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前編【中村秀敏氏×奥山美奈対談】20年間人材紹介会社を使わないマグネットホスピタルの秘密

北九州市の小倉第一病院。20年間、看護師の人材紹介会社を一切使わず、直接応募のみで採用を継続している稀有な病院です。なぜ、多額の採用経費をかけずとも「いい人材」が集まり、そして辞めないのか。

理事長・院長の中村秀敏先生と、同院の教育を長年支援してきた奥山美奈が、コロナバブル後の採用市場のリアルから、日本一手厚いとも言われる新人教育、そして「4年目のハワイ研修」の真意までを語り合います。

対談者紹介
中村秀敏 真鶴会小倉第一病院理事長・院長
奥山美奈 TNサクセスコーチング株式会社代表取締役·教育コンサルタント

コロナバブル崩壊と看護師採用の「現実」

奥山 本日は小倉第一病院理事長・院長の中村秀敏先生と対談させていただきます。中村先生、よろしくお願いします。 最近、「コロナバブル」と言われていたコロナ禍で、ワクチンの予防接種やコールセンターなどの高時給で働き、月収100万円などを稼いできた看護師たちが、コロナの5類移行に伴っていよいよアルバイトがなくなり、常勤の職場を探さなくてはならなくなっています。

中村 なるほど、いわゆるコロナワクチンなどのバイトを掛け持ちしていた人たちですね。

奥山 皆さん「こんなに税金や保険料が来るとは思わなかった、ひどい」と言っています。今、彼らはとても就職口に困っています。常勤はコスパが悪いと思ってアルバイトに逃げていたけれども、結局は現実と向き合って、目先の利益だけで動いてしまったことを反省し、一生懸命に就職活動をしていたりする現状です。

中村 すごいですね。

奥山 そうなんです。言い方は悪いですが、先生方にはそういう人に引っかからないようにして欲しいと思っています。経営者の方々が採用問題で悩んでしまうと、自分が本来やりたい医療や介護に注力できなくなってしまうので。 中村先生はご自身で採用面談もされていらっしゃると思いますが、「この人を採用してよかった」という事例や、採用した人に急な仕事を振った時に思いのほかパフォーマンスの高い仕事をしてくれたエピソードなどをお聞かせいただけますか。また、採用した人たちを育てるために、どのような研修や教育をして現在に至るか、ということも教えていただけたらと思います。

理想の人物像と「多様性」がもたらす組織の強さ

中村 はい。ありがとうございます。できるだけお役に立てるように頑張ります。

奥山 笑顔がいい、明るい、機転が利く、サービス精神があるなど、活字としてポンポンと出てくると思うのですが、今まで採用された中で「この人はよかったな」という人を思い浮かべていただいて、その要素を分析していただくとどのような感じでしょうか?

中村 今、奥山先生がおっしゃられたワードにかなりリンクしますが、もちろん明るくてコミュニケーション能力があって、愛嬌があって、誰にでも優しくできる方ですね。ごくごくありきたりですけれども、そのような方が一般的には理想だと言えるのではないかなと思っています。 私が採用に関わったのは2004年に副院長になってからですから、ちょうど20年携わっています。当初は先ほど挙げたような、絵に描いたような理想的な人がたくさん集まって、そういう人だらけになるのが理想だと思っていたのですが、同じような人ばかりだと組織としてうまくいかないのではないかと、ここ数年は少しその考えを改めるようになりました。 今回の話と逆説的になるかもしれないですが、私としてはもちろん、ある一定のレベルのコミュニケーション能力などは必要だと思ってはいますが、価値観であったり得意分野であったり、そういったものが多様な集団であるほうが、今回のコロナ禍や震災などの有事の時には、組織として力強く生き残れるのではないかなと思っています。

奥山 多様性ですね。

中村 例えば、普段はあまり真面目にしていないような人でも、すごく忙しくなった時に「忙しいのも楽しいよね」みたいな感じで笑って仕事をしてくれるとか。真面目な人ばかりだと、急に「入院が3人来ました」と言っただけで追い込まれてしまうようなことがあったりするのですが、そのような状況でもたくましさを発揮したり。私どもは何か災害を経験したわけではありませんが、そういった少しネガティブなことが起こっても、笑って乗り切っていけるような人というのは、必ずしも普段からずっとずっと真面目にやっている人ではないなと感じることがあり、考えを改めるようになりました。

