看護学校教員を1年で退職したSさんのケース(後編)

※看護展望 2015-2 Vol.40 no.3掲載、ブログにするにあたりメヂカルフレンド社より許可を頂いております。

前編はこちら

看護学校教員を離職させないために

 

学校側で工夫したいこと

教員全体の授業研究の機会を多くし、教員どうしが教え合い褒め合う風土を演出する

可能な限りベテラン教員とのTT
(teamteaching:2人以上の教師が連携をして、一人ひとりへの指導をはかる指導方法および形態のこと)
での授業を組むのはもちろんですが、授業の設計、準備、講義の仕方と評価、
振り返りの基本を新人にしっかりと教え込むことが大事だと思います。

基本の考え方にのっとり、設計、準備し、1回の講義実践の経験を学生の理解度や反応を鑑みながら
振り返っていけば、なぜ講義がうまくいったのか、またはうまくいかなかったのか、その理由がわかります
うまくいく講義が多くなればどんどん自信がつきます
自信がついてくると受け持ち教科が増えても苦にならないので、
教務主任から「この教科もお願いできない?」と言われてもチャレンジしようと思えます。
講義回数が増えると講義の腕が上がりますから、学生にとってもプラスの作用があります。
うまくいかなかった講義に関しては、基本にのっとり
「ここはこうすればよかったな」という改善策を見つけられるので、次の実践に生かせます。
つまり講義の設計、準備、実践でPDCAサイクルを回すことができるわけですが、
基本的な考え方が身についていなければPDCAは回りません。
ですから、何度実践をしても“これでいいのかな?”と不全感がつきまとい、自信が形成されるまでにはいかないのです。

臨床の場面でもプリセプターが新人を教えることができるのは、
“新人より自分のほうが業務ができるぞ”という自信が根底にあるからですが、
看護教員の世界は、実は“自分の講義や学生指導はこれでいい”という自信をもった方々が少ないので、
新人教員が入職してきたときにも“教えないというよりは、教えてあげるだけの余裕がない”というのが
正直なところなのではないかと思います。

基本ルールに沿って積み重ねていけば経験に伴い自信が形成されますが、
看護学校の現場はこの教員の仕事の根幹である部分がぐらついているので、
新人教員を迎え入れるだけの風土ができにくいのだろうと思います。
ですから、学校側ではまずは、授業の設計、準備、講義の仕方、評価の観点、振り返りの仕方を
しっかりと新人教員に教えられるように指導を標準化しておきたいものです。
標準化する際、看護教員は様々な機関で養成されてきますから、いろいろな考え方が出てくるでしょう。
しかしそのほうが広がりがあってよいと思います。
様々な考え方を何度も練って、学校独自のものを構築されるとよいでしょう。

私は教育コンサルタントとして、病院で新人指導の教材を現場の方々と作成していますが、同様のやり方をしています。
新人教員に教えるための教材を作ることは
それまでほかのスタッフが自己流でやってきたことを統一化するよい機会にもなるはずです。

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定期的な授業研究と評価

次に、長期の休暇などを利用した定期的な授業研究と評価をおすすめします。
これは副校長や教務主任といった立場のある方が、しっかりと評価するところまで行うことが大切です。
「ここはこの点がよい」「この辺はこうしたらもっとよくなる」というふうに
具体的に個別にフィードバックをすることが各教員の講義力を伸ばします。
評価することに自信がないという学校では、評価を外部委託されてもよいと思います。

私は夏休みに講義力アップの教員研修に呼ばれることが多いのですが、
研修の次の日に実際に教員の皆さんが15分程度の講義をなさる学校があり、とてもよい取り組みになっています。
授業研究を何度も経験されている学校の先生方はやはり講義力がとても高いですし、
ほかの教員の講義を褒め合う風土ができあがっているな、と感じます。
「100回の聴講より1回の講義」です。折に触れ、学校全体で授業研究に取り組むしくみをつくることが、
今いる教員も伸ばし、今後入職してくる新人教員をも伸ばし、さらには教員どうしで教え合い、
ほかの教員を褒め合う風土をつくります。
積極的にこうした機会をつくっていきたいものです。

教員個人としてできること

同期や意識の高い教員どうしで講義力を高める研修に参加したり、互いの授業を受け合いながら共に学び合う

学校側で授業研究などを行っていない場合、教員自身で気の合う同僚と学び合うことを大切にしてほしいと思います。
私の教員向けセミナーにも学校の同僚どうしでお越しになる方々がたくさんいらっしゃいます。
そういった方々が勤務されている学校は必ずしも教員の教育に熱心とはいえない環境だったりしますが、
皆さんのモチベーションがとても高いのです。
そうした方々は口々に学校の問題点を話されますが、そのぶん仲間の連帯感が高まっているように感じます。
学校側が熱心でなくともわかり合える仲間がいれば、なんとかやっていけるものなのだとも思います。

 

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教員どうしの支え合いがなく、新人をかばうような教員がいない

Sさんは授業に自信がもてずにぎりぎりの状態だったときに国試担当に抜擢されました。
このとき、支えてくれる先輩がいたなら離職までに追い詰められることはなかったのではないでしょうか。
さらに言えば、“国試100%合格”を達成できなかったことは学校全体の課題なのであり、
1人の教員のせいではありません
Sさんがお勤めだった学校には、悪い結果を担当の教員に押しつけるようなよくない風土があったのでしょう。

残念ながらこういった風土は、教員ひとりの力では変えられません。
これを払拭するには、副校長や教務主任が指揮をとり教員全員で本腰を入れて改革をしなければならないでしょう。
新人教員の離職率が高い学校の対応として、新人が退職してから3か月が過ぎた頃に改めて本人に連絡し、
退職あるいは学校の実情をお聞きになることをおすすめします
人は退職時には、次の職場に圧力をかけられるのではないかなど、
いろいろなことを心配して本当に思っていることを話さないことが多いからです。
落ち着いた頃を見計らって聴くと、実は教員間の人間関係が悪いだとか、嫌がらせがあるだとか、
学校現場で起こっていることがいろいろわかってきますので、次にそうしたことができなくなるようなしくみを
つくったり、嫌がらせをしていると思われる教員と個別に面談をしたりなどの対策を取ることができるようになります。
結局、Sさんのケースは教員のゆきづまり感に関するアンケート結果の第1位である「教員間の人間関係」、
第4位「適切な発問をして学生の思考を発展させること」、第5位「学生に基本的な学力を定着させること」の
3点についてゆきづまりを感じ、結果として退職に至ったといえるでしょう。

われわれはSさんのケースから学び、第二のSさんを生み出さないように様々な取り組みをしていく必要があります。
看護教育に意欲を燃やし学校現場に入ってきてくれる新人教員がやりがいをもって教育活動に専念できるような
環境づくりを目指していきたいものです。

この場をお借りして、赤裸々にご自身の体験を話していただいたSさんに感謝申しあげます。

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