「感謝する」「振り返る」「お礼を言う」ことができる新人を育てよう」

ワンランクUPポイント

1、誰かに感謝する気持ちは、人を成長させる。「感謝する大切さ」を教えることも重要。
2、リフレクション・シートを活用すれば、自然と「振り返り」ができる。
3、感謝の思いを口にできない新人には「お礼を言う」ためのフレームも伝授。

「せっかく入った新人をなんとか部署になじませたい」今の時期の現場指導者に共通した思いではないでしょうか。

新人に身に着けさせたい「20の行動」 に関する研修依頼をたくさん頂戴し、現場のニーズをひしひしと感じています。今回はは新人が「感謝する」「振り返る」「お礼を言う」ことができるようになるための教育方法とルーツをご紹介します。

新人の自己肯定感をアップし、他者への感謝の気持ちを呼び起こし、生活や仕事に対して、さらに前向きになれるような指導を、現場で実施するときの参考にしていただけたら幸いです。

「感謝する」気持ちが人を成長させる

私は高校教諭時代にソフトテニス部の顧問をやっていました。運動部の顧問になると土日や長期休暇は練習や試合の引率があり、年間10日間ほどしか事実上の休みはありません。

試合に顧問は不可欠ですから、自分の子どもが熱を出しても、後ろ髪をひかれながら試合会場に行っていました。

看護科教員に運動顧問はいなかったので、同僚の理解もなく、孤立していました。こんな働き方をしていた私は当時、精神的にもかなり追い詰められていました。

ある日、子どもの発熱を理由に早く帰るとテニス部の生徒に言うと、生徒は「部活だって先生の仕事なんだからちゃんとしなくちゃいけないんじゃないんですか」と意見してきたのです。カッとなった私は、「休日に部活の指導をしても手当はつかない。むしろ、今日は子どもを有料のファミリーサポートセンターに預けてきたから大赤字だ!」と大人げなく怒鳴ってしまいました。

高校生では給料の相場などはわかりません。生徒は「先生の給料は40万円くらいで、休日出勤したら1万円くらいもらっているんだと思ってた」と口々に言っていました。

私は、教員としての自分の給料や、休日出勤の手当はつかないこと、休日は子どもファミリーサポートセンターに預けるには1日8000円ほどのコストがかかることを伝えました。

それでも、「あなたたちに努力することの大切さや、試合に勝つ喜びを味わってほしいと思って頑張っている」と話して聞かせました。生徒は目に涙をためて聞いていました。

それまで私がこうしたことを言わなかったのは、「自分に感謝しなさい」と恩を売るようで「なんだかカッコ悪い」と思っていたからです。でも、このことがあってから生徒はメキメキと強くなったのです。

これを機に私は、誰かに「感謝をする」気持ちをもつことは、人の力を何倍にも引き上げるということを学びました。しかし、「感謝することの大切さ」を教えてもらわなければ、「感謝する」ようにはならないものです。皆さんもぜひ、ためらわずに、新人に「感謝をする」大切さを教えてほしいと思います。

「振り返り」ができる新人に育てよう

たびたび教育担当者の方々から「今年の新人は『振り返り』ができない」と、お聞きします。こうした場合、教育担当者と新人で「振り返り」の定義がすれ違っているというケースがあるので、言葉の定義を両者ですり合わせることから始めるとよいでしょう。

新人に「振り返り」の定義を質問すると、「自分の悪いところを反省すること」という答えがよく返ってきます。

一方で人材育成における「リフレクション」(reflection)とは、「内省、熟考」の意味で、自己の経験を振り返って学び整理することです。

WEBサイト「日本の人事部」の人事辞典では、「個人が日々の業務や現場からいったん離れて自分の積んだ経験を『振り返る』ことを指します。過去に起こった出来事の真意を探り、その経験における自分のあり方を見つめ直すことで、今後同じような状況に直面したときによりよく対処するための「知」を見出そうとする方法論」とあります。

教育担当者の指す「振り返り」は、看護実践のリフレクション(状況の描写・明確化、状況の分析・評価、学習)だと思いますが、就職したての新人には難易度が高いことが多いです。

新人にはまず、自分の仕事の進め方やふるまいを見つめ直して改善していくということが身につけさせ、段階を追って、看護実践のリフレクションにスライドさせるのが、現状に合っているように思います。

リフレクション・シート

【ねらい】このシートはあなたの自己肯定感をアップし、他者への感謝の気持ちを呼び起こし、あなたが生活や仕事にさらに前向きになれるためのものです。これまでの人生や就職してからのことをまとめてみましょう。
記入時間のめやす 1.4分 2.4分 3.3分 4.2分 5.10分 6.2分 計25分 1~5は事前課題。6は実行後に記入します。

