池西靜江先生と看護教育を語る(後編)

※看護展望 2015-1172 Vol.40 no.13掲載、ブログにするにあたりメヂカルフレンド社より許可を頂いております。

池西靜江先生と看護教育を語る(前編)はこちらから。

池西靜江氏
国立京都病院附属看護助産学院、京都府立保健婦専門学校を卒業し、臨床経験後、看護教育の道に進み、看護教員歴37年を経て、2013(平成25)年3月(専)京都中央看護保健大学校を退職する。その後、看護教育を応援するために個人事務所を開設し、現在に至る。

 

“考えられない学生”はどうして生まれるのか

今の時代の学生への考えさせ方

 

池西先生
池西先生
先日、「吐血、喀血」の授業をしたんです。
私がこの授業で学生に理解してもらいたいと思っていたのが、吐血と喀血の違いでした。
その一つで、大量吐血は1000cc、大量喀血は50~100ccと教えたのですが、学生はイマイチ反応してくれない。同じ“大量”なのに、どうして量が違うのか、疑問をもってもらいたかったんです。
でも、学生は“そういうものなんだ”という理解で、覚えなくてはいけない数字でしかないんですね。
どうして同じように血が出ているのに、その量の判断が違うのか、そこまで考えられない
それならば、と、
「何で吐血と喀血では大量出血の基準が違うんだろうね」
と質問をしてみたら、ようやく私が待っていた反応が返ってきたんです。
要するに、“違いが何なのだろう”ということに、やっと興味をもってくれたんです。
そこまで教員が仕向けていかなければならないんです。
私たちは一方の血が鮮紅色で、もう一方が黒っぽいといわれたら“何で違うのだろう”と疑問を感じるのが当然だと思ってきましたが、今の学生たちは“そんなものなんだ”と疑問を感じずに素直に受け止めていく
それで、あとで覚えようと思うんだけれども、覚えられない学生が多い。そこも困ったものなのですが(笑)。
ですから、これからの授業では“普通だったら、これを言ったらこう考えるよね”と思うところを、こちら側から発問していかないと、学生が気付かずにサラっと流れていってしまう。
なるほど。
でしたら、そういった場面設定のようなものを授業でいっぱい教員側が用意してあげれば、学生たちは考えるようになってくれるのかもしれませんね。
これで問題が大幅に改善されそうですね。
奥山
奥山
池西先生
池西先生
そう思うのですが、なかなか大変なんですね。
その授業を行ったクラスでシミュレーション教育をしたのです。「肝硬変で食道動脈瘤が破裂した」というシナリオで、吐血をイメージして状況を設定したんです。モデル人形の口元に血を付けて、ガーグルベースンに200ccくらい絵の具で血を用意してね。
それでナースコールが鳴って呼ばれたという緊急時の設定で学生に対応してもらったのです。
そうしたら、「こんにちは。学生の○○です。いかがされましたか」って、まずは挨拶から始まるのですね。
そして、挨拶のあとに、患者さんじゃなくてガーグルベースンを見ているんです。
どうしてたの、と聞くと「吐血と喀血の鑑別をしていました」というんです。“そんなことをしていたら患者が死んでしまうよ”、と驚きましたが、その学生は以前の授業で“吐血と喀血の鑑別をしなくてはいけない”、ということは勉強していたので知っていたわけですね。
でも、今すべきことは吐血と喀血の鑑別ではないでしょう、ということですね。
こういった学生の姿を教員が見てしまうと、学生には何でも言って教えないとダメだ、という気持ちになってしまう。
教員としては言っておかないと仕事をした気がしないということになるのでしょう。
でも、一方的に教員が教えても学生には何も残りません。
学生に何が残ったのかをしっかり評価しましょうと、いろいろな場面でお伝えをしているところです。

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この対談記事が記載されています。
看護展望2017年11月号 Vol.42 No13 通巻530号 メヂカルフレンド社
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学生に授業で何かを残すために

 

言ったことが相手に伝わって初めて“伝えたこと”になります。
「この前言ったでしょ」と言わなくちゃいけないのは、実はこちらの伝え方にも問題があるのだと気付く必要がありますね
学生に“何でだろう”という問いを与え、その答えを引き出してくる過程が大事。
答えを教えてもらうだけではすぐ忘れてしまいます。
自分で気づいたことは記憶に長くとどまります。
でも、教員自身が受けてきた教育が
「何ページを開いて。はい、ここの吐血と喀血の違いは国試に出るからアンダーライン引いて」
という面白味のないものだと、授業とはそんなものだという先入観からなかなか抜け出せないと思います。
奥山
奥山
池西先生
池西先生
そうですよね。
だから、教育の方法を変えていかなくてはいけないと思います。
そして、教員が講義に、実習に、教員の仕事にやりがいを見いだして、いろいろ工夫することによって学生が変わる、そんな経験をしてほしいと思います。
そんな経験を積み重ねて、教育の醍醐味がわかると思うのです。それは短期間では難しいので、教員には少しでも長く教員をやってほしいんです。