栄養科の「プレゼンテーション面接」がもたらす効果

奥山 先生、さすがです。採用面談には私も栄養科で関わらせてもらいましたよね。「ある企画をパワーポイント3枚にまとめ、プレゼンテーションしてみてください」という面接に同席させていただいたと思うのですが、やはりその時のプレゼンがよかった方を就職されてから見ておりますと、素晴らしい仕事ぶりですよね。あの方法は、大人数の中から選ばなくてはいけないような時には最適な方法だと思いました。今も栄養科や他の採用でも同じような面接をなさっていますか。

中村 そういう採用方法は、大人数が応募してくるような職種のところに限られてしまいますね。ですから、看護師などではやったことがありません。栄養科は毎回、二次試験がプレゼンになります。あとはリハビリなどで比較的人数が多く来た時にそのようなことをしたことがあるぐらいで、ほとんどが栄養科という感じですね。

奥山 評価する側も「こういう質問をしましょう」といろいろ工夫して考えましたよね。実際に患者指導がうまくできるかどうかを見てみたいとのことで、面接側がすごく嫌な患者さんの役をして、意地悪な質問をしたりもしました。採用する側のスタッフもすごく成長したと私には見えて、とてもよい取り組みだと思いました。

中村 ありがとうございます。やはりプレゼンテーションをしてもらうと個性も出ますし、いわゆる面接での応答以外の部分もたくさん見えるので、プレゼンテーションをしてもらうのは本当に評価できて、すごくいいことだと思っています。

「圧迫面接」はしない。中村流・変化球の質問術

奥山 他の病院の採用プロジェクトなどをお手伝いさせてもらっている際に、「圧迫面談を少し入れたほうがいいのではないか」という意見がありました。ストレスがかかった時に人間がどう動くのかを見ておいたほうがいい、という理由で。集団面接をやらせてリーダーシップがとれるかどうかを見たいとおっしゃる方もいますが、私はあまり面接を受ける人にストレスをかけてしまってもよくないと思っています。もし他のところも受けていた時に「あそこでこんな嫌な質問をされた」と言われても病院の評判が落ちますし。 先生のところのようなプレゼンテーションなどで、適度なプレッシャーになるようなもののほうがいいと思っています。集団面接などは、学校でかなり練習してくるのですよね。「一番目に話したらダメ」とか、面接攻略本などでは「2番目に話して反対意見をわざと言ったほうがいい」とか書いてあったりもします。面接の攻略というテクニックに走っている人もいるし、みんなかなり想定問答を練習してきているので、必ずしもストレス下の状況でどう動くかが見られるわけでもないなと思ってます。

中村 私も、圧迫面接はあえてしないようには意識をしています。一方で、どうしても練習してきた、考えてきた回答ばかりになるような質問になると、やはりその人の素が見えないですし、全部考えてこられたのでしょうから「素を見せてください」と言っても、素が出るはずもありません。 ですから、私の役割になるのですが、例えば看護師の面接なら副看護部長、看護部長、事務長というように順番に質問していって、私の番が最後に回ってきます。その時にはもうみんながいろいろと質問した後なので、考えたことないだろうなという質問を投げかけたりします。「本当にこんなこと採用面接で聞くの?」というようなお話だったり、地元の子であれば住んでいるところをネタにして話を投げかけてみたり。みんなそういうのは面食らっちゃったりするので、その面食らったところでどんな反応をするかなども見ています。特に私はフランクに、あえてタメ口で話しかけたりして変化球を投げてみて、どう返してくれるのかという反応を見るようにしています。

奥山 素晴らしいですね。大抵はどうなりますか?

中村 うまくいけばそういったもので少し素も出してくれて、その素が魅力的に映ればOKです。けれども人によっては、変化球を投げても作ってきたままで返しちゃう。そんな時は「面白くないな、この人に何をどう言っても同じ答えしか返ってきません」という感じで、採点はちょっと低くなったりします。ただ、変化球を投げてみて完全に固まる人や、考えてきたことはすごくスラスラ言えるけれど想定外の質問で全く言葉が出てこない人もたまにいるので、そういったところは評価のポイントになったりします。

奥山 「レジリエンス」と言うのでしょうかね。変化球に対応できない人は、やはり現場に来ても固まるでしょうから、柔軟性のようなものが大事ですよね。

中村 そうですね。

アルバイトや部活動から「学業成績以上」の資質を見る

奥山 先ほど先生がおっしゃった、「何でも楽しめる」という価値観を持っている人は深刻になりすぎなくていいですよね。そういった方を採用するための工夫などはありますか?