1、これまでの人生を振り返って 4分

あなたが親や養育者にしてもらったこと

あなたが親や養育者にしてあげたこと

2、就職してからを振り返って 4分

あなたが先輩にしてもらったこと

あなたが先輩にしてあげたこと

3、記入してみて、今のあなたはどんな気持ちになっていますか、または、どんなことを思っていますか3分

4、こういうところはなかなかいいな、と自分自身をほめてあげたいところはどんなところですか 2分

5、上記を記入してみて振り返り(リフレクション)つまり自らの言動や傾向を客観的に捉えて、次に向けた改善点の洗い出しを行い、その改善を実行する具体的な行動プランを考えてみましょう。10分

自分の言動や傾向を客観的に捉えると 自身の改善点(課題)は 改善(課題)を実行するための具体的な行動プランは

6、上記の具体的な行動プランを実際に実行に移して得られたこと、改善できたことは何でしょうか  2分

7、業務時間内や研修参加時にこのシートを記述した方は、部署のスタッフに「研修に参加させていただいて」(もしくは時間を頂戴して)ありがとうございました。」とお礼を伝えるようにしましょう。

リフレクション・シートを活用した新人育成

上記は私が新人研修で使っている「リフレクション・シート」です。

自然に他者へ感謝し、謙虚になりながらも、自分のよいところを肯定し、課題と向き合い改善策を考えられるように、コーチングのメソッドに基づき設計してあります。

「1.これまでの人生を振り返って」の欄の「親や養育者にしてもらったこと/してあげたこと」、「2.就職してからを振り返って」欄の「先輩にしてもらったこと/してあげたこと」を記入していくと、ほとんどの人の場合、「自分はやってもらったことが多くてやってあげていることが少ない」と相手へ感謝の気持ちが生まれ、謙虚になります。

その様子は次の質問の「3.記入してみて、今のあなたはどんな気持ちになっていますか、または、どんなことを思っていますか」に現われますので、ぜひ、新人の記入した答えを読んでみてください。

このシートの構造だと、謙虚な気持ちになった上で「4.自分自身をほめてあげたいところ」を考えるので、天狗になることがありません。

そして、5番の項目で、自分の課題に向き合い、改善策を考えていくという流れになっているので、シートを記入することで簡単に「振り返り」ができるのです。

人間には気分の変調があります。いい気分のときは前向きに物事を考えられますが、そうでないときは落ち込んだりします。たかが課題のシートですが、されどシートです。気分がいい状態はいい思考を引き寄せます。

コーチングではこの状態管理を非常に大事にします。だから、弊社のコーチング受講者は大きな目標も夢もどんどん達成していけるのです。

「6.具体的な行動プランを実際に実行に移して得られたこと、改善できたことはなんでしょうか」は、5番で立てた改善プランを実行した後に記入するので、自分に自信が持てるようになってきます。集合研修で使うときは、この部分を隣の新人と共有させると、新人同士の関係構築にもなります。OJTで活用する場合は指導者がコメントを記入したりフィードバックしてあげたりすると新人と指導者とのきずなも深まりますのでオススメです。

「お礼を言う」ができる新人に育てよう

リフレクション・シートの最後には、「7.業務時間内や研修参加時にこの記述をした方はさせてもらった部署のスタッフに「研修に参加させて頂いて」(もしくは時間を頂戴して)ありがとうございました。」とお礼を伝えるようにしましょう」と意図的に記しました。

こんな常識的なことをわざわざ書かなくてもいいんじゃないのと思われる方もいらっしゃると思います。でも、最近の新人は、なかなか思いを言葉にできない、表現できないといったことも現実です。

研修で新人に、なぜ思っていることを言葉にできないのかを聞いてみると、「どんな言葉で言ったらいいのか思い浮かばないから」という答えが多く、単に敬語の使い方や語彙の少なさに原因があったりします。

ですから、教える側もセリフ単位で具体的に教えることが求められます。「感謝はしているけど、なんて言ったらいいかわからない」なんてことが実際にはあるのだ、と私も新人と関わらせていただいて日々学ばせてもらっています。

ぜひ、このリフレクション・シートを「感謝をする」「振り返る」「お礼を言う」という行動がとれるような人に育成するための1つのツール方法としてご活用くだされば幸いです。

※シートの原案が欲しいという方は「リフレクション・シート希望」と記載のうえ、お問合せください。

 

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