採用面接でどんな回答をする人を採用しないほうがいいのか

 

筆者の体験に照らし合わせ、看護師採用の「質問文」をいくつかご紹介し、質問の意図とねらいをお伝えします。

 

1,「これまで上司に指摘されて直せたことは何ですか 思いつくだけ教えてください」

 

素直に注意されたことを受け止め改善してきた人なら、この質問に関して、「どうしても仕事を抱えてしまい、報連相が少ないと注意されたので、今は『業務の進捗状況や抱えている仕事に関して』その都度、報告するようになりました」など、すぐに答えが返ってきます。

この質問からは、「他者からのネガティブフィードバックをどう受け取る人か」を引き出すことができます。人からできないことを指摘されるということは大抵、嬉しいことではなく、一種のストレスを受けた状態になります。

この質問はこうしたストレス状況にどんな防衛機制を使うかを知ることにも繋がります。

前号で紹介した「外罰的機制」(責任を外部に転嫁する機制)を多用する人は、「自分が悪いのでそう指摘を受けた」と捉えられず、「そんなふうに指摘するのは相手がおかしい」とか「こんなに忙しい状況なんだから仕方ない」とか、自分以外の外部に責任を転嫁してしまうので、質問の「注意されて直せたこと」をすぐには答えられません。

採用面接でよく「あなたの短所はどんなところですか?」などと質問しますが、こうした面接の攻略本などに出ている使い古された質問には、面接を受ける側もしっかりと答えを準備してきますので、

その人の本当のパーソナリティを引き出すことにはならないことが多いです。

少し考える時間を与えて、複数の「直せたこと」が答えられた人は、自分の足りない部分に関して向き合い、改善することができる人で、今後も成長が見込める人です。

また、この質問は「過去の成功体験を引き出す」というコーチングの質問テクニックでもあり、面接を受ける求職者の不必要な緊張を解き、リラックスさせる効果もあります。

心の防御機制 低次なものから高次なものが存在する 低次なものばかりの活用は病的となる「病的防御」と「健全な適応的な防御」とある

抑圧 不安のもとを無意識に圧迫すること。強すぎると心の緊張をもたらし、不安定になります。「くさい物には蓋をしろ」的な働きで、くさいものがなくなるわけではありません。 昔、「ある特徴」のある人に嫌がらせを受けた。それを忘れているけれど、何故か「ある特徴」のある人が、理由も無く好きになれない。
反動形成 自分が非常に憎んでいる人に対し、反対に丁寧な態度をとったり、親切にすることがあります。嫌悪感や衝動を防衛するために、意識上では正反対な傾向や態度を表し、防衛します。 どうしても苦手な後輩にだけ丁寧に仕事を教えている。本当はケチな人が結婚前には大盤振舞いする など
投射、

投影

自分の欠点や弱点を他人の中に見出し、自分の責任を他に転嫁するといったようなこと。 職場のある同僚に嫌われていると思っていたが、じつは自分こそがその同僚のことを苦手だった。
退  行 幼児的な発達段階まで逆戻りして、不安等を解決しようとする働き。 妹が生まれると今までしっかりしていた姉に、指しゃぶりやおねしょが復活する。新人が入ってきた途端、2年目スタッフのミスが連発する。など
摂取、

同一化

ある対象の特徴を無意識的に取り入れ(摂取)それと同一傾向を示す(同一化)ようになる働き。 アイドルやタレントのファッションやメイクが大流行する。など
外罰・内罰

非罰的

自分に非があるときでも責任を他に転嫁するのが外罰的機制。すべてを自分の責任だと思い込んでしまうのが内罰的機制。非罰的反応は自分に責任があるとしたときはそれに従い、他に責任があるとすれば冷静に判断することができるもの。  やり方の間違いを注意すると「それは〇〇さんから教わったから」と責任転嫁する。(外罰的)

「新人が辞めたのは私の教え方のせいです」とすべてを自分の責任にする。(内罰的)

昇    華 抑圧された本能や攻撃性などのエネルギーが社会的に容認され適応された行動に変わること。防衛機制の中では好ましい働き。  日頃の鬱憤をスポーツや芸術を通し解消する

