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観察する、先輩の行動をまねする、調べる、学習する、ホウレンソウする

ワンランクUPポイント

  1. 「見てまね」ことはいつの世でも学習効果が高い。
  2. 「調べることは楽しい」「知識が広がることはうれしい」という成功体験で、調べ学習の定着化を。
  3. ホウレンソウを繰り返すことで精度を上げさせ、調べ、考え、選び責任を負う姿勢を育てる。

高い学習効果をもたらす「まねぶ」

新人を教育するとき、まずは自分の行動の意図を新人に伝えて「ちょっと見ててね」というところから始める人が多いと思います。新人は、まずは先輩の行動を「観察」して、示された意図とつなげ、「ああ、なるほど」と考えを深め、次に先輩の「行動をまねする」段階に入ります。
学ぶとは「まねぶ」と同じ意味合いでもあります。模倣学習という言葉もありますが、「見てまねぶ」ことはいつの世も学習効果が高いものです。コーチングでは「モデリング」と呼びます。

高校で弱小テニス部の顧問をしていたころ、インターハイ上位となる学校は何が違うのかと考え続けたことがありました。考え抜いた結果「よい戦績を残す学校の生徒は皆フォームがそっくりだ」ということに気づきました。
球拾いをしながらインターハイ上位を勝ち取る先報の姿を目に焼き付けて練習するうちに、いつしか先輩のフォームにそっくりになっていき、後輩も試合に勝つようになる。これぞ「まねぶ」です。
コロナ禍で学習も実習もオンラインで過ごしてきた新人にとって、「目の前の先輩のOJT」は何にも増してりアリティがある「まねぶ」であり、学習効果が高くなります。現にコロナ禍で就職してきた新人は学校での「勉強とは全然ちがう」とOTJの研修で感想を述べることが多いです。

自分で調べる、学習する

「最近の新人はなんでも聞いてくる」そして「考えない」とも言われます。私も研修等で新人にかかわっていますが、たしかにそのきらいはあると思います。
一方で、新人は「なんでもわからないことは質問してねと先輩に言われたから聞いただけです」と返してきます。「たしかに」(笑)。

1.「調べることは楽しい」「知識が広がることはうれしい」という成功体験を

こんなすれ違いをなくすため、新人を教えるとき、「まずは自分で調べる」ことが大切だと教えましょう。患者にかかわることですぐに「聞いて動く必要があるとき」は、すぐに「質問の答え」を教え、まずは対応させます。
でも、勤務時間の終了間際で十分に時間があるようなときは、「今日、何か聞きたいことある?」と質問を引き出し、「じゃ、それは明日までいったん調べてレポートにして。明日、答えを聞くからね」と課題にして返すようにします。

「知識は自分の体を使って調べるほうが記憶に残るんだよ」と自分で調べ学習をするメリットも教えましょう。さらにこのとき、同時に調べ方のコツも教え、「調べることは楽しい」「知識が広がることはこんなにうれしいものなのか」という成功体験を積ませて、「自分で調べ学習する」という行動が定着するようにしてあげましょう。

2. 教育は双方向のコミュニケーション:教わる側も教える側のモチベーションも引き下げないこと

なんでもすぐに聞いてしまう人は、検索したり、そもそも読めない字や知らない表現に関して調べるなどに時間と労力を使っていません(人に聞くほうが楽だから)。調べる苦労を全然していないので、ありがたみがありません。だから教えてもらってもすぐに忘れてしまうのです。

「あの、これって⋯」と、いくら新人が遠慮がちに質問したとしても何度も同じことを聞かれた先輩側は「あ、それ、もう3回目。前に教えたとき、どっかにメモしてたのに⋯⋯」とモチベーションが下がります。よく新人側の「やる気]を引き出すことが大事だと言われますが、実は新人の態度や「あり方」次第で、教える側のモチベーションはかなり左右されます。指導者だって人間ですから当たり前です。

