急変時でも自分の仕事しかしない新人にイラッ!付き合い方と指導のポイント
大変なときにも「自分には関係ない」という顔をしている人に困ったことがありませんか?
今回は、「急変時にも協力しない新人にイラッとしてしまう」シチュエーションです。
難しい相手ですが、考え方をしっかりセットして付き合うことで、仕事への姿勢を変えられるかもしれません。
ケーススタディとして、「自分ならどうする?」と想像しながら読んでみてくださいね。
目次
急変時でも自分の仕事しかしない新人…看護師としてのモラルは?
今野チーフは、急変した患者さんの対応でみんなが駆け回る中、1人自分の仕事だけをして帰ってしまう池田さんに「イラッ」としています。
今野チーフの不満
この前の急変のときは本当にびっくりした!
今までもいろんな新人がいたけど、池田さんのようにみんなバタバタしてるのに帰った人は初めて。
注意すれば「はい」って言うけど「ホントにわかってる返事なの?」って思ってしまう。
態度は横柄だし、注意してもって聞き流してるって感じ。
確かに救えない命もあるけど、心からベストを尽くせば「こんなに一生懸命やってくれたんだから…」と家族の悲しみを軽くすることはできるんじゃないかって思って今までやってきた。
だから私は池田さんの「自分がいても戦力になんないですから…」っていうのは何か違うと思う。
悪いけど、看護師としてのモラルを疑ってしまう。
考えを押しつけてるのかなぁって思うこともあるけど、教育って教える人の価値観を伝える場所でもあるんじゃないのかな、とも思うし…
急変時でも帰ってしまう池田さんの言い分
患者さんが急変したときの態度が悪いって今野チーフに怒られた。
すんごく怒ってていつまで指導されるかわかんない感じだったからとりあえず「はい」って聞いた。
でも私は今野チーフの言うことがすべて正しいとは思ってない。
っていうか人それぞれ考え方ってあるから、
「~しなくっちゃならない」とか「~すべき」とか考え押し付けられてもなぁって思っちゃう。
チーフはまじめな人だから、動けなくてもその場所にいるべきだって言いたいみたい。
でもはっきりいって邪魔なダケって顔してる先輩だって多い。
何していいんだかわからないし、先輩はバタバタしてて声かけらんないし…
変に動いて失敗するより余計なことはしない方がいいと私は思う。
1回急変時の見学したからって動けるようになんかならないと思う。
それぞれの背景から考え方の傾向を知ろう
池田さんと今野さんの育ってきた環境や性格など、人の背景を知って考え方の傾向を掴みましょう。
池田さんのプロフィールと背景
ナース歴 | ・新人 ・この病院が初めての勤務先 |
家庭 | ・父と母の3人暮らしで育つ ・両親はともに外資系の一流企業に務め、中学生までアメリカ住まい ・ベビーシッターと過ごす時間の方が長く、寂しい思いをしていた。 |
学生時代 | ・転校を繰り返したため「サラっと」した付き合いが前提 ・ネットの友達が多く、対面のコミュニケーションは苦手 |
性格 | 人と比べられるのが大嫌い、個人主義 |
モットー | 個性を尊重する |
今野チーフのプロフィールと背景
ナース歴 | ・5年 ・この病院が初めての勤務先 |
家庭 | ・父と母と祖父と祖母、兄と弟との7人暮らしで育つ ・頻繁に家族会議を開くアットホームな家庭 |
学生時代 | ・初心者ながらもテニス部に入り奮闘。チームのやる気を引き出した |
性格 | 真面目、スポ根 |
モットー | 何事にもベストを尽くす、身体で覚える |
今野さんのモヤッとはなぜ生まれるの?
今野さんの「モヤッと」は、物事に「向かっていくタイプ」と「逃げるタイプ」の違いから生まれています。
今野さんは、患者さんの急変時には「まず動くことが大切」と思います。
でも池田さんは「問題を起こさないことが大切」と考えます。
前者は「物事に向かっていくタイプ」で後者は「物事から逃げるタイプ」です。
逃げるというと聞こえが悪いですが、要は「失敗しないこと、問題を起こさないこと」が成果になるのが、逃げるタイプの人なのです。どちらのタイプかはその人のいつものセリフでわかります。
池田さんは「変に動いて失敗するより、やっぱり余計なことはしない方がいいと私は思う」と言っていますね。
このタイプの人にとっては「問題を起こさないこと」が何よりの成果なのです。
なので、患者さんの急変時に帰ったことを池田さん自身は悪いとは思っていませんし、今野さんがなぜ怒っているのか、ホントの意味では理解していません。反対に今野さんは何事にも向かっていきます。
その姿勢は「何事にもベストを尽くす」という今野さんのセリフからもわかります。今野さんにとっては、経験のないことでも果敢にチャレンジすることがすでに成果なのです。
タイプが逆の相手のことはなかなか理解できないものです。結局は「自分と違う」「相手が理解できない」ということがモヤッとを生む原因です。
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ワーク:あなたはどちらのタイプ?
2人の特徴から、自分がどちらのタイプかを考えてみましょう。
身近な人たちについても想像してみてください。
行動タイプ | 物事に向かっていく 「まず、やってみよう!」 |
特徴 | ・明確な目標がある ・過去をふり返らない ・常にゴールや目的に向かって動く |
課題 | ・過去の経験から学ばない ・あまり考えずに動くので問題を起こしやすい |
使う言葉の特徴 | 「目的地まで10分で着く」 「あなたの発表、すごくよかったよ。」 「それ、すごくいいね!」 |
慎重タイプ | 失敗を回避したい 「間違えないように…」 |
特徴 | ・失敗しないように ・問題が起きないように行動する ・問題解決や評論に向いている |
課題 | ・問題を想定しすぎて大きなチャンスを逃すことがある ・問題ばかりに集中する |
使う言葉の特徴 | 「目的地まで10分かからない」 「あなたの発表、問題なかったよ」 「それ、悪くないね。」 |
どうして池田さんはこんなに身勝手なの?