看護教員のだれもが幸せを感じて働くために

池西先生
池西先生
看護教員になるきっかけは人それぞれです。
自分から進んで教員になる人もいるでしょうし、附属病院などからの異動で自分の意志に反して教員となる人もいるでしょう。
そのだれにでも教員の仕事はおもしろいという気持ちになってもらって、教育にどっぷりと浸かっていただきたい。
また臨床に戻るにしても、“教育は楽しかった”と思って戻っていただきたいんです。
しかし、現実は奥山先生も体験されたように新人の段階では理不尽なことに対しても意見が言えなかったり、いろいろと新しいアイデアを提案しても形にならなかったり、ベテラン教員との人間関係に悩まされることが実際にあります。
そんな問題に教育の現場は本気で向き合っていって、さらに発展をしてけるような環境をつくっていかなければならないと思っています。
本当にそうですね。
そんな理想を実現するためには今、何が足りないのでしょうか。
1つは教員に自信がある方が少ないのではないかと私は感じているんです。
実際に何十年も教員をなさっているベテランの先生の多くが私の継続教育などのセミナーにお越しになっています。
“教育とはこうなんだ!”っていう確固たる自信がベテランになっても培われてこない、経験が積み重なっている感じがしないので、看護実践能力の高い新人教員が入ると脅威を感じてしまうのではないかと私は思っています。
奥山
奥山
池西先生
池西先生
私も教員としての良い経験を積み重ねていないな、と感じる人と出会うことがあります。
以前は臨床の方にも、そんな風に感じることがよくあったのですが、専門看護師、認定看護師などのシステムが整備されてきてから変わりました。
キャリアアップの道が臨床の方のやる気を引き出したように感じます。
看護学校には教員養成講習会がありますので、そこで勉強をすると、キャリアアップを実感できましたが、そこからの先のキャリアアップの道がない。
そうすると、目標を見失ってしまい、向上心も薄れていってしまう。その結果、学生が変わったにもかかわらず、少し違うと感じていても、今までやってきた教育をマンネリ化しながら続けていく。それでは自信はもてませんよね。
今、私は学校のFD教育がとても大事だと思って活動をしています。ベテラン教員たちが自分の力を磨いて、それを研究授業の形で後輩に伝えていく。“先輩は授業力が違う”と後輩に見せつけることで、自信を深めてもらいたいという願いもあります。
もう1つは教務主任養成講習会ですね。
いわゆる専門看護師のような位置づけのものとして、キャリアアップの一つとして、そのシステムを確立していくことができれば、教員の目標が1つ増えますよね。
教務主任養成講習会で学んだ方が教務主任になってもらっても、もちろんいいのですが、現場で後輩を指導するような立場になってもすばらしいことです。
教員の方に話を聞くと、やはりキャリアアップの道が臨床と比べて少ないことがおもしろくないみたいですね。
看護学校に入ったら割と早い段階で専任教員の養成に出ますから、それが終わったら何も目標がないような印象を抱いてしまうそうです。

 

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ほめ方・叱り方① ゆとり世代との関わり方

※ その他沢山の動画があります! こちらから(チャンネル登録お願いします。)
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教員たちはだれもががんばっています!

池西先生
池西先生
教員を見ていると、本当に煩雑な業務があるなかで、良い授業をするために土日も返上して準備に明け暮れている方も多いです。
でも、そういう方々って自分たちのやっているすごいことを声に出さないで黙っているんですね。アピール下手といいますか。
ですから、そんな誇らしい取り組みをどんどん発表して、周りの教員に評価してもらったら達成感が味わえると思うんですよ。
一緒にアピールしていきましょうよ!
私は教員たちの学習コミュニティのようなシステムをつくりたいとずっと思っているんです。
勉強会、学会のようなイメージです。
看護教は他校の先生方と研究授業を行ったりする機会が、あまりないと思いますので。
「自分はこんなことに取り組んでいます」という発表や、「こんな教材を作りましたけど、使ってみませんか」というようなやりとりが自由にできる空間。
そんなシステムがつくれたら、それって知恵の宝庫になると思うんです。
そのコミュニティで、だれかに共感をしてもらえたり、喜んでもらえたら、すごく充実感を得ることができますよね。
教育って本当におもしろいです。だから、看護教員になった人は、だれもがその楽しさを感じてもらいたいです。
その楽しさを体験することが、教員を続けていく最大の動機になるのですから。
奥山
奥山

 

教育10年」という言葉があるように、教育はすぐに結果が返ってくるものではありません。
10年後、20年後、世話を焼かされた教え子が、立派に活躍しているのを知ったとき、
私は教育者として最高のうれしさを感じます。
ですから、教員の方には長く続けてもらいたいのです。
そのために、これからも私は自分ができるサポートを精一杯行っていきたいと思います。
お忙しいなか、本連載にご協力をいただきました池西靜江先生に深謝申し上げます。

 

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