(後編)仕事よりもあそびが大事な中堅ジェネラリスト活性化のための目標管理

※ 看護展望 2018-4 Vol.43 no.5掲載、ブログにするにあたりメヂカルフレンド社より許可を頂いております。

仕事よりもプライベートを優先する最近よく目にするタイプの中堅ジェネラリスト看護師に対し、
コーチングテクニックを活用した目標設定面接後、スタッフの行動変容が見られた成功事例の事例を
紹介する後編。(前編はこちら

コーチングテクニックを使用し、
中堅ジェネラリストの行動変容に成功した目標設定面接

目標設定面接(看護師長の立場から記述)

患者の急変があっても定時に帰ることができていた日を思い出し、⑧「先月の日勤のとき、ほら、
〇〇さんの転院とかあったとき、忙しかったけど定時で帰れたよね? 何がよかったの?」
と聞くと、
「〇△先輩が、これ私やっておくからね。転院と入院だけ受けて」と、業務を請け負ってくれたのだと振り返った。

⑧これは「過去の成功体験を引き出す」というコーチングのテクニックだ。
この質問に対する答えから早く帰るためにやればいいこと、そしてできたことが明確になる。
この質問に答えていると「忙しくても早く帰れたこともあったなぁ」という「良い過去」に戻るので
面談の相手はリソースフル(自信に満ち、何でもできるような気持ちになっていること)な状態になる。
面談で大事なのは相手が良い気分や状態になって様々なことを考えられるようにリードすることだ。

リソースのない状態で未来の目標を考えても、良いアイディアも浮かばなければ、モチベーションも上がらない。
面談をする側の状態管理能力が、面談の良し悪しを決めるといっても過言ではない

定時で帰ることができているロールモデルの先輩方から、これまで自身が早く帰れなかったようなケースを想起し、
⑨「こんなときは、どんな仕事を優先し、具体的にはどの業務をだれに依頼すればスムーズにいったのか」
というアドバイスをもらうこと
を、来週までの課題とした。

⑨この指示はメタモデルの質問(いつ、どこで、だれが、どのように、どのくらいで、どんなことを)を
使った、具体的で効果的な方法である。
うまくいかなかったとき「あのスタッフは振り返りができない」という発言をよく聞くが、
“振り返り”という言葉自体がとても曖昧だということに気づく必要がある。
良い振り返りは、次にすべきことが具体的にわかる。
まずは、面談者側の言葉をメタモデルでクリアにする必要がある。

 

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彼女のもう一つの問題である、仕事が自分の力量を超えた場合でもほかの人に依頼できないことについて、
⑩「仕事をほかの人に頼むことを止めるものは何ですか?」と聞く。

⑩「仕事を頼みたいのに頼めない」「どうしても仕事を抱えてしまう」。
「~~したいのに、できない」という悩みは葛藤といわれる。
コーチングのなかでも「二重の輪のコーチング手法」といって、一番難しい話の聴き方になる。
この形式できた悩みには、この看護師長のように、「~~止めているものは何ですか?」と尋ねるのが最適である。

彼女は、患者さんが自分に依頼したことは、⑪「やっぱり自分ですべきなのじゃないか」と思うからと答えた。
また、⑪仕事は完璧にしたい。だれかに頼んでも見直しをしないと気が済まない。
そうすると自分でしたほうが早いと感じてしまい、人には頼めないと言った。

⑪相手の行動変容を促したいとき、実は変える必要があるのは、こうした「認知のゆがみ」なのである。
無理やり指示して行動をとらせたところで継続は不可能なのである。

そこで、⑫「ほかのスタッフが仕事をいっぱい抱えて大変そうなとき、あなたならどう対応する?」と聞くと、
「手伝いたいし、手伝います」と彼女が話した。
「みんな同じ気持ちで、あなたのこともみんなは手伝いたいと思っている」と伝えた。

⑫反対の立場になったとしたらどうか、と聞いてみる。これは、ポジションチェンジというテクニックである。

さらに、⑫「あなたに用事を頼んだ患者さんが、自分が用事を頼んだからこの人残業してるんだ、
申し訳なかったと後悔していたとしたらどう?」
と聞いてみた。
すると、「患者さんに後悔させては逆に申し訳ないです。そうですね、実際患者さんにそういわれたこと、あります」
と過去の自分の経験を話してくれた。

