「しない・させない」ハラスメントの定義と種類 セクハラやパワハラを受けたら?
「働き方改革」の実施に伴って、時間外労働が月に45時間以内と規制されたり、有給が取りやすくなったり(!?)と、医療の現場も少しずつ「働きやすい職場」に変わっていくような気配が感じられます。
しかし、働きやすい職場とは休みが取れるとか労働時間だけの問題ではありませんよね。
新卒3年以内の正社員が勤務先を離職した理由の第4位は「人間関係がよくなかったため」。※1
職場の人間関係の問題は大きく、その中にはハラスメントも多く含まれているでしょう。
平成29年度、労働局への「いじめ・嫌がらせ」による相談件数は72,067件とトップとなり、ハラスメントによる死者も出るなど問題は深刻化しています。
厚労省は、働き方改革の一環で成立した労働施策総合推進法(旧雇用対策法)の中に、パワハラを「許されない行為」と位置付けた上で、企業側にパワハラ防止のための雇用管理上の措置を義務付け、平成32(2020)年から施行される見込みとなりました。
少しずつ動き出しているハラスメント対策ですが、あなたはハラスメントとは何かをきちんと把握していているでしょうか?
※1参考:独立行政法人労働政策研究/研修機構(JILPT)調査シリーズNo.164(平成29年2月)
※2参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書公表
目次
ハラスメント(いじめ・嫌がらせ)の定義と種類
ハラスメントについて詳しく知ると、「知らずにハラスメントをしていた」、「嫌だと思っていたけどハラスメントに当たるとはわからなかった」といった事態を防止できます。
「知っている」という方も、ハラスメントについてもう一度見直してみましょう。
この記事では、「そもそもパワハラとセクハラは違うのか?」、「マタニティ・ハラスメントはパワハラの中に含まれるのか?」といった素朴な疑問への回答から、ハラスメントの定義・種類までを紹介します。
セクシャルハラスント(セクハラ)とは
職場のセクシャルハラスメントとは、「職場において相手の意に反する性的言動を行うこと」です。
セクハラは2つのタイプに分けられます。
対価型:性的な内容の発言や行動に対して、従業員が拒否、抵抗したことにより解雇や降格、減給などの不利益を受けること
環境型:性的な言動により従業員の就業環境が不快なものとなり能力の発揮が十分にできない状況が発生すること
上記のうちどちらか、もしくは2つともが該当する場合、それはセクハラです。
セクハラの責任
1989年、日本で初めて性的いやがらせに関する訴訟が行われ、「セクハラ」という言葉が浸透し始めました。その後、改正男女雇用均等法によりセクハラ防止のため事業主に対して雇用上の管理が義務づけられました。
セクハラで精神的損害を負った場合には、慰謝料を請求することができます。また、セクハラが原因でその職場で働けなくなった場合には、本来もらうはずだった給与を請求するケースもあるでしょう。
さらに、悪質・継続的なセクハラには刑事責任となることもあります。
最近、関東の病院で当直医の男性が女性の看護師を当直室に呼び出しわいせつ行為を繰り返した事件が公になりました。(勤務していた看護師は自主退職)また、2年前には放射線技師が患者さんに自身の下半身を触らせたとして強制わいせつ罪で逮捕されました。
これらはセクハラを一気に超える刑事責任。
あなたがもしこんなめにあっていたなら上司に相談も何もありません。犯罪なのですからすぐに警察に連絡しましょう。
セクハラは被害者がどう感じたかで決まる
好みの男性に「壁ドン」されるのはよくても、苦手な上司に壁ドンされたら「セクハラ」もしくは「暴力」になります。
被害者がどう感じているかがとても重要なのです。
セクハラした行為者は「本人も望んでいると思った」とよく主張しますが、会社の上司から迫られたとしたならクビになったら大変と、露骨に嫌な顔もできないかもしれません。それを同意していたと見られてしまうのはとても不愉快なことです。
黙っていたり無視していたりというだけでは、「同意していた」と取られる可能性もありますので、まずは勇気を出して拒否しましょう。
また、拒否したことで再度ハラスメントに合うことも考えられます。(セカンドハラスメント)
組織にハラスメントの相談窓口があれば、そこへ。なければ信頼できる上司や同僚に早めに相談し対処しましょう。
仮にあなたが看護師だったとして、「身近な上司である看護部長や師長にも何度も相談をしたが、事態の改善が見込めない」といった場合には、すぐに労働局に相談しましょう。無料です。
意外なセクハラのシーン
「セクハラ」という言葉が浸透してきたおかげで、私は、体を触られるなどの直接的なセクハラは昔よりも減ったのではないかという気がしています。しかし、「身体に触れる」だけがセクハラではありません。
ある病院で実際に起こった出来事ですが、外見的にとても美しく女性らしい看護師が就職してきました。一ヶ月後、看護部長に「自分の性自認は男性で、どうしても女性の更衣室が恥ずかしい」との申し出があったそうです。
看護部長はつい、「そんなにきれいなのに男性だなんてもったいない!」と言ってしまったといいます。
気持ちはわかりますが、やはりこの発言も「セクハラ」にあたります。
セクハラの例
セクハラは男性から女性へのハラスメントだけを指すのではなく、女性から男性への言動、同性間のものも該当するということを念頭においておく必要があります。
