現在進行形でお伝えする「燃えるチーム」のつくり方1

ワンランクUPポイント
1、チームメンバーの経験や思いを共有し、ビジョンを策定する。
2、「持ち物調べ」やSVVOT分析で、チームメンバーの「強さ」を引き出し、「弱さ」には対策を講じる。
3、チームメンバーの役割を踏まえてミッションを明確化する。

在宅看護センターの立ち上げに挑戦

「すべてをリソースに」これは私の座右の銘です。
息子との死別や離婚、転職時など苦しみやピンチを乗り越えるときに何度も自分に言い聞かせてきたこの言葉は、今では私の会社の「共通の価値観」になっ ています。

コロナ禍においてもこの価値観を胸に、私はスタッフと共に新しい挑戦を始めました。それは、訪問看護ステーションを立ち上げるというもの(以下、 訪問看護ステーションは在宅看護センターと記載)。

その準備として、笹川保健財団の運営する日本財団 在宅看護センター起業家育成事業に応募し、現在、受講生として学んでいます。

「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」で育成された人々が立ち上げた在宅看護センターの特集記事を読んで、いつか在宅看護をやってみたいという夢を持っていた私は、その記事を食い入るように見ていました。

育成事業には笹川保健財団の喜多悦子会長をはじめ、一流の講師陣がかかわり、プライマリヘルスケアや災害看護、経営のノウハウを教わった卒業生が続々と在宅看護センターを成功させているとあり、とても羨ましく思っていました。

経営のことなどしっかり学んだことがなく、とにかくいただいた仕事をガムシャラにこなしてきただけの私。「経営やマネジメントなどを一から学ぶことができたらどんなにいいだろうなぁ。」そう思っていましたが、ただでさえ仕事で出張の多い私が受講することはやはり無理だろうとあきらめていました。

そんなとき、新型コロナウイルスが蔓延しはじめ、コンサルティングや研修が延期になりだし、少し自分の時間をもてるようになりました。

この機会を逃してなるものかとすかさず、上記の起業家育成事業のことを調べるとなんとコロナ対策でweb受講を検討しているとのこと。すぐに受講を決めて申し込みました。

出席率が8割を超えないと修了できない規定ですが、とにかく迷っている暇などありません。勉強ができるだけでいいや。そう思って受講を始め、いよいよ2021年2月に東京都で『ホームナーシング東京』を立ち上げることにしました。

チームのビジョンづくり

講義での学びをタイムリーに活かし、在宅看護センターのスタッフと共にまずは、「チームのビジョンづくり」を始開始。10時間にわたり、「どんなことを成しとげたいのか」をとことん話し合いました。

1個のミッションとはミッション群(いくつかのミッションの集合)の1つでありビジョンとはそのミッション群を通して流れている「考え方」。ビジョンとは理念や使命など様々な言い方がありますが、要するにその組織の「哲学」選択に迷うときの切り札であり、構成員全員の『心得』であり、『ゆるがない生き様』です。チームにとって苦しむ時や一歩を踏み出すときの『ねぎらい』と『やすらぎ』の言葉でもあります。とはjahng,Doosub教授の教えです。(jahng,Doosub(2003)『元気に働くための3つの基本』中央労働災害防止協会)

新規事業の「在宅看護センター」やこれまでの教育支援事業(コーチ認定、医療的ケア教員講習会、喀痰吸引等研修事業、介護員養成研修事業など)を行うことで、どんな世の中をめざしたいのか、どんなことを成しとげたいのかをスタッフとともに考えるべく、ビジョンミーティングを行いました。

スタッフそれぞれに「これまでの人生の中で何が起こり、そこから何を学び、何が大切だと思ったのか。どんな世の中であったらいいのか、そのために我々ができることは何なのか、なぜその事業をやるのが我々でなければならないのか」をじっくりと自分の言葉で語ってもらいました。

あるスタッフは親をがんで看取ったけれど、疼痛コントロールが上手くいかず、見ているのが辛かったことを、別のスタッフは病院で亡くなった親の死に目に会えず涙したことを話してくれました。

私は、父親が自死したあとの家族の苦しや、長男の突然死によりPTSDになり、それを患いながらの子育てがとても辛かったことをスタッフに聞いてもらいました。

病院と自宅での看取りの違いや、どんなふうに支えられるのがいいか、我々にできることは何なのかを熱く、時に涙しながら思いを共有していきました。

そして、人は生老病死の苦しみから逃れることはできないけれども、その苦しみを見つめながら、それでもできるだけ楽しく、人の役にも立ちながら生きていくことが大切なのではないか。

