仕事をしないスタッフを注意できない師長にモヤッ…役割を明確にして良い関係に

現場のスタッフを管理する主任や、先輩として後輩を指導する立場になったとき、師長やさらに上の人の行動にモヤッとすることは少なくないでしょう。

今回は、「仕事をしないスタッフを注意できない師長」の問題に注目。
「自分が頑張っても、師長が注意してくれないんじゃなぁ」とやる気を失ってしまったとき、どうすれば解決できるのでしょうか。

ケーススタディとして「自分なら…」とイメージしながら読んでみましょう。きっと、対人関係を良くするヒントになるはずです。

伊達主任の不満:仕事をしないスタッフを注意できない師長にモヤッと

伊達主任は、比嘉師長に頼まれて他のスタッフに業務分担を打診しますが、みんな理由をつけて引き受けません。

伊達主任がスタッフに声をかけて調整したのに、覆してしまう比嘉師長。
そんな比嘉師長に伊達主任は不満を募らせています。

「仕事をしないスタッフを注意しない」比嘉師長

にこやかな看護師長
ナース歴20年、師長歴5年。
仕事は迅速で丁寧。人柄も良いのでスタッフからの信頼が厚く、主任になって数年で師長に抜擢
1度結婚したが色々な事情があり離婚。以来、2人の子どもを1人で養ってきた。

3人兄弟の末っ子として2人の兄にかわいがられ、優しく育つ。父親は漁師で物静かだったがお酒が入ると暴れ、家族にも暴力を振るうことも。母は生計を担う父に歯向かえなかった。父親が暴れた翌日、家族は何事もなかったかのように振る舞う

幼いときのこんな体験から「仕事を持たないと母のように夫の言いなりにならなきゃならない。女だって自立しなくちゃ!」と思い、一生できる仕事として看護師という職業に就く。

思いやり深い比嘉師長にはナースは天職で、今は患者さんの笑顔を見ることが生きがい。

職場でのイライラ・モヤモヤを解消できる自分に。TNサクセスのコーチング

「仕事をしないスタッフを注意しない師長にモヤっとする」伊達主任

困った顔の看護師
ナース歴13年。3回転職し、この病院は勤務8年目。
3つの病院で色々なタイプの上司と働いてきた。独身。

警察官で厳格な父とボランティア好きの母、甘えっ子の妹との4人家族で育つ。母親は専業主婦だったが、民生委員などを引き受けていつも忙しかった。「悪いことをさせる側にも問題がある」という父の持論の影響を受け、「良いことは良い。悪いことは悪い」と自分の意見をはっきり言う子に。

学生時代は風紀委員を率先して行なう。風紀委員をしたクラスは成績バツグン、校則も守れる「モデルクラス」と校内で表彰されたことも。そんな彼女なので、仕事をしないスタッフを注意しない比嘉師長にモヤッとする。

2人の言い分を聞いてみよう

伊達主任は、比嘉師長の仕事ができて優しいところを尊敬していますが、仕事をしないスタッフに注意できないところにモヤッとしてしまいます。それぞれの言い分を聞いてみましょう。

比嘉師長の言い分

伊達主任には「仕事をしないスタッフにもっと厳しく注意してほしい」と言われて困る。学会の発表なんかを断ることは「仕事から逃げているだけ」だって…

でもみんな色々な事情を抱えていて大変なのよ。体力的に厳しい年齢の人だっているし、家庭を持ってるスタッフは色々と抱えていることが多いから、配慮するのは管理職として当然のことだと思う。

私たちだって、若いときは何でも引き受けて仕事してきたのよ。理想的な業務分担っていうのも大事だけど、「とにかくやれる人がこなす」って考えなきゃできないことだってある。

スタッフのなかには20年近く一緒に働いてきた人もいる。人手不足で、病棟が閉鎖しかかったときはみんなで必死に乗り越えてきた。そのときの私たちのがんばりがあるから今、病棟が存続しているってこともあるのよ。

「仕事をしないスタッフ」っていう人は基本的にいないの。
みんなどこかしらでがんばってきたんだから。

伊達主任の言い分

今の病棟の人たちは仕事熱心じゃないと思う。さすがに決められた勤務を休む人はいないけど、看護研究や学会発表の役割、委員会の仕事もイヤイヤって感じ。前にいた大学病院じゃ、先輩たちが進んでやってくれて「私もがんばらなくちゃ!」という気になれた。