池田さんは外国暮らしの影響もあってか「個性を尊重する」ことを大事にしていると言います。でも池田さんのこのあり方は本当の意味での「個性の尊重」ではありません。尊重されてよい個性とは人格の成熟を伴うものです。
周囲と完全な調和のとれる人が、集団で個性を発揮すれば全体の能力や質の向上につながるので喜ばれます。でも池田さんの個性の発揮(忙しいのに帰る)は誰にも喜ばれてはいません。池田さんのふるまいは個性の尊重ではなく単なる身勝手な言い訳です。
人とのかかわりを恐れていた池田さん
忙しい両親よりもベビーシッターと過ごす時間が長かった池田さん。転校が多く友達と深い友情を結ぶことも、チームで動くことも経験せずにきました。仲良くしたくても友達がいなかった池田さんは、人の気持ちや考えはこちらの自由にはできないと、自分に言い聞かせ諦めてきたのでしょう。
でも、ネットコミュニケーションでは仲間とつながっていたい彼女。
きっと個性の尊重というのは建前で、本当は友達と面と向かって喧嘩をしたり葛藤したりすることが怖かったのでしょう。「人それぞれ考え方ってあるから」と尊重したフリをしていれば友達とも葛藤しなくて済みます。個性を尊重するというポーズは友達や仲間と深いかかわりをすることから逃げるための彼女の口実、論理のすり替えだったのでしょう。
きっと彼女は急変の現場で先輩に「自分でも何かできることありませんか。」と尋ねたり、邪魔なダケと思われたりすることが耐えられずに帰ったのです。要するに患者さんの急変ではなく、先輩とのコミュニケーションから逃げたかったのです。
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急変時に帰るような新人への指導 どう対応すればいい?
池田さんの行動を「いいか悪いか」で判断するとしたなら、やっぱり「悪い」でしょう。私も今野さんと同じです。(だって私も向かっていくタイプですから)しかし、「こちらはよくてあちらが悪い」と善悪だけで物事をみると、モヤッとします。そして「相手の行動を変えなければ!」とアプローチしてうまくいかないと、更にモヤッとしてしまいます。
でも、この「いいか悪いか」の判断基準は厳密にいうと「看護師さんの中では、この行動を悪いと思う人が多い」ということです。これを忘れてはいけないのです。もしかすると、池田さんがエンジニアやゲームソフトの開発のような個人色の強い仕事についていたなら、今回の行動は注意されないかもしれません。
「いるべき場所が違うということも悪の原因になる」のです。誰かがその場にふさわしくない行動をとったとき、「ああ、この人は場所が違うのかもしれないなぁ。」と考えましょう。相手まで悪く見ないようにしなければなりません。
正論は相手の逃げ場をなくしてしまう
相手が悪く見えてしまうと「叱る」でなく「怒る」になってしまいます。「叱る」は冷静に相手の思考を促すことができますが、「怒る」は相手の感情を逆なでするだけです。
たとえばあなたが、職場で失敗したとしましょう。理由があっての失敗で、言い分はいっぱいあります。なのに、先輩から頭ごなしに「あなたは間違っている。~すべきでしょ!」と怒られたらどうですか?言われた内容はもっともでも、「でも、自分にだって言い分があるのに…」とか「いってることは分かるけどもっと違う言い方ってあるよね。」と思わないでしょうか。
正論であればあるほど、言われた側は逃げ場がなくなります。すると自分を守ろうと、思考より感情が動いてしまいます。
こんなふうに「怒る」は相手を感情的にしてしまうので逆効果です。
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池田さんを冷静に叱りながら、どんどん彼女にかかわるようにしよう
今野さんの熱いキャラは池田さんに必要不可欠です。核家族で育った池田さんは今野さんの家庭のような温かさを知りません。スポ根も、仲間との深いつながりも経験したことがないのです。
きっと彼女も無意識に人との深いかかわりを求めて看護師になっただと思います。本当に人とのつながりを拒否している人は看護師という職業を選ばないからです。成長する過程で得られなかったぬくもりや人との絆を、彼女は今野さんを通して得ることができるかもしれません。
そこで、今野さんはいくら彼女が「個性の尊重」などと言い訳しようとも、決して逃がさずにバンバンか関わっていってほしいと思います。そのときはちょっと冷静に、池田さんの特徴を思いだしてかかわり方を工夫します。彼女は逃げるタイプで「失敗したくない、問題を起こしたくない」のですから、急変時には「あなたは何もしなくていいから、ただ先輩の動きと流れをみていなさい。」とひと声かけて安心させます。
そして「急変時の動きをみておくと、あなたが患者さんの急変にあったときに失敗しないよ。」とか「自分が急変にあたったときに問題起こさないように、処置を見といた方がいいよ。」と声をかけます。逃げるタイプの人には、この声かけが動機づけになります。失敗や問題を起こさないことが成果なので、こういわれると動きたくなるのです。
こんなふうに少し彼女に合わせてあげながら、人と関われるように、ときに暑苦しく指導してあげられるのは今野さんしかいないと思います。与えられた人は与えることができると言います。愛情いっぱいに育ってきた今野さんだからこそ、あまり可愛げのない彼女をも包みこんであげることができるのでしょう。
みなっちからのメッセージ☆
もしかすると彼女は、今野さんがこれまで家族や仲間にもらってきた愛情に感謝する機会をくれるために現れたのかもしれませんよ。
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