その願いを叶えることこそが我々の使命ではないのか。そんな話し合いの末に「『つよく、楽しく、美しく生きる』をかなえるという新規事業のビジョンができあがりました。

ビジョンに込めた思い

メンバー皆が「これだ!」と腹落ちした言霊とも言えるビジョン。「つよく」を入れたのは、今のコロナ禍を鑑みてのことです。

人は、生きていれば自然災害など、避けられない災いに苦しむこともありますが、「逆境を乗り越えてつよくいきていきましょう」というメッセージを発信したかったのです。

また、よく「高齢者を支える」という言葉を耳にしますが、高齢者は支えられるばかりの弱々しい存在ではないと私は思っています。

確かに身体機能が衰え、日常生活では人の手を借りる場面が増えるでしょう。しかし、ケアの対象である高齢者から、若者は知恵や人生を生き抜くための教訓等を教わることも多々あります。

地域で生きるということが、お互いによい影響を与え合うグループ・ダイナミックスであってほしい。そんな願いも込めました。

それから、どこの事業所でも介護士の不足に悩んでいます。その現状を打破するため、弊社では介護職員初任者研修が行えるように事業者登録もしました。

介護の資格がない人は、社内で研修を受け資格取得し地域に貢献できるようにすれば、「つよい絆」で結ばれた地域共生社会が実現すると思ったからです。

ホームナーシング東京がかかわった地域の人々が『つよく、楽しく、美しく生きていくこと』ができるようにしていきたいと思っています。

メンバーの「強さ」を引き出し「弱さ」には対策を講じる
持ち物調べとSWOT分析

ビジョンが出来上がったら次にやることは現在のチームがどのようなもの(能力や資格や知識、経験など)を持っているのかを把握すること、または、これからどんなことを兼ね備えたらいいのかを知るためのメンバー各自の持ち物(自己資源)を調べることです。

我々はジァン先生の「持ち物調べのための質問表」(WIHQ What I have Questionnaire)を用いて、チームメンバーの持ち物(自己資源)をオープンにする作業を行いました。

WIHQをGoogleフォームでアンケート形式にしてミーティングの前に事前準備として打ち込んで来てもらい、それらの答えを元にチーム全体の強さ(Strengths)と弱さ(Weaknesses)と機会(Opportunities)と脅威(Threats)のカテゴリーについて、ホワイトボードに直接、書き込んでいきました。(SWOT分析)

 

図表1「持ち物調べのための質問票(WIHQ)の一部抜粋

Q1 経験と自己評価
①    現在、所属するチームで、今まで行ってきたこと、それによって分かったこと
②    現在所属チーム以外の社会活動で、今まで行ってきたこと、それによって分かったこと
Q2 持ち物(自己資源)
Q2-1仕事と関連したもので、私は以下のようなものを持っています。
①    能力 ②資格 ③知識 ④弱点(問題点・悩み)
Q2-2仕事以外のもので、私は以下のようなものを持っています。
①    能力 ②資格 ③知識 ④弱点(問題点・悩み)
Q3 現在使用 可能な持ち物(自己資源)
Q3-2 現在、所属チーム活動のために備えたいものは以下のとおりです。また、今のところ○○までには備える予定です。
①    能力と予定 ②資格と予定 ③知識と予定
Q3-2 現在、所属チーム活動のために期待されているものは以下のとおりです。また、今のところ○○までには備える予定です。
①     能力と予定 ②資格と予定 ③知識と予定

図表1は「持ち物調べのための質問票(WIHQ)」の一部です。この質問でメンバー個人の自己資源を明らかにしておいたことは、チーム全体のSWOT分析とメンバーの役割を明確にすることに非常に役に立ちました。
これから新しいプロジェクトを始めるという方々にぜひともオススメしたい手法です。

強さ・弱さがわかれば中長期計画もたてやすい

これらの分析をしてみてよかったことは、新規事業と既存事業ですぐに我々が使える資格や経験や強さが認識できたことはもちろんのこと、これから自分自身が身につけていきたいと思っている資格や能力とチームメンバーに期待されている資格や能力が一致していたということがわかったことです。これは、これまで我々メンバーが妥当なコミュニケーションを取っていたという証だとも思いました。

今回、あらためて各々の強さや弱さを活字にしたことで、具体的な個人目標として掲げることができ、チームとしてのミッション、中長期の計画も明確になり本当によかったと思います。

また、個人の弱さ(問題点、悩み)をオープンにしたことで、チームが補強すべき点が明らかになりました。脅威が訪れたとき、この弱点をどうカバーしていくのか、徹底的に戦略を練ることができました。

弱点を意識したことで、次に採用するメンバーは今の自分たちが持っていない「こんな強みを持っている人がいいだろう」と確認できたこともよかったと思います。

「自分たちらしさ」を大事にするという名目で自分たちに似た人ばかりを採用した施設のチームコーチングをしたことがありますが、その組織の新規事業は破綻しました。

多様性を認めない組織は、強さも弱さも類似した人たちの仲良しグループの域を出ず、ある面では、偏った弱いチームになってしまうのではないかと思います。

ビジョンの策定をし、チームのミッションとメンバーの役割が明確化した我がチームは、大海原に航海に力強く出発したいと思います。

今後も我がチームがどんな航海をしているか、進捗をお知らせできたらと思っています。

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