仕事を辞めようか悩んでいたので他分野の仕事の資格を取得しまくった。

補償 勉強が振るわない学生がスポーツを頑張る(逆も)容姿に自信がない人が経済力を身につける など
合 理 化 自分が失敗をした時に、もっともらしい理屈を後付する働き。 試験で不合格になったとき、試験官の態度がおかしくて集中できなかったなど言い訳する。

2,養育者(両親や祖母など)から教育(躾)されたことで、今でもよい出すことは何ですか 

例)「中途半端にするならいっそのことやらない方がいい」 「時間はまってくれない」 「時間に遅れる人間は信頼を失う」 「人様に迷惑をかけるのは最低だ」 「自分のことばかり優先する人間は駄目人間」 など

これは、過支配な家庭で育ち、思考のゆがみ(完璧主義、~すべき)が強く残っているかどうかを見極める質問です。「~すべき思考」が強いと、勤務中にこの人が思うように周りのスタッフが動かないと、

過支配になることが多くあります。「中途半端にするくらいならやらない方がいい」などの思考が強いと完璧主義的な傾向がでてきて、目標管理で順調に目標達成に向かえないと途中で投げ出してしまったり、

「この病棟はレベルが低い」「この病院は全然ダメだ」とか「遅れてる」などの二元論的な発言で、周囲のスタッフのやる気をそいでしまったりすることもあります。

また、優秀なスタッフだと思い、主任等の役割を与えようと打診すると「この病棟ではやれる気がしません」「このメンバーじゃ自分が作りたい病棟ができそうにないです。」と、役割をとらなかったりします。

完璧主義な人は、組織や管理職という役割に対して「果てしなく高い理想像」があります。その高い理想像と現状の組織や人を比べて幻滅しているので、理想像へ到達できる勝算がなければ踏み込みません。

また、この完璧主義は自分にも向いてしまいます。自分をもつねに「高い理想」から評価しているのでいつも焦っていたり、フラストレーションを抱えてイライラしていたりと、完璧主義を持つ人は感情が落ち着きません。

皆さんの職場にも「仕事はできるんだけど、感情統制がねぇ」というスタッフが結構いるのではないでしょうか。

下記挿入の一覧表参照 完璧主義思考は表の1番、「~すべき思考」は7番、「この病棟ではやれる気がしない」「このスタッフでは自分のやりたい病棟経営はできそうにない」は6番の決めつけ。

「人様に迷惑をかけてはいけない」「自分のことばかり優先してはいけない」などの躾を幼少期に強くされすぎると、自分のことは後回しにして、人の顔色ばかりを伺ってしまう傾向が残ってしまいます。

一見、人のことを優先できる優しい人と見えるのですが、「人の目が気になって発言できない」とか、「人に拒絶されるのが怖くて、部下の悪いところを注意することができない」など、しっかりと指導職の役割を取れないのもこうした考えを持っている人が多いものです。

