現在進行形でお伝えする「燃えるチーム」のつくり方2

ワンランクUPポイント
1、多職種チームは 1人ひとりが主役。お互いをプロとして尊敬することが重要。
2、メンバーとぶつかることを恐れず、とことん話し合い 理解を深める。
3、異業種と交流して視野を広げることも有効。

「燃えるチームのつくり方」1 と題し、私の新規チームの「ビジョンの明確化」と、個人の持ち物(自己資源)を調べてチームとしての「強さ」と「弱さ」を分析する「SWOT分析」を行った軌跡をご紹介しました。

地域包括ケアや地域共生社会の実現が叫ばれている昨今、病院では退院支援等で、患者さんやご家族はもとより、ケアマネジャーや、在宅診療所、訪問看護ステーション、介護事業所などとのやり取りが増えてきていると思います。

今回はこのような時代背景に合わせて、多職種と本当の意味の「チーム」になって医療を提供するために必要なことを考えてみたいと思います。

医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士、介護福祉士といった本当に多職種の方々160名以上が参加される勉強会を主催、運営されている「ふれあい歯科ごとう」代表の五島朋幸先生と、その勉強会の主要メンバーでもあり、「訪問看護ステーションやごころ」の副理事長でもある飯塚千晶さんと一緒に、どんなあり方やノウハウが多職種連携に必要なのかをディスカッションした内容を皆様にお伝えします。病院内外の多職種連携、そして協働の参考にしていただけましたら幸いです。

多職種勉強会の目的は実力の底上げ

最近、看護協会や病院から「多職種連携について」というテーマでの研修依頼が増えました。私自身も来年から訪問看護ステーションを立ち上げるので、あらためて多職種連携について、五島先生、飯塚さんにお話を伺いたいと思ってました。
奥山
奥山
多職種連携と言えば、五島先生を差しおいて語れません。新食研(五島先生が主催されている食支援の専門家による新宿食支援研究会)メンバーは本当に多職種で、大勢いらして、勉強会の開催も多いですけれども、ズバリ多職種連携のコツをお聞かせくださいますか。
奥山
奥山
五島先生
五島先生
研究会参加者一人ひとりの実力を上げることを目的にしているところでしょうか。
五島先生
五島先生
ケアマネさんや看護師さんが新食研の勉強会でいろんな人に出会って見識を広げ、実力を上げて仕事の質を上げてくれればいい。逆にそれしか求めていないです(笑)
五島先生
五島先生
そもそも出入り自由ですし。最初(2009年)16人だった会員が今は160人。いまさらながら、会員の定義を決めなきゃなんて言っているところです。
五島先生
五島先生
コロナ禍でセミナーができなり、5月からweb配信を始めると、全国区になってきて、新宿っていう名前も外さなきゃという感じです。
飯塚さんが研究会で口腔ケアの講義をされたとき、私も参加しました。
奥山
奥山
飯塚さん
飯塚さん
そうでしたね。ありがとうございます。

多職種チームは1人ひとりが主役

数年で10倍の会員数!しかも勉強会は19時開始など勤務後にもかかわらず、自発的に大勢の人たちが集まって勉強しています。参加すると五島先生が必ず1人ひとりに声をかけてくださるので、自己効力感が上がります。
奥山
奥山
介護職が看護師を怖がって関係が悪いという話をよく聞きますが、先生の勉強会では、医師も看護師も介護職も、みんな平等という感じがして、とても居心地がいいんです。
奥山
奥山
五島先生
五島先生
人間に上下はないですから。それぞれの専門性を発揮して、みんなで1人の人をよくする。1人ひとりが主役である多職種のプロが集まって、「よっしゃ、チームでめちゃくちゃ患者さんをよくしようぜ!」こういう感覚がいいんじゃないかと僕は思ってまいす。
そんな五島先生の「あり方」が参加者に伝わり、「人として認められている」という気持ちになるんですよね、きっと。そういう会だと自然と人は増えますよね。
奥山
奥山
飯塚さん
飯塚さん
本当にそう思います。