「病棟内の役割分担を考えて本人に打診してほしい」と比嘉師長から頼まれてるけど、「私やります」なんて言う人は1人もいない。この病棟には私より年上の先輩が4人いるけど、どの人に頼んでも断られる。

吉田さんは一度、学会発表をOKしてくれたのに、「比嘉師長に相談したら”無理しなくていいのよ”と言われたから」と断ってきた。

私が調整しようと頑張っても、師長がそんなふうなら意味がない
比嘉師長は優しいけどリーダーシップに欠けると思う。
あ〜あ、何かもう主任なんて板挟みで嫌になっちゃたなぁ…

伊達主任はなぜ、注意しない比嘉主任にモヤっとする?

看護師・立ち姿

伊達主任は物事がきちんと見えています。先輩ナースたちの「仕事ができない」という理由を嘘だと見抜いているのです。そして、彼女は「仕事は率先してやるべき」という信念も持っているので、先輩たちの仕事に対する姿勢にまずモヤッとしています。

さらに、伊達主任は「良いことは良い。悪いことは悪い」とはっきりすることが大切だと思っているため、先輩たちの言い訳を擁護する比嘉師長をまったく理解できません。伊達主任は比嘉師長を尊敬している部分も多いので、ますますモヤッとしてしまいます。

人は、何とも思っていない人が理解できない行動をとったとしても何も感じません。でも、尊敬している人が自分の思ったように行動してくれないと、すごくがっかりするものなのです。

伊達主任は優しくて仕事のできる比嘉師長に期待が大きい分、仕事をしない先輩にきちんと注意できないところに失望してしまうのです。「どうして前の上司にはできて、比嘉師長にできないのか」とイライラしているところもあるようです。

比嘉師長は仕事をしないスタッフにどうして注意できないの?

看護師長・立ち姿

比嘉師長が仕事をしないスタッフに注意できないのは、スタッフの事情を聞くと感情が先に動いてしまうからです。

比嘉師長には物事がきちんと見えていません。
比嘉師長は、スタッフの仕事ができないという理由が嘘だと見抜けていないのです。

なぜ見抜けないのでしょうか。それには2つの理由があります。

注意できない理由その1:元同僚の立場から抜け切れていない

1つ目は、伊達主任にとっては「仕事をしない先輩ナース」でも、比嘉師長にとっては「大切な元同僚」でもあるからです。比嘉師長にとって、スタッフは病棟閉鎖の危機を一緒に乗り越えてきた大切な仲間。

仕事を引き受けられない事情を聞くと「大変だなぁ」と感情が先に立ってしまうのでしょう。比嘉師長にとってはスタッフの嘘というより、元同僚の「正当な理由」に聞こえてしまいます。

「師長としてはそんなんじゃダメでしょ」と思う人もいるでしょう。でも、こういった人は多いものです。どこからか異動してきた師長ならまだしも、同じ職場の同僚が、あるときを境に上司になるというのは大変なことなのです。

感情に流されてしまう比嘉師長だからこそ、同僚の嫉妬で足を引っ張られることもなく、平和な病棟経営ができてきたという見方もできます。元同僚をひいき目に見てしまうということも、「まあ、人間味があるのかなぁ」ととらえることもできますね。でも、伊達主任や仕事を振られる側にとってはたまったものじゃありません。

注意できない理由その2:問題から無意識に逃げている

2つ目は、彼女の生育歴にあります。彼女は父親がお酒を飲んで暴れた翌日でも「何事もなかったかのように振る舞う」家族の元で育ちました。誰かがそのことに触れてしまうと、父親が暴れるという「問題」と向き合わないといけなくなります。きっと家族の誰かが向き合って、さらに父親の暴力に遭ったという経験があるのでしょう。

「何事もなかったんだ」としてしまえば、問題と対決しなくて済みます。比嘉師長は困った状況に出遭っても「問題として見ない」というクセがついてしまったのでしょう。悪く言えば「みんなにも事情があるのよ」と言っていれば問題を発見しなくて済みます。

比嘉師長が「仕事をしない元同僚」とさえ見なければ、注意する必要もありません。元同僚の「仕事を引き受けられない事情」に感情移入しすぎるのは、比嘉師長が「問題」から無意識に逃げるためなのかもしれません。

立場の違うあの人とわかりあえる。TNサクセスのコーチング

〜目からうろこポイント〜 「モヤっと」を解消するには?