思考のワク 
歪みの思考法 傾向 修正 思考の例え 合理的反応(考え) 月  日 感情が動いたシーンと出来事
どう考え、どう感じたか
感情 %
感情の揺らぎto
感情の種類
合理的な考え・反応 感情 %
 1.完璧主義思考 0か1かのような極端な考え方を 初めての院内研修の講師をしたが、私の教え アンケートには熱意のある説明がとても心に響いた
物事を正しいか間違っているか やめる 方は全然ダメだった。 とも書いてあった。すべてが悪い訳でもないな。
白か黒か極端に思考する。 この病院はレベルが低い、全然できてない 二元論はやめよう。完璧なものなんて世の中にはない
全が無かと極端に思考する 二元論をやめる 課題が最後まで終わりそうにない。
もうだしても無意味だ
途中でも勉強になることはあるし、先輩も努力だけは認めてくれるかもしれない ださないよりいいな
 2.過度の一般化 「いいこと」があったことを思い 娘はいつも私に反抗をする。 いつも反抗ばかりしているといのは大げさだ
否定的なことが、いつも起きてい 出すようにする。 ついこの前は素直だった。
るかのように過度に一般化する。 あの新人は必ず報告を忘れる 回数は少ないが忘れないときもあった
いつも、絶対、必ず、全然~ない 一度も いつも 絶対 必ずではなく例外もある 極端に
考えるのはよそう
 3.マイナス化思考 肯定的な事を否定する。 肯定的な事を認める。 新しい白衣を「似合うね」と褒められたが、 褒めてくれたのだから素直に受け取ろう
「こんなの通販よ」と否定した
私は扱いやすいから、主任にしたいだけだろう 私なりのマネジメントができるとを期待してくれているのかも
 4.心の読み過ぎ 部長は会議で私の提案に多くの質問を 良い提案と思っての質問かも知れない。
してきた。きっと私を嫌っているに違いない。 勝手に憶測するのはやめよう。
あの人はこのように思っている 相手の気持ちを自分の考えで
に違いないと勝手に憶測する。 憶測しない。
新人は私のことを厳しい先輩だと 人の心を勝手に読むのはやめよう
思っているだろう
 5.先読みの誤り 心配性の人は物事を悪い方へ プラス思考。 私が主任になってもきっと病棟はまとまらない やってみなければわからない
悪いほうへと作り上げてしまう。 だろう。 勝手に悪い方へ考えるのはやめよう
管理職なんて大変なだけ 早く帰れないし。 未来はつくっていくもの。自分から早くかえるようにしよう
 6.決めつけ 自分の気持ちと、現実を一緒の 感情と現実を区別する。 人は裏切ると思う。だから、信じるのは危険だ。 裏切る人もいるけれど誠実な人も多い。決めつける
ものと考える。 飛行機は落ちると思う。だから乗るのは危ない のは止めよう
A = B と根拠なく決めつける 根拠なく決めつけない 上司は勝手 男はオオカミ  水を飲んでも太る 勝手な人は多いが違う人もいる  狼でない男もいる
X だから Y  と決めつける 忙しい。だから優しくできない 忙しいからこそ、心を無くさないようにしていこう
時間がない。だから勉強できない 勉強はいつでもどこでもできる。できることから始めよう
 7.~べき思考 こう有るべきだと自分の考えを ~であるにこしたことはないが 社会人なんだから遅刻などもってのほかだ 時間を守るのは大事なことだ。でもいろんな事情でおく
押し付ける。 提出物の期限は人として守るべきだ れてしまうこともある。限定してイライラするのは
止めよう
そうでない時もあると柔軟に考える 上司への報告は忘れるべきではない 新人などは報告すべきと判断できない時もあるかも
しれない 報告できるように育てていこう
 8.レッテル貼り 自分や他の人の失敗があると レッテルをはがす あの人は以前、インシデントを出したことがある 以前失敗したことがあるからといって、今回もそうだとは
レッテルを貼ってみてしまう。 今回の失敗もあの人が関わっているに違いない 限らない。レッテルを貼って人をみるのは止めよう
担当した新人がやめた。私は指導には向かない 一度の経験でレッテルを張るのはもったいない
 9.個人化 全てを自分の責任だと考えてしまう 原因を冷静に分析してみる。 こうなったのは全て私が悪いのだ。 他の人の要因や環境要因をも考えてみる。
新人の育ちが悪いのは自分の教え方のせいだ 責任円グラフを書いてみる
スタッフが辞めたのは自分が異動を命じたせいだ 自分だけのせいだけで起こったわけではない。自分を責めすぎないようにしよう

これらの思考のクセは、幼少期からその人の言動の基本になっていて、成功体験や失敗体験により強化されているので、なかなか変えることができません。

私のところにもこうした「思考のクセ」をなんとかしたいと人がコーチングを受けにきます。例えば、「怒りたくないのについキツく言ってしまう」、「注意したいのになかなか注意できない」、「いつも自分はこれでいいのかと焦っていて苦しい」といったことでコーチングを受けに来る方がたくさんいます。

これらの葛藤は、私の書籍※でもご紹介している「二重の輪のコーチング」という難しい訊き方でないと解決できません。

弊社のコーチでも、このスキルの活用には四苦八苦しています。逆に、「二重の輪のコーチング」で葛藤を統合できるコーチングスキルがあれば、これらの思考のクセを持つ人を採用しても、成長させることができるようになります。(弊社コーチ認定の最終テクニックです)

 

実際に就職後、指導をどう捉えて改善し、環境に適応するかを洞察する具体的な質問は、

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https://note.com/3738mina/n/n5a57ae904360

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