中村 私がよくする質問ではないのですが、他のメンバーが質問する時に、例えば学生時代の部活やアルバイトで苦労したことや、トラブルがあった時にどのように対処しましたか、ストレスを感じた時にどのように解消しますか、といったことを聞くようにはしています。

奥山 労働価値観というのを、ここ4〜5年は新人研修やプリセプターの研修で聴取するようにしています。先生の大切にされている「学習する組織」に合致する人が就職されているように思いますが、やはり変化球も必要でしょうか。

中村 ありがとうございます。必ずしもそうとも言えないこともあると思います。ただそういう質問をするのは、「学校で真面目に勉強していました」というのは誰でも言えることなので。部活動でどんな役割を演じているか、アルバイトでどのような仕事の仕方をしているのかというのは、学業の成績以上に知りたいことにつながるのではないかと思いますので、あえて部活やアルバイトなどに関して聞くようにしています。

奥山 一方で、アルバイト全面禁止という学校もまだ結構あります。長期休みの時は届け出を出せばなんとかバイトできるけれど、本来は禁止。そうした場合、隠れてやってしまうことがあります。でも社会性を養う上ではアルバイトなどはすごく貴重な体験ですし、医療従事以外の立場を経験しておいたほうが本人のサービスの幅が広がるので、私はアルバイト推奨派なんです。しかし真面目な学生はバイト禁止の校則をしっかり守るので、経験しないで医療界に入ってきます。隠れてバイトしてきた人と差がついてしまったりして……。

中村 そうですね。実際にアルバイトの経験や、「そこそこ忙しい飲食店で働いていました、そこのホールで回していました」というようないい内容を聞ければ、その人たちの評価が上がるなと思って聞いたりしています。

奥山 先生、私は人材の紹介と派遣も細々とやっているんですが、ご紹介してよかったなという看護師は、携帯電話の会社に勤めていた人で、月間売上ナンバーワンになったことがある人です。すごく営業が上手で、すごく忙しい外来に配属されても、長く順番を待っているような患者さんに話しかけてコミュニケーションを取ったり、機転が利くんですよね。現場では「あんないい人を紹介してもらって」と感謝されました。勤務経験が短く、看護のスキルはあまりない人だったんですけど、接遇やコミュニケーション能力などの部分ですごく評価が高かったですね。

中村 そういう人がいたら私もぜひ採用したいですね。携帯会社でしたら、説明もうまいでしょうし、接客もうまいでしょうね。

採用面接でその人の「経験」を引き出す重要性

奥山 確かにそうでした!履歴書から学歴、職歴、自己PRなどは見えますが、いかにそこに書かれていないその人の経験を引き出すかが大事だと思っています。 先生の病院の管理栄養士さんの採用面接で、「何々したいのだけど、できない」「何々したくないのだけど、してしまう」という質問をしたことを思い出しました。あの時、就職試験に合格した方は「参考書をたくさん買ってしまうけれど、なかなか読めない」と答えましたね。他の人は「友達に注意しないといけないと思うときに、なかなか注意できない」などと答える人がほとんどでしたが、その方だけが、管理栄養士の資格と教員の資格を同時にチャレンジしていて、参考書を買うのだけれど積んだままで、なかなか勉強と読書が両立できないとおっしゃいました。その後、採用されたその方の働きぶりを見ていると、やはり質の高い人だったんだなとすごく納得しています。

中村 吉田は7年目になりますが、奥山先生が7年前のことをよく覚えていらっしゃって、私はそこに驚いています。

奥山 いや、もうすごいなと思って。そのような答えはすぐには準備できないじゃないですか。私は質問された時の表情などを見ていましたが、やっぱり落ち着いていらしたと思います。その後、吉田さんが学会で発表されている姿を拝見しても、内容も発表の仕方もやはり素晴らしいですし、良い人を先生のところでは採用なさっているなとつくづく思っているところです。 ところで、ドゥイさんが今年のプリセプター研修に出席されています。もちろん通訳なしで。先生の病院では外国人の方も多く勤務していらっしゃいますが、外国人の採用で気をつけていらっしゃることや、採用時にこのような質問をしている、などがありましたらぜひ教えていただきたいです。

