末期がん患者を支えたご家族の後悔の受け止め方 「乳がん、切除させた方がよかったんじゃないか」
目次
皆さんなら、がん患者のご家族の後悔や医療不信にどう向き合うでしょうか?
末期がん患者を支えたご家族の後悔 「乳がん、切除させた方がよかったんじゃないか」
弊社コーチング大会にクライアント役として参加した村田さんは、今年の3月に乳がんを患う妹さんを亡くしました。
『いつか子供を生んで母乳で育てたい』
という熱い思いをもつ独身の妹さんは、乳房を切除せずに温存しながら免疫療法や民間療法で治すと決心し闘病していました。
でも最後は全身にガンが転移し、激痛と戦う中で息を引き取られました。
「切らずに治す」と、強い意志を持つ妹さんに村田さんやご家族は「切除した方がいいんじゃないか」とは、とても言えませんでした。
免疫療法にこだわる妹さんは暗示にかかっているようなところがあり「痛み止めは免疫力を下げる」と思い込み、痛み止めを使うのを断固拒否していました。
痛みのために気絶して、救急車で運ばれることもしばしばありました。
その度に、遠方に住む村田さんが新幹線を使って妹さんの看病に通うという日々。
家族も命がけで支えてきましたが末期の苦しみ方を見るたび
「やっぱり力づくでも乳がんを切除をさせた方がよかったんじゃないか」
「切っていたら夏を越せたかもしれない。なぜ強く切ることを勧めなかったのか。切らないと言い張る妹と、向き合うことから逃げていたんじゃないのか」
村田さんの自分を責める気持ちは日に日に強くなっていきました。
また、民間療法を勧める医師に「こんなになるまでほっておいて。もう全身転移。この調子じゃ年内は持たないね。」と突き放されたり、治療費以外の高額なお金を要求したりするような医師との出会いですっかり医療不信に陥ってしまった村田さん。
コーチング大会ではこんな状態にある村田さんを癒そうと3病院の方がコーチングに挑戦しました。
「一重の輪のコーチング」
後悔という過去からタイムラインを未来に導く 目標の明確化
①「今後、どんなふうでありたいですか」
竜操整形外科病院代表の中澤看護師は、「切らせておけばよかった」と涙ぐんで後悔する村田さんに、①「今後、どうありたいですか?」と尋ねました。
これは、「一重の輪のコーチング」の目標を明確にするという質問です。
後悔しているご家族には、「お辛いですね」とか「後悔されているんですね」と感情を反映したりしがちですが、それはさらにご家族の涙を誘います。巷の傾聴トレーニングなどでよく言う「切らせたほうがよかったと思ってらっしゃるんですね」という単なる言葉の反映(オウム返し)も、こうしたヘビーな場面にはご家族の感情が優位にするだけなので適しません。
「過去や相手の気持ちを受容する」のが目的であれば、これらもいいかもしれませんが、後悔などの感情の場合は、未来に焦点を当てることが相手の気持ちを穏やかにしてくれることが多いのです。
「辛い後悔という気持ちを持つ現状」から「未来はどんなふうでありたいのか」と、気持ちを未来に向けていき整理していくのです。
中澤さんに「どうありたいか」を問われ、村田さんはなんと「妹のやり残したことをやって妹の分まで生きていきたいという気持ちがあるんですが・・・」と即答します。
中澤さんが「妹さんがやり残したこととは具体的に何ですか?」と聴くと、それは、妹さんが行っていた「人と人をつないでいくイベントの開催をサポートする」というものでした。
中澤さんは「イベント開催のサポートをする」ことをゴールとして設定しコーチングを進めていきました。
相手をリソースフルに導き、ゴールを達成したいという欲求を高める
②ゴールを達成すると何が得られるのか
笑顔で安心した様子。ここで村田さんがリソースフル(自分には十分な能力があり「できる」と自己効力感に満ちている状態)になっていることを確認し②のゴールを達成する(妹さんのやり残したことをやる)と何が得られるのか?の質問のゴールとしました。
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ゴールを阻む可能性のあることを確認しておく
③ゴールをめざすのを止めるものは何か
