看護2022年2月表紙

職員の「労働価値観」を把握して「働きがい」を支え、定着を促そう

ワンランクUPポイント

  1. 職員の労働に対する価値観(労働価値観)を知ることが大切。
  2. 職員が重視する労働価値観を満たすことが、モチベーションを高め、定着を促す。
  3. 働きやすい環境を整備すると、職員の「人のために何かしたい」という気持ちが高まる。

職員の「働きがい」と「モチベーション」はどんなことで高まるのでしょうか。
今回は、「働く側の労働価値観(何のために働くか)の満足」と、「働く環境の整備」はどんなふうに関連し、職員のモチベーションアップや定着率に関係するのかを考えてみたいと思います。

小倉第一病院の職員の労働満足度を高める工夫

過去の記事(https://tn-succ.jp/blog2021-03-n47-subeteo/)でも「すべてをリソースにして進もう!コロナ禍での研修の実際と新人育成のあり方」としてその画期的な取り組みをご紹介した小倉第一病院さん。

第一病院は2021の11月に移転したばかり。新病院はさらに患者さんと職員に優しい病院にパワーアップされていて驚きました。
職員専用のフィットネスルームに職員専用のシャワー室。
管理栄養士と患者さん、そしてご家族のためのキッチンスタジアム(ガラス張りで目の前で調理の様子が見れるお部屋)に職員向けのシアタールームと病院で学会が開催できるような広さの大講堂。
職場でプロのマッサージ師さんからマッサージが受けられる福利厚生などなど。
職員の働きやすさのための工夫が随所になされていました。(旧病院にも職員向けの岩盤浴があるなど小倉第一病院の福利厚生は群を抜いていたのですが、、、。)

常々「職員には心身ともに健康で末長く活躍してほしい」という中村理事長の思いが今回、「病院という形になって表現されたのだな。」私はそんなふうに思いました。

同時に「学習する組織」をめざす小倉第一病院は職員研修も充実していて、私はストレスマネジメント研修を筆頭に、新人、プリセプター、管理者や事務職の方々の研修でも関わらせて頂いています。
今回は小倉第一病院さんの研修アンケートの結果をもとに「働きがい」や「モチベーション」に関して考えてみたいと思います。

労働価値観の満足度を高めれば職員は定着する


[※小倉第一病院2021年度新人様アンケートより 図1]

上記は私が研修先の病院や組織で聴取しているアンケートで、アメリカの教育学者であるドナルド・E・スーパーが提唱した、『労働価値観』を元にした質問です。
(※ドナルド・E・スーパーは『仕事の重要性研究』で、仕事に対する人の価値観を14項目に特定しました。)

そもそも我々は「何のために仕事をしているのか。」この問いの答え(労働満足)を満たすことが「働きがい」や「モチベーションアップ」につながり職員の定着率を上げるのではないか。近年、私はこんなふうに考えて新人研修時から「労働価値観」とその満足度を聴取するようにしています。

「仕事とは、自分の能力や興味、価値観を表現するものである。そうでなければ、仕事は退屈で無意味なものになってしまう。」これもドナルド・E・スーパーの言葉ですが、一日の大半の時間を占める「仕事」に満足しているかどうかは個人の人生を生きる上でとても大切なことです。
また、組織においては労働満足を満たすことが職員の離職を防ぐのだとしたら、採用経費を考える上でも見逃せないポイントになりますね。

労働価値観を問うアンケートの活用法


[※小倉第一病院2021年度新人様アンケートより 図2]

図2の資料は小倉第一病院の2021年度の新人さんの労働価値観のアンケート結果です。
2021年度の新人さんは仕事をする上で

「8. ライフスタイル ― 自分の望むペース、生活ができること」
「14. 環境 ― 仕事環境が心地よいこと」
「4. 愛他性 ― 人の役に立てること」
「2. 達成 ― 良い結果が生まれたという結果」

を大切に思っている人が多いことがわかりました。
続いて、それらの労働価値観が満たされたエピソードを記述式の問いで聞いてみると、就職後の新人の労働価値観が、どんなときに満たされたのかがわかります(図2)

具体例がわかれば、新人がこうした経験を積むことができるようにプリセプターが関わることもできます。
長年、高い有休消化率を維持してきた小倉第一病院。
新人さんの多くが「8. ライフスタイル ― 自分の望むペース、生活ができること」を労働価値観の1番にあげているのは納得がいくところです。また、新人さんが「2. 達成 ― 良い結果が生まれたという結果」を大切に考えているのは何とも頼もしい結果でした。

教育委員がこうしたアンケート聴取を実施することは、新人に「自分の労働価値観はここに就職して満たされている」と感じる機会を作ることにもつながります。あらためて素敵なことですね。

逆に言えば、個人の労働価値観を満たすことができないときに、離職が増えていくとも言えるでしょう。さらに言えば、「こうした労働価値観を持っている人に来てもらいたい」ということを発信していけば組織に「合う人」が採用できるようになります。
スタッフにどんなサポートが足りないかを知るには、労働価値観が満たされなかったときのエピソードを聞くこと(「仕事でがっかりしてしまったエピソードを教えてください」など)が役に立ちます。(図3)


[※小倉第一病院2021年度新人様アンケートより 図3]

環境整備が職員の愛他を向める

小倉第一病院では、アンケートの最後に新病院になったことでどんなことを頑張っていきたいかと問うと(図4)「なんでも頑張っていきたい!」や「先輩や患者さんのお役に立ちたい」「思いやりを持った医療を提供したい」など、それぞれ新人のモチベーションは上がっていました。


[※小倉第一病院2021年度新人様アンケートより 図4]

アンケート結果をみて、職員の働きやすさを支える環境を整えることは、職員の「4.愛他性 ― 人の役に立てること」を高めるのだと思いました。
「与えられた人は与えることができるようになる」と言われますが、あらためてそうなのだろうと感じます。職員を大切にする中村理事長の気持ちが職員に伝わり、職員から患者さんへの思いやりとして伝わる。多くの病院経営者に振り返ってもらいたいところですね(笑)。

私事で恐縮ですが、訪問看護事業を始めるために広めの新築物件に事務所を移転したことがありました。中村理事長の足元にも及ばないのですが、私も新事務所に職員向けの美顔器やフィットネスマシンにすぐにライブができる音響設備(私は趣味で音楽をやってるので笑)を常設しました。職員が健康で働きがいを感じながら楽しく働いてくれることを願って・・・。

先週、新しく立ち上がったばかりのクリニックのチームコーチングに伺い、院長とスタッフに「どんなクリニックにしたいですか」「あそこのクリニックは〇〇だよねと、どんなふうにうわさされたいですか」と質問しましたが、最初はあまりアイディアがでてきませんでしたが、既成概念にとらわれずにこんなクリニックがあったらいいなぁとワクワクしながら考えましょう」と声をかけるとどんどん「こんなふうにしたい」が出てきました。
まずは「思いありき」。こんなふうになったらいいなぁを1つずつできることから形にしていけたらいいのではないでしょうか。小倉第一病院の中村理事長の「職員の働きやすさを整えるあり方」を参考に組織づくりをしていきたいものですね。

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