外国人採用のリアル。笑顔と礼儀が日本人の刺激になる

中村 そうですね。外国人の採用に関しては正直、私どもが今の環境では選べる立場ではないですね。採用するかしないかという選択権はあるにはありますが、「この方どうでしょう」と紹介の形でもって、ピンポイントで来られます。採用しなかったら他の人を採用できるわけではないので、基本的に紹介された方をそのまま採用しています。 今来られている方々というのは、インドネシアの看護師や介護職の方です。インドネシアはイスラム教以外にも仏教もキリスト教もいるのですが、今うちに来ている人は皆さんイスラム教の人たちです。宗教観なのかお国柄なのか、皆さん本当に礼儀正しくて、すごく笑顔でしっかりと挨拶できて。挨拶に関しては「絶対日本人のほうが負けるな」と思うぐらいなのですが、必ずドゥイさんも満点の笑顔で挨拶が返ってきます。ですから、この点は素晴らしいなと思っていますね。

奥山 今は少子高齢化が進んでいるので、もう外国人を採用しないと現場が回せないですよね。先生のところのドゥイさんもメギさんも、どちらもすごくいい方ですよね。 私が支援している他の病院などでは、「外国人を採用したけれども、少し働いて逃げてしまった」という人もいたりするので。先生の病院ではどんな教育をなさっているのか、採用後のフォローはどのようにされているかなど、ぜひお聞きしたいです。 ちなみに明日もドゥイさんが研修に来られますが、大変熱心に参加されています。そのような風土をどう作っていらっしゃるのかにも興味があります。言葉の問題などもあって、他の参加者と同じように研修に参加してもらうのは難しいかなと思う場面もあるのですが、ご本人は一生懸命に勉強されています。外国人が日本の新人を教える研修に参加しているというのがもう本当にすごいことだな、と私は感心しきりですが、ご本人にとってもハードルが高いんじゃないかなとも思うのですが。参加してもらう工夫などがありましたら、ぜひ聞かせていただきたいです。

外国人スタッフも学会発表へ。あえて「容赦なく」接する教育

中村 そうですね。実はドゥイさんは新人教育にも入ってもらい、その上、ITリテラシー研修なども一緒にしてもらいました。そういったところは彼女自身にとっても日本語の勉強になると思いますし、周りに溶け込むためにもいいかなというところで、今度はプリセプター研修にも入っていただこうとなりました。そちらのほうが業務だけをするよりも彼女のステップアップになるだろうと思い、積極的に他の研修も受けてもらおうと思っています。 ドゥイさんもメギ君も学会発表を体験済みなんですね。二人とも全日本病院学会(全日病)で日本語発表をしました。すごく緊張したのでしょうけれども、その経験は貴重で変えがたく、彼らにとってステップアップになるものだったと思っています。二人とも私が「いいから発表しよう」と言って、半ば強引に発表してもらいました。全日病などに行っても「海外の方をどう教育するか」などの発表はありますが、外国人本人たちが発表していることはないので、すごくびっくりされていました。

奥山 外国人のスタッフが日本語で学会発表!さすがです。先生の病院はもう何歩も先を行っていらしてびっくりです。先生の病院では、就職後3年目、4年目などで学会発表をされるのでしたよね。

中村 そうですね。4年目くらいが当初理想でしたが、なかなかそのレベルに到達できない人もいるので、目安として4年から5年みたいな感じにしていましたが、コロナでさらに遅くなっていて、7年目でもまだ発表していない人がいます。ですから「義務ではないですよ」という形に今はしています。

奥山 成長の段階として学会発表がある。少しチャレンジングなステップにもなっているところがまた、すごく素敵だなと思います。成長のステージの準備もさることながら、先生のところでは研修旅行なども充実されていますよね。就職して1年目の時に新人が全員参加する湯布院の研修はまだあるのでしょうか。