最後に、⑫「仕事を完璧にしたいからほかの人には頼めないって先輩が思って、あなたに仕事を依頼しないとしたら、
こんなに仕事ができるようになったかな?」
と聞くと、
「あっ、私は信用して任せてもらってきたのに失礼ですよね。信じて任せて育ててもらってきたのに……」
と後進の育成のためにも仕事を任せなければならないと気づいたようだった。

今後は、仕事を抱えずほかのスタッフに頼めるようになりたいと彼女は真剣な表情で話した。

 

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看護師長による目標設定面接の総括

 

患者さんに頼まれたことは自分でするべきだとか、仕事は完璧にしなければいけない、ほかの人には頼めないなど、
彼女の発言には「~すべき思考」や「完璧主義思考」を示す言葉が多く聞かれた。
そこで今回の面接では、この考えを見直すきっかけになるような質問⑫をした。
そして、⑬面談後には、恐る恐るではあるが、仕事をほかの人に頼んでいる彼女の姿をみることができた。

⑬この行動の変化はなぜ起こったのかというと「本当の意味で相手の身になれた」からだ。
「もっと相手の立場にならないと……」と私たちはよく言うが、実は結構難しいことだ。
このように面談者から、効果的に相手に自分の立場を俯瞰させる質問ができることが望ましい。

「リーダー業務=早く帰れない」という決めつけた考え方に対しても「本当にそうなのか?」と考えさせることが
できたように思う。
また、いつもていねいで正確に仕事に取り組む姿勢をすばらしいなと思っていることや、
仕事上の疑問点を解決すべく熱心に調べている姿などをみると、
学習自体は嫌いではないのではないかという看護師長の見解も伝えた。

勉強会に出席すると一気に仕事で悩んでいたことが解決できたりする。
⑭学会なんていっても日々の看護業務の工夫(彼女はよくやり方を工夫して業務改善につなげていることがある)を
あるやり方にのっとって研究するだけだし、発表だって共同でやることもできるよ、とハードルを下げる声かけをした。

最後に、⑭「ダンスに料理にと勉強熱心なあなたは、リーダー業務だって学会発表だって工夫しながら
楽しんでできるようになるよ」と強力にやる気がでるような言葉を選んで伝える
と、
「なんだかリーダーも学会発表もできそうな感じになってきました! 自分のペースで少しずつでもいいんですよね?」
との発言が聞かれた。

⑭このような声かけは「暗示」で強力なコーチングのテクニックの一つである。
このタイミングで活用できるというのはすばらしい。

 

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看護師長(面接者)による目標設定面接後のフォローとまとめ

 

まず、「何があったら時間内に仕事が終わるか」と自問自答できるようになるまで彼女のなかに定着させる。そのため、
業務が遅くなったときこそ「この経験を次にどう生かしていくか」と考えることが大切であることを繰り返し話した。

「ピンチはチャンス」うまくいかなかったときこそ、仕事ができるようになる絶好の学びの機会であるという姿勢を
こちらが崩さないようにした。

自信がないという彼女に対して、勤務中の良いところを具体的にはっきりと褒めて「行動強化」につなげ、
「相手の存在を承認」するかかわりをもち、支えることに注力した。

褒めることも、叱ることも具体的に、無条件で肯定するかかわりを多くもった。
無条件の肯定というのはつまり「愛情」のこと。子育てと同じように「あなたを認めているよ」という
愛のメッセージをたくさん与えることで、安心させながら相手の成長を促したいという意識でかかわった。
彼女から「リーダーをやってみたい」という言葉が聞けたことでこちらも元気になれた

 

 

以上、中堅ジェネラリストの行動変容につながった目標設定面接の成功事例を紹介しつつ、
コーチングのテクニックという観点から解説をした。

コーチングで一番大切なのは相手の行動変容である。相手が自然に患者さんの立場に立って考えることができたり、
ほかのスタッフの思いを感じとれたりすれば、行動は容易に変わる。

教育ということを考えると、イソップ物語の『北風と太陽』を思い出す。
「もういい加減、中堅なのにリーダーをやりたくないなんて言ってらんないでしょ!」と北風にならなくても、
コーチング力さえあれば、ポカポカとあったかく照らすことで旅人のコートを脱がすことができる。
忙しい現場にあっても、看護管理者の皆さまにはやはり太陽であっていただきたいと願う。

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