私は年間200回はど講義をしていますが、ノリノリで話すときもあればそうでないときもあります。参加者がやる気満々で目がキラキラと輝いている人ばかりなら、次のセミナーで話す内容にもチラッと触れちゃおうかな、なんてことにもなります。参加者のやる気が講師のやる気をも引き出すのです。
こんなふうに人間のコミュニケーションは双方向。

新人側にも「もっともっと教えてもらったほうが得だよね」くらいの心意気が必要なのです。自由競争の世の中ではコミュニケーション能力に優れ、仕事の質が高い人が出世していきます 悪平等が通用するのは学生までです。

ホウレンソウの精度を上げる

1.コミュニケーション不足がインシデントを招く

「反応しない、返事もしない」が通用するのは新人時代だけで、そんな傾向がある人も先輩になっていきます。私がうかがっている病院でインシデントが多いのは、この新人時代に反応が薄かった人々です。

新人のうちはプリセブターや誰かがその仕事を見守っていることが多いので、あまりインシデントになりませんが、2年目、3年目にもなってくると、いつまでも誰かが見ている訳にもいきません。なので、今度はミスが目立ってきます。インシデントを分析していくと「1回、確認してくれたらよかったのに」ということがはとんどで、あらためてコミュニケーションが大切だと思い知らされます。

2.ホウレンソウは患者のことを第一に考えて

インシデントを起こした人に「なんで、先輩にちょっと確認しなかったの?」と聞くと「なんだか先輩が忙しそうで声をかけにくかったので⋯」という人が多いのですが、これは自分自身の問題です。
忙しい先輩に声をかけて嫌な顔をされるのが怖いというのは、その先にある患者のことではなく「自分のこと」を第一優先に考えているということです。
こうした傾向のある人は患者を守るためにもっと強くなる必要があります。

相手が忙しそうであったとしても、自分の仕事の進携状況を報告したり、必要なことを連絡したり、相談したりすることはチームで仕事をしていく中で重要なことです。忙しくて声をかけられない状態なのであれば、紙に書いて見えるところにおいていくとか、なんとか知らせようと思えば方法が浮かびます。
ホウレンソウの内容は、「仕事を一緒にやる上でどんなことを共有しておく必要があると考えているのか」ということが明らかになるシーンでもあります。

時には「それで何が言いたいの?」とか、「なんで先に相談しなかったの?」などと、先輩に突っこまれることもあるでしょう。でも、相手にどう思われるかということばかりに集中していると、ホウレンソウの精度が上がりません。

3. 自分で調べ、考え、選び、責任を負う

「相談」と称してなんでもかんでも聞いてくる人もいます。慎重すぎてそうなっている場合もありますが、自分で「考える]「選ぶ」ということから逃げて「相手が言ったから」と責任転嫁をしたいという本音からそうしていることもあります。
「考える」「選ぶ」ということには責任が伴います。その責任を背負う覚悟がホウレンソウの場面を通して現れるだけなのです。仕事ができるようになる人はこの部分が違います。ときに判断を誤ることもありますが、「ああ、失敗した。ここで報告しておけばよかったのか」とすぐに現実を認め、振り返りができます。ですから、改善ができるのです。

「自分で調べずにいると相手の時間も奪うし、判断を他の人にしてもらっていることになるから伸びないよ」といくらフィードバックしても、なかなか改善できない人もいます。自己主張が弱くおとなしそうに見えてもなかなかホウレンソウの精度が上がらない人もいます。
それらの人に共通しているのは、「自分で考えない、調べない、判断しない」そして「できていない自分の現状を認められない」ということです。時にはここに「謝れない」というのも加わります。

4.ホウレンソウができないことは規則性の部分の「怠惰」「さぼり」として評価される

消極的で静かだと反抗的ではないので、自己主張ができないとか、前に出られないとか、「メンタルが弱いから」などにすり替えがちですが、「ホウレンソウの精度が上がらないいつまでもすぐに聞いてきて自分で判断しない」という人も、人事評価表の規則性(日常の服務規則の遂守の度合い)においては「怠惰」「さぼり」として低評価がつきます。
仕事はたとえ新人であっても、PDCAを回し、仕事の量をこなし、その質を上げていく必要があるのです。

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