中村 コロナになった年からやっていなくて、昨年もしませんでした。このままなくなってしまうかもしれませんね。

奥山 今実施するとしたら、ドゥイさんなども一緒に宿泊を伴って行うということですよね。

中村 ドゥイさんは新人の時、湯布院研修に参加しています。そういうものがまた再開されるのであれば、ドゥイさんもついていくというのはあるかもしれないです。

奥山 外国人だからということではなくて、日本の文化に触れてもらって日本語の練習にもなるしということで、あえて参加してもらっているというところでしょうか。

中村 外国の方はドゥイさん以外にも今3人の介護スタッフがおり、全員で5人いますが、面白いなと思うのは、日本人スタッフが容赦なく「北九州弁丸出し」で話しかけるのです。普通は「これは難しい言葉かな」と思い、標準語などで丁寧に話しかけたりするじゃないですか。だから遠慮せず接することで、彼らの語学的なスキルが上がることにつながっているのではないかなと感じます。「腫れ物に触る」ではないですけれど、すごく大切に大切にという感じではない環境が、むしろいいのではないかと思っています。

院長自らインドネシア語を学習。文化を尊重し環境を整える

奥山 一方で、先生も語学を勉強されたりしていますよね。

中村 インドネシア語技能検定(E級)を取得したのですけれども、彼ら彼女らと挨拶したり簡単な単語を言ったりする上で、せっかくなら勉強しようと思いました。E級でも結構難しかったです。 今後、介護施設を建てるという計画がある中、おそらく日本人のみでは介護福祉士が十分に揃えられないということも想定されますので、インドネシアの子たちが来ます。外国人人材はどこに行ってもいいわけですから、本当に日本全国が競争相手になるわけじゃないですか?そうなるとすれば、「インドネシア語がそこそこ話せる院長がいるよ」となれば、もしかしたら東京や名古屋、大阪の施設にも勝てることにならないかなと思い、ある程度ペラペラに近いコミュニケーションがインドネシア語でとれるというところまで練習していこうと思っています。

奥山 先生、やっぱりさすがです。他にも外国人の方を採用したことで、例えばお祈りや断食などの習慣の継続のための環境づくりについてなど、気をつけていることを教えていただけますでしょうか。

中村 イスラム教の場合は、お祈りでも時間が決まってますし、絶対的なところがあります。私も文化や宗教というのは大事にしていますから、お祈りの部屋を用意しています。ただ本当に、それほど広い部屋である必要はなくて、スタッフの宿直室でも構わないというので、うちではお昼に使っていない宿直室でお祈りしてもらうようにしています。 ラマダンに関しては、彼らはずっと絶食を続けているので、そんなに苦にはならないと言います。ちょうど学会出張がラマダンの時に重なったということがありましたが、本当に日が暮れるまでは飲食しないということをしていました。「いつもやっていることだから全然平気ですよ」という感じで、あまり心配する必要はないのかなと感じました。

奥山 イスラムの方々はハラル料理を召し上がったりしますよね。何を食べてはいけないとか制限が厳しいというイメージがあります。

中村 ハラル料理に関しては、シンプルにイスラム教はお酒と豚がダメというぐらいですね。ただ、豚を利用した調味料などもダメだったりするので、一緒にご飯を食べに行く時にはそういったところもケアするようにしています。ですから一番わかりやすいのは、目の前で調理できる焼肉や鉄板焼きなどで、一緒に行く時に焼肉だったら「豚だけ入れないでくださいね」とお店の方にお願いしています。お肉自体は大好きなので喜んでくれます。

奥山 外国人の方が入ってくることで、我々も多様性を磨かれるということがありますよね。

中村 はい。よかったのは、海外で母国語以外で仕事をする方は大変優秀ですので、そういう方と直に接しながら一緒に仕事ができるというのは、もともと働いているスタッフにとってもすごく刺激になると思います。ですからメギ君には感染対策委員になってもらったりもしてますし、ドゥイさんには採用のチームに入ってもらったりしています。そのような通常業務以外のことも一緒にやってもらうようにして、それがみんなにも刺激になると思っています。

さて、ここまでのお話で、小倉第一病院がいかに「人」を大切にされているかが伝わってきましたが、実はその裏側には、経営者として極めて合理的かつ大胆な戦略がありました。

続く後編では、20年間もの間、看護師の人材紹介会社を一切使わずに済んでいるという採用コストの秘密、そして、その経費をいかに教育や福利厚生に充てているのかについて伺います。「4年目のハワイ研修」や、離職率を激減させた「配属の妙案」など、さらに具体的な小倉第一病院の戦略について、深く切り込んでいきます。

→後編へ続く:紹介料は「教育」へ。20年間人材紹介を使わない理由と「4年目のハワイ」の秘密

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