【男性から女性】
「イライラしてるね、今日、生理中なの?」
「女性は機械オンチだから仕方ないか」
「もっと女らしくしないと、彼氏できないよ」
【同性間】
「オペ室の〇〇さんと脳外の〇△さんつきあってるらしいよ」
「あれ?昨日と同じ服だね、どうしたの?」
【女性から男性】
「もう彼女と付き合って長いんだからそろそろ結婚しないとダメだよ」
「男のくせにだらしないなぁ」
これらの例を見ると、男女関係なく「性的な言動はセクハラにあたるので控えましょう」ということですね。
「そんなことより仕事しよ」っていうことなのでしょう。
マタニティ・ハラスメント(妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関するハラスメント)
マタニティ・ハラスメントとは、妊娠、出産した「女性従業員」や育児・介護休業等を申請、あるいは利用した「男女従業員」が不利益な取扱いを受けたり、就業環境が害されたりすることを言います。
妊娠、出産したことに対する「状態への嫌がらせ型」と制度等を利用することに対する「制度利用等への嫌がらせ型」があります。
耳を疑ってしまうこんな言葉。ある病院で職員満足度アンケートをとったとき、「上司のどんな言動を見習いたいか、見習いたくないか」という記述式の質問にこんな言葉がそれこそたくさん書かれていて驚きました。これがいわゆるマタニティハラスメントです。
これがいったんは出産、育児を経験したことのある上司からの言葉だと「自分だってそういうときがあったはずなのに…」と、なおさらショックを受けそうですが、残念ながら人間は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ものなのかもしれません。日本が少子化に陥っているのもこうした職場環境の影響が大きいでしょう。
私たちは、妊娠したスタッフを心から祝福できないような人手不足や職場の風土こそを変えていく必要があります。
そして今現在、こうした言葉に傷ついているという方は「自分が言われて嫌だったことは言わないぞ!」と、現場を本気で変えていきましょう。
ハラスメントを受けたら
まずは、拒否する。セクハラなら「そういう言動はやめてほしい」としっかり伝えましょう。
のちのち行為者から「拒否しているそぶりがなかった」と言われてしまう可能性があるからです。
まずは、勇気をだして拒否指摘録に残すことが大切です。
また、妊娠、出産して短時間勤務や残業制限等の制度を利用したら繰り返しイヤミを言われたなどのマタハラを受けたときも、同じく証拠を残すことが重要となります。
発生した日時、場所、具体的な内容(いつ、どこで、誰が、何をしたか、どのような発言をしたのか、それに対してどう感じたのか、周囲に第三者はいたか など)の記録を取り、電話なら録音し、手紙やメールなら保存しておくことが重要です。
ハラスメントの記録について
ここでそもそも個人との会話を録音してもよいのかどうかで迷うことがありますよね。
個人との会話の録音は「秘密録音」といって「盗聴」とは違い罪にはなりません。裁判の証拠として認められたケースもどんどん増えています。
相手の人権を侵害してしまうかもしれない。これはその通りです。
その録音が相手の人格を侵害したと損害賠償を求められる可能性はゼロではありません。
ですが、「人権を傷つけられている場合は、泣き寝入りばかりではよくない」と私は思いますが、いかがでしょうか。
ハラスメントで悩んだことがないという人の中に「録音なんて人としてどうなの」とかいう人がいますが、録音よりも前の「ハラスメントって人としてどうなの?」から始めないといけません。
ハラスメントを受けている人の気持ちになって「そこまで追い詰められているのか」など共感力を発揮してほしいところです。
でないと、いじめに関して『いじめられる側にも問題がある』と言う人と一緒の立ち位置にいることになります。
「録音ってどうなの」も行き過ぎればモラル・ハラスメントです。
ひとりが一台スマホを持つ時代。これからは録音されてもなんの落ち度もないという会話を心がければいいだけですし、私はそのほうが個々のコミュニケーション能力は進化すると思います。
ハラスメント相談窓口まとめ
ここでは、ハラスメントを受けた場合に相談できる窓口を紹介します。
「これってハラスメントでは?」と思ったら、一人で抱え込まずに相談しましょう。
セクハラ、マタハラに関する相談窓口
セクシャルハラスメント、マタ二ティハラスメント(妊娠・出産・育児休業・介護休業等)に関するご相談は、お近くの都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談しましょう。
▶︎都道府県労働局雇用環境・均等部(室)所在地一覧
開庁時間 8 時30 分~ 17 時15 分(土・日・祝日・年末年始を除く)
パワハラに関する相談窓口
パワーハラスメントに関するご相談は、お近くの総合労働相談コーナーに相談しましょう。
最寄りの施設は厚生労働省のサイトで検索できます。受付時間は労働局によって異なります。
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ハラスメントは人ごとではありません。
気づかないうちに、自分も人にハラスメントを行なっている可能性があります。
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