悪の発生原因には「場所が違う」ということがあります。たとえば、車で速く走ることが好きな人がレーサーになり、サーキットで走った場合は「すごい!」と一目置かれます。でも、一般道路で同じスピードで走れば迷惑で危険、たちまち違反で捕まってしまいますね。

同じことをしても、場所を誤るとそれは悪いことになってしまいます。これは、その人にとって適した場所が違っているということなのです。この場所を役割と考えることもできます。比嘉師長の例をとって考えてみましょう。

役割(場所) 結果 みんなの評価と成果
スタッフ 仕事が迅速で丁寧、何でも仕事を引き受けてきた
主任 仕事ができ、人柄が良くスタッフの信頼が厚かった
師長 優しいが、仕事をしないスタッフに注意できない

いかがでしょうか。人にはパフォーマンスが上がる最適な役割(場所)があるのです。

主任としての比嘉師長は仕事もでき、スタッフの信頼も厚かったため、すぐに師長に抜擢されました。
しかし、主任として優秀だから師長としても優秀かと言えば必ずしもそうとは限りません。

世の中には良い人だけど、その役割は合わないということがあるのです。もしかすると、伊達主任のほうが師長としては適任なのかもしれません。

皆さんの周りにも「この人は役割(場所)が違うんじゃないかなぁ?」という人がいたら、上記の表に照らし合わせて考えてみてください。きっと何かが見えてくるかもしれませんよ。

人を知って自分もグングン成長できる。TNサクセスのコーチング

仕事をしないスタッフを注意できない師長のいる職場、どうしたら良い?

それぞれの役割を、はっきりと整理しましょう。

比嘉師長は、本来自分がすべき業務分担という仕事を、無意識の逃避から伊達主任に振っています。でも結局、伊達主任が引き受けてもうまくいかずに二度手間になっています。

伊達主任は思い切って「この仕事、自信がないので…」と請け負わないようにします。または、「この人はこの役割に適任」という原案だけを提出し、本人との調整は比嘉師長にお願いしても。すると、さすがにみんなの事情を汲くむわけにもいかず、比嘉師長の問題解決能力がアップします。

師長が「この役割が苦手」と思うことから、無意識に逃げたくて主任に仕事を回してくることがあります。こんなときは上手に断ることが大事です。それには、「そもそも師長の役割とは何なのか、主任の仕事とは何なのか」を自分のなかではっきりと整理しておくことが必要です。

リーダーシップに欠ける師長と仕事をするとき、「適材適所という言葉で、師長が苦手な仕事から無意識で逃げていないか」という視点を持つ必要があります。引き受けても良い仕事と師長がすべき仕事を見抜く目をこちらが持っておくということです。そして引き受けた仕事に関しては全力を尽くす、そうすれば比嘉さんのような師長さんとも、うまく関係を保ちながら仕事していくことができます。

人は「役割から逃げられる」と思うと、つい色々な理由を考え出してしまうものです。この場合「逃げられる」と思わせる側にも責任があるのです。

本当は比嘉師長は毅然とした態度で、スタッフに嘘をつくなどの行為をさせないようにしなければなりません。管理職の立場にある人は、本当の意味でスタッフを生かさなければいけないのです。生かすとは、仕事を通してスタッフを成長させるということ。

スタッフの看護を進化させて、「ああ、ナースになって本当に良かったなぁ」と仕事に誇りをもたせてあげるのが管理職の究極の仕事なのです。

みなっちからのアドバイス★

伊達主任は「理想の師長とはどんな人か」、「自分なら問題をどう解決するか」を比嘉師長を通して勉強させてもらいましょう。反面教師だってやはり立派な教師。もしかすると、伊達主任がすてきな師長になるように、比嘉師長は自分の悪いところを見せてくれているのかもしれないですよ。

あなたの与えられている役割(場所)は合っていますか? ときには自分の仕事を客観的に評価してくれる人の話を聞きましょう。

相手と無意識に信頼関係が結べる!
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スッキリポイント!

  1.  師長の役割、主任の役割を自分のなかではっきりと整理しておこう!
  2. 「 役割が合っていないのかもしれないな」と洞察できるようになりましょう!

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