新人が育たない【教育係の心理的負担を軽減させる妙手とは】

※ 日経ヘルスケア 2011年12月号 掲載 ブログにするにあたり株式会社日本経済新聞出版社より許可を頂いております。

新人が育たず教育係の職員が疲弊
心理的負担を軽減させる妙手とは

なかなか仕事が覚えられない新人の病 棟看護師A子。
新人教育担当(プリセ プター)に任命された先輩看護師のB 子は、熱心に指導に当たったが、
「半年 で独り立ちさせる」という目標の達成 は困難な状況だった。
責任感の強い B子は「私の指導が悪いせいだ」と悲観。
心身に不調を来し、自院の心療内科を受診することになってしまった。

医療機関や介護事業所では、若手や中堅を新人の教育係として
マンツーマンで指導に当たらせるケースが多い。
だが、教育係が指導の難しさに直面して思い悩む例も少なくないため、
適切にフォローしていく必要がある。

今回紹介するのは200床規模の病院の事例だ。
プリセプター制を採用しており、
入職3、4年目のスタッフが新人教育を担当することになっている。
B子自身も新人のころプリセプターから手厚い指導を受けて育ったため、
A子を早く一人前にしようと必死になっていた。

だが、A子はひどく緊張するタイプで、思いのほか育てづらい新人だった。
点滴などの手技も、先輩相手の「練習」ではそつなくこなせるのだが、
少し自己主張の強い患者に当たると、途端に手が震えて失敗してしまう。

あるとき、見かねた看護主任がA子に「いつからそんなに緊張するようになったの?」と尋ねた。
するとA子は、
「看護学校にかなり厳しい先生がいて、 何度も目の前で手技のやり直しをさせられ、
その辺りから緊張が強くなったのかもしれません」
と打ち明けた。
つまり、 学生のときに受けた厳しい指導がトラウマになっていたのだ。

主任はA子のプライバシーに配慮し、
このことをB子に伝えず自分の胸にしまっておくことにした。
だが、そんな事情があったとは知らないB子は責任を感じ、ふさぎ込むようになってしまった。

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「発問」で相手の行動を促す

筆者は、看護部長の依頼により事態の改善に向け介入することになった。
B子本人が自院の心療内科を受診していることもあり、
今回は主に、上司である主任に対してB子への接し方をアドバイスすることにした。

B子にとって必要なのは、A子の過去の経験を知ることだった。
A子の緊張が解けない理由が分かれば、
「自分の指導が悪いからだ」という自責の念は薄れると思われた。

ただ主任としては、プライバシーの問題があるため、
A子から聞いた経験談をそのままB子に話すわけにはいかない。
そこで筆者は主任に、「発問」という手法を伝えた。
発問とは、相手がこちらの意図する形で物事を考えたり、
行動するよう促すために質問を投げかけること。
教育現場のほかコーチングの世界でも使われている手法だ。

例えば、
「A子さんって緊張が高まるような嫌な経験でもしているのかしらねぇ。
何か聞いてる? そういうことがあれば、こっちも配慮する必要があるから教えて」
というふうに、主任がB子に自然な感じで質問する。
すると、B子も「ああ、そうかもしれないな」と思い、
A子にそれとなく尋ねることが期待できる。

主任は筆者のアドバイス通り、B子に「発問」をした。
その結果、B子もA子と、緊張する理由について話し合うようになり、
真相を理解することができた。
心療内科での治療効果もあって、
B子の表情が和らいできたことが周囲にもはっきり分かったという。

筆者がかかわったほかの病院でも、
同じような方法で新人に対するプリセプターの理解を深められたことがあった。
この「発問」は、自ら考えさせ、主体的に動くように導く上で役立つテクニックだ。
うまく行えるか否かで、上司の指導力にグンと差がついてくる。

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相性も見極め「メンター」を指名

また、このケースでは、
B子に「メンター」がいれば事態の深刻化を防ぐことができたかもしれない。
メンターとは、信頼のおける相談相手のこと。
最近では、プリセプターを見守る「アソシエイトナース」をつける病院も増えており、
うまく機能すればアソシエイトナースがメンターの役割を果たすことになる。

今回紹介した病院にはそうした仕組みがなく、
主任がアソシエイトナース的な仕事をしていたが、
「プリセプターを支援する」という明確な役割意識がなかったため、
B子の悩みに適切に介入できずにいた。
そこで筆者は、看護部長にアソシエイトナース制の導入を提案。
B子がプリセプターを“卒業”した後になってしまったが、1年後に制度がスタートした。

アソシエイトナース制の運用で何よりも大切なのが人選だ。
人選を誤ったことで、アソシエイトナースが精神的な支えになれなかったという話はよく聞く。

一般的には、経験年数などを勘案して任命するケースが多いが、
プリセプターが安心して相談できる相手かどうかも重視する必要がある。
本人に、「どの先輩についてもらいたいか」の希望を聞くことができればベストだろう。

筆者はアソシエイトナースやプリセプターなどを決める際、
支援される側のスタッフが図1に示す四つのタイプの
どれに当てはまるかを見極めてから判断するようアドバイスしている。

この図は、ビジネスコーチ(株)代表の細川馨氏が作成した分類図を基に、
同氏の了解を得て、筆者の経験や医療現場へのアンケート結果も加味して作成したものだ。
それぞれのタイプには、「こんな対応をされると嫌だ」というかかわり方があり、
それに該当する言動を取る先輩スタッフはつけない方が望ましいと思われる。
実際にこの図を活用してプリセプターなどを決め、うまくいったとの報告も多く寄せられている。

読者の中には、
「人間を幾つかのタイプに分類することなどナンセンスだ」という意見があるかもしれない。
もちろん、これだけで教育係を決定することはできないが、
感覚的に決めている現状から一歩進め、
より積極的にスタッフ間の相性を検討するための一つのツールとして参考にしていただければと思う。

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