村田さんがリソースフルになった状態で中澤さんは、「妹のやり残したことをやって妹の分まで生きていきたいという気持ちはあるんですが・・・」という下線部のセリフに目を向け、「ゴールをめざすことを止める可能性のあること」を聴いていきます。
すると、村田さんは
1、もっと妹に何かできたんじゃないかと思う気持ち(後悔)
2、まだ亡くなって間もないのにすぐに気持ちを切り替えていいのだろうかという考え
3、もっと悲しみに打ちひしがれていないといけないんじゃないかという考え
上記のこれらは、「妹さんのやり残したこと(イベントで人と人をつなげる)をやり、妹の分まで生きる」ことを止める可能性がある事柄です。
目標を立てれば必ず達成できるというものでもありません。
それはこんなふうに人の気持ちや考えは複雑で「ゴールを達成したいという思い」と「それを阻む気持ちや考え」が存在するからです。私がレッスンしているコーチングと他のところのものとの大きな違いはここにあります。
私はこの「阻むもの」の存在を大切にしながらゴール達成を促していきます。
が、この「一重の輪のコーチング」ではこの③「ゴールを阻むもの」に関して深くは聴かずに、対象もコーチもその存在を意識しておく程度にとどめます。
④の行動計画がうまくいかなかった場合にはあらためてこの止めるものをクローズアップし、今度は「一重の輪のコーチング」から「二重の輪のコーチング」(2019.2日本看護協会出版会「共育コーチング」奥山美奈著)に切り替えて、「~したいのに~できない」という葛藤を統合します。
今回の村田さんのケースで例えるなら、村田さんの次のコーチングで、「前回のコーチングで妹のやり残したこと(イベントで人と人をつなげる)をやると計画したのにできませんでした」という訴えがあったとき、コーチは「二重の輪のコーチング」に切り替えていきます。
「二重の輪のコーチング」とは、「ゴールを目指すこと止めている考え」を取り上げ、変化させることでゴール達成をする手法です。
②の質問で明確にした「得られるもの」多くモチベーションが高ければ、しっかりと行動計画を立てて進めばゴールは達成できます。
でも、上記の止めるもの(後悔や悲しみに打ちひしがれていなければいけないんじゃないかという考え)の方が強ければ、人は行動をしないことで自分の身を守ります。
こうした葛藤(やり残したことを引き継ぎたいのにできない)がある場合、無理に叱咤激励しても相手は辛いだけです。
こうした場合は、「葛藤を統合する手法」、つまり「二重の輪のコーチング」に切り替えていく必要があります。
5W1Hで具体的な行動計画を立案する
行動計画 「何からやっていきますか」「それはいつ(WHEN)やりますか」
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2017.5コーチング大会
東京都千代田区神田岩本町4-14神田平成ビル(株)日本医療企画「もとみやセミナールーム」にて開催
大会の様子は、最新医療経営「phase3フェイズ3」2017年月8月号にも掲載されています。
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最新医療経営 Phase3 2017年 8月号
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大会の翌週、村田さんはイベントを引きついでくれるリーダーさんと会い、これからも家族でできる限りのサポートをしていきたいと伝えることができました。
きっと「人と人をつないでいく」という妹さんの思いは、しっかりと引きつがれていくことでしょう。
コーチング大会での中澤・藪チームの関わりが村田さんの意欲を引き出したのです。
18分で人の未来をグッと開くことができるコーチングという技術が医療サービスの質を向上させる可能性を感じる方も多いのではないでしょうか。
コーチング大会その後の報告。
村田さん自身による記事が読めます。
http://コーチング大会 その後 (村田編)|https://ameblo.jp/okuyama010/entry-12281245549.html
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