異業種との交流で視野を広げる

五島先生
五島先生
新食研では、企業ともいろいろとコラボしています。当初は日本介護食品協議会の参加企業がほとんどで、「協議会だけではできないことを、うちの研究会でやってみたら?」ということで場所を提供しはじめました。win-winでやっていると思います。
医療畑にいると、企業との業務提携は苦手という方もいらっしゃるので、五島先生の取り組みは素敵ですね。企業と組むことで世界が広がっていくこともたくさんありますものね。
奥山
奥山
さて、飯塚さんのステーションは異業種の方が理事長をされていらっしゃいますが、正直、ぶつかったということはないものでしょうか。
奥山
奥山
飯塚さん
飯塚さん
たくさんあります。
飯塚さん
飯塚さん
ステーションの開所式が終わった後、理事長に朝の4時まで「フワフワしてるんじゃない」って詰め寄られ、とことん話しました(笑)。しかも、その日の朝8時から勤務っていう….
飯塚さん
飯塚さん
でも、あの時間があったから今があると思えます。近隣のステーションやケアマネさんにあいさつに伺って、自分の非常識さも痛感しました。名刺1つも満足に渡せない。そんな人の話なんか聞いてもらえないと思い知りました。
病院では、管理職にならないと、なかなか名刺交換はしないですもんね。営業に行って、そうしたことに気づけたわけですね。飯塚さんは27歳で所長になられたんですよね。
奥山
奥山
飯塚さん
飯塚さん
そうなんです。27歳くらいだと病院では中堅で、調子に乗ってました(笑)。でも異業種の理事長から「なんでそんなに上からなんだ」って言われたりしました。最初はわからなかったんですが、営業に行って思い知らされて。今は理事長が異業種だったからこそ、そこまで気づいてくれたし、言ってくれたのがよかったと思っています。
五島先生
五島先生
おー、さすが!
チームコーチングの手法では、メンバーにわざとぶつかってもらうストーミングという演出があります。メンバー内で遠慮していては本当の意味で一丸にはなれず、「グループ」から「チーム」に成長することはできません。飯塚さんのステーションは、開所式の後にストーミングが起こったのですね。今ではもうぶつかることはありませんか?
奥山
奥山
飯塚さん
飯塚さん
いえ、月に1回はあります。トップは数字しか見てないですから。(笑)現場は違います。現場のことは私に任せてくださいって言い切っています。
異業種だから看護のことわからないでしょ!という気持ちはありませんか。
奥山
奥山
飯塚さん
飯塚さん
そこは、しっかり話し合って、わかりあえるようになりました。今では逆に、理事長の業種が違うからこそ、視野が広がっていると思うことのほうが多いです。
五島先生
五島先生
理想的なチームになったわけですね。

「ほかの職種はどう感じるか」を考える

たまたま一緒に働く「グループ」から「チーム」になったんですね。1つの職種のチームでも、まとまるのには時間がかかると思います。それが多職種ともなると、教育課程も立場も価値観もまったく違いますよね。五島先生はよく多職種チームをまとめられるなぁと尊敬しています。
奥山
奥山
五島先生
五島先生
医師や看護師など、他の職種の方々がどう感じているかをちょっと考えることが必要かな、と思ってます。以前に知り合いが、病院で勉強会を開催するからせっかくだし近隣の人たちと一緒に学ぼうと思って誘ったけど、介護職の人たちは「病院に呼び出された」と怯えたという、ちょっと笑えない話がありました。
五島先生
五島先生
それを聞いて、僕なら、自分たちが介護の現場に出向いて勉強会をやればいいのにって思うんです。それだけ職種によって感じ方の違いがあるということがわかる出来事でした。
飯塚さん
飯塚さん
そうですよね。
そうですよね
奥山
奥山
五島先生
五島先生
僕らは専門職として自分の仕事に誇りを持ってやりきることが大事だと思います。ヘルパーはヘルパーにしかわからないことがある。自分はこの分野のプロだと、自分に自信を持ってほしい。
五島先生
五島先生
そして、そういう人たちが1つになって、患者さんをとことんよくする。チームで結果を出す。そんな意識が大事だと思います。
お二方からお話を伺って、まずは自分の専門性を追求してプロ意識と自信を持つこと。ぶつかることを恐れずにとことん話し合うこと。そして、「チームで患者さんをめちゃくちゃよくする」という結果を出すこと。これらの要素が、多職種が「チーム」になるために必要なことなのだとあらためて感じました。今日は本当にありがとうございました。
奥山
奥山

「ふれあい歯科ごとう」代表の五島朋幸先生、「訪問看護ステーションやごころ」副理事長の飯塚千晶さん、ご協力ありがとうございました。新型コロナウイルスの感染予防のためにマスクを着用してお話をお伺いしました。

 

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