則。
先輩や上司から「おはよう」と言われたら負け。そのくらいに思ってあいさつをしなさい。
あいさつはしたつもりでもダメです。
相手が「あいさつをされた」と思うことがゴール。
「伝わったことが伝えたこと」がコミュニケーションの鉄則で「したつもり」で満足していてはいけません。
特に、我々はマスクをしていることが多い職業なので表情が伝わりにくかったりします。

「マスクしてたからあいさつしたのに伝わらなかったのかも、、、」それは言い訳。
マスクをしていても伝えられるだけの目ヂカラや表現力をつけなさい。
と、私はこんなふうに新人の接遇研修で教えています。

また、表現力のトレーニングとしてあいさつの様子も携帯電話で撮影させています。
2人組になって「看護師の○○です。よろしくお願いいたします」と自分の携帯に動画を取り、自分のあいさつの実力を確認。
「あなたが患者さんだったらこの人に自分の体を預けますか?」と問いかけ、自分の表情や語気などを振り返ってもらっています。
携帯で動画を取る簡単な方法ですが、通常、自分のあいさつの様子は自分では見ることができないので、「思ったより笑顔がない」「自信がなさそうでこっちが心配になる」などいろんな気づきがあるようです。

スーパーなどでスタッフと合ったとき、声をかけようかどうか迷う場面があると思います。
結局のところ、あいさつとは相手とのコミュニケーションバリアーをどう破るかのツールという側面があり、そのバリアーを破るのは新人である方がいいのです。
コミュニケーションバリアーを破るのが新人だと「あの新人はしっかりあいさつができる。
なかなかたいしたもんだ」と新人の株をあげることにつながるからです。

あいさつの動画撮影をしている研修の様子をご覧頂けます→

 

表情の管理をする

あいさつをするに関連しているので、表情の管理についても触れておきたいと思います。
表情管理とは、その場面や状況にあった表情でそこに存在することを言います。
例えば、採血に自信のない新人看護師が患者さんのところにいくとき、見るからに「自信のなさそうな表情」で行ったとしたら、患者さんは「この人、失敗するんじゃないか」と一気に不安になります。
なので看護師は自信がないときでも、「患者さんを不安にさせちゃいけない。あれだけ練習したんだから大丈夫。
1回で入る!」と、自分にいい聞かせて表情を整え、患者さんのところに向かいますね。
こちらの感情を表情にだして相手を不安にさせないようにしようと配慮すること、これが「表情管理」です。
もちろん、気をつけていても不安が表出してしまうことはあります。

でも、自分の表情が相手に及ぼす影響を、「相手の視点から考えて整えよう」とする「あり方」が何よりも大切で、こうして生きている人は振り返りができます。
なので徐々にその場面、状況に合った表情ができるようになります。
逆にいうと、そうでない人やスタッフが「クレーム」をもらうことが多くなるということでもあります。
表情管理のゴールは、「他者視点で自分自身を俯瞰することができるようになる」ことです。

 

自分が失敗したときに、クスッと笑いクレームをもらう人

持続点滴をするのに一度で血管に入らないときや、処置が上手くいかなかったときにうっすらと笑ってしまう人がよくいます。
この笑いは「ゲラゲラ」というのではなく、ちょっとクスっと笑ったという感じのものです。

じつは自分が失敗したとき笑う人というのは結構、います。
患者さんから他のスタッフに「〇〇って看護師が点滴失敗したのに笑ってて不愉快だった」とクレームをもらって本人に注意することになりますが、本人は無意識でやっている言動なのでびっくりします。
じつはこれ、何度も失敗するダメな自分をあざ笑っているという状況なのですが、患者さんは「こっちは痛い思いをしているのに看護師に笑われた」と感じます。
こうしたのが典型的な表情管理失敗の例ですが、よく新人にもいます。
では、こうした人はどう改善させたらいいのでしょうか。

 

人の表情と感情のつながりを感じながらしっかりと観察するクセをつけさせる

自分の感情をメンテナンスせずにそのまま表情に出してしまう人は、人の表情から相手の感情を読み取ることが苦手です。
今、患者さんはうつむいて目を合わせず話している、きっと悲しい気持ちなんだなというふうに、人の表情から感情を察するように促します。
そして、こんな気持ちのときはどんな表情で近くにいてほしいんだろう、と考えながら患者さんの周りにいるご家族の表情を見せます。

関係がうまく行っている方々の表情がその場面、文脈に合っていることが分かると思いますので、それをモデリングさせます。
そして今度は、表情管理ができない場面の自分の気持ちをくみ取らせます。
「この人血管細いなぁ。失敗したらどうしよう」と心の声が聞こえていたりする場面で、「自分はいま不安なんだな」、と自分の気持ちをくみ取り、不安を軽減させるようにします。
「1度で入らなかったら正直に自信がないと話して変わってもらおう」というふうにです。
すると気持ちが安定します。

また、失敗しても「今回は失敗したけど、これをバネにしてがんばろう」と、自分を受容させるようにします。
要は失敗したとき、自分をあざ笑うという習慣をなくさせることが大事です。
そして、「不安な表情は患者さんをも不安にする。しっかり表情管理しなくちゃ」と自分に言い聞かせてから患者さんのもとにいくように促します。
自分の表情は見えませんが、相手の表情を通して自分が今、どんな表情をしているのかを想像することはできます。
向かう相手は鏡です。
こちらの表情管理が上手くいっていれば、患者さんも我々を信頼した表情をするものです。
失敗したとき、笑う人というのは自分自身とうまく調和できていません。
自分の気持ちをくみ取る習慣もないので自分を信頼することもできません。
自分を信じてない人を人が信頼してくれることはありません。

たかが表情、されど表情。
コミュニケーションの前提は自分で、自分と調和できる人が対峙する相手とも上手くコミュニケートできるのです。
あいさつに表情管理といった新人に身に付けさせたい行動に関して指導の方法をお伝えしました。
具体的でタイムリーなOJTは集合研修に勝ります。現場でお役に立ててくだされば光栄です。

 

関連記事一覧