実習指導で役立つ!いまどきの看護学生のモチベーションup(前編)
目次
良いストロークを発信しよう
モチベーションが下がるのはどんな時?
まず,皆さんに質問です。
「相手のどんなかかわり方が皆さんのモチベーション(やる気)を下げていますか?」
それは,頭ごなしの否定や,逐一指示されるようなかかわり方でしょうか。
それとも,会話中のため息や,見下しているような表情や態度でしょうか。
人それぞれにモチベーションが下がる要因はさまざまだと思います。
しかし,何らかの分類はできないのでしょうか。学生アンケートの結果から考察してみましょう。
ストロークの種類
皆さんはストロークという考え方をご存じでしょうか。
下記のアンケートの回答は,その視点から分類することができます。
Q. 指導者のどんなかかわりや声かけでモチベーションが下がりましたか?
・冷たい表情,態度,無表情,無言,目線が合わない……15名
・あいさつしても 返してくれない時…………11名
・無視…………9名
・きつい言葉…8名
・ため息………4名
アンケート協力:板橋中央看護専門学校(東京都)第2学科26期生73名,回収率90%
「ストローク」とは,相手に対しての刺激のことです。
心の栄養素とも呼ばれ,人と人との交流には欠かせないものです。
E・バーン(E・バーン:交流分析(TA)を開発した医学博士)やそのほかの交流分析家によれば,
人は「ストローク」を得るために生きていると言っても過言ではなく,飢餓は犯罪や事件を引き起こす誘因とされています。
ストロークには,肯定的なもの,否定的なものがあり,それぞれ身体的か,精神的か,
相手に対して条件があるか,ないかに分かれます。(表:ストロークの種類)
身体的か精神的かは相手に触れているか,いないかの違いであるため,
ここでは説明のみとし詳しい事例は省略させていただきます。
自信を与え,モチベーションを引き起こすストローク
表の1),2),3)は,肯定的・無条件のストロークです。
これは人の存在そのものを受け入れるため,相手を最高に勇気付けます。
その後も自発的なモチベーションを引き起こす原動力となる非常にパワフルなストロークです。
いわゆる親が子どもを全面的に受け入れている時のような安心感を相手に与えます。
学生が自信をなくしている時や,意図せず相手のモチベーションを下げてしまった時などに,
このストロークを多くすることで信頼関係を取り戻すこともできます。
よく,「下の世話までさせて……」と恐縮する患者に対して,
学生が「○○さんのお世話をさせてもらうことが,私にとっての勉強なんです」と返答することがあります。
この言葉がけなどもこの種類のストロークと言え,患者の存在価値を高めます。
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ほめ方・叱り方 ⑥ やる気を引き出すほめ方のテクニック
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相手を慢心させない褒めるストローク
学生アンケート結果の
「指導者のどんなかかわりや声かけでモチベーションが上がりましたか?」の回答で多かったものは,
依然として「褒められた時」でした。
まさしく,肯定的ストロークは「褒める」ことに相当し,
前述した無条件なものならかなりの自信を相手に与えることができます。
しかし,褒められることは快感を伴うため,褒められたいから動くという人も出てきます。
さらに,謙虚でない段階の人をあまり褒め過ぎると,相手の我(慢心の心)を助長させて,
逆に成長の芽を摘んでしまうこともあります。
実は,「褒めること」には技術が必要なのです。
そこでお勧めしたいのが,表の4),5),6)の肯定的でも条件付きの方法です。
これは,条件の部分だけを褒めるため,相手を慢心させずにその行動だけを増やすことができ,
学生指導や人材育成に特に適しています。
その中でも特にお勧めしたいのが,6)のような「もし○○すれば,△△になれる」形のものです。
「もし○○すれば」という言葉に,相手は△△が足りない「現在の状態」よりも未来の可能性を見ることができ,
意欲がわいてきます。
学生はもともと「看護師になりたい!」という目標に向かっている存在です。
看護師という目標を常に意識することで,さらにモチベーションが高まります。
そのため,この言い方を用いて,
「もし,常にここまでアセスメントできれば,優秀な看護師になれますよ!」などと伝えれば,
学生のモチベーションは最高に高まります。
未来のなりたい姿のために今やるべきことを伝えるこの方法を,
フィードバックと区別して,フィードフォワードと言います。
良かれと思いフィードバックをしても,相手の恨みを買ってしまうことは多いものですが,
フィードフォワードなら相手のなりたい未来から発信するため与えやすく,また,快く受け取れます。
すなわち,モチベーションを上げるのコツは,「フィードバックよりもフィードフォワード」です。
行動変容しやすいストローク
では,否定的なものはすべてだめなのでしょうか。
そうではありません。表の7),8),9)は,否定的で条件付きのストロークです。幼い頃を思い出すと,こんなふうに叱られたこともあるのではないでしょうか。要するに「○○したら△△される」形の表現です。
実は,このストロークも人材育成には適しています。
なぜなら,遅刻する学生に「遅刻してはいけません」と伝える方法であり,分かりやすく,相手は具体的に行動を変えやすくなるからです。
分かりやすいといえども中身は否定なので,厳しくも温かい表情や態度で伝える技を身に付けるとよいと思います。
相手の人格を傷付けるストローク
表の10),11),12)とQ4学生アンケートの「あいさつしても返してくれない」の回答は,否定的・無条件ストロークと呼ばれ,相手の人格を傷付けてしまいます。
簡単に言えば,「居場所がない」感じを相手に与えてしまいます。
居場所をなくすのは意外に簡単で,実習初日に学生があいさつをする際,「視線を合わせず,自分の仕事に没頭する」,これだけでできてしまいます。
特に,初対面でこのストロークを発信してしまうと,その後どんなに優しく接しても,なかなか相手と信頼関係が結べません。
それは,初頭効果と言われるものが原因です。
初頭効果とは,最初の印象が強くインプットされてしまうことを言います。
さらに,第一印象が形成されるのには1秒掛からないのに対し,その印象が変わるには何倍もの時間を要するのだそうです。
最初に「感じが悪いな」と思われてしまうと挽回しづらく,学生ならば実習の受け持ち期間が終わってしまいます。
サービス業に従事する方々がこぞって第一印象を良くしようとしているのは,こういうことが背景にあります。
(ストロークに関してもっと詳しく勉強したい場合は,ストロークの傾向を知るテストというものもあります)
私自身も日々,最初の印象をよくしたいものだなと常に思っています。
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【性格分析ファイル(自己成長エゴグラム)】
なぜ、あの学生がかわいく思えないのか? 教員だって人間ですから(笑)
自分と合う学生、合わない学生はいるものです。
学生や他の教員との相性を見るには「オーバーラップエグゴラム」をオススメします。
まずは、50問の質問に答えて、自分自身のエゴグラムを完成させてみましょう。
課題をもって生活すれば、エゴグラムは自由自在に変えることができ、その意味で「自己成長エゴグラム」といいます。
大人しすぎてカンファレンスで発言できない学生、逆に挑戦的な自己主張をしすぎの学生がなぜそうなのか、わかります。
クラス全員のデータを見て、騒がしいクラス、大人しすぎるクラスがなぜできるのかもわかるので、集団分析にも看護研究にもオススメです。
一度ダウンロードすればデータを消して、半永久的に活用できます。
ダウンロードはこちら
*分析の解説を希望される方はこちら
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ストロークの傾向を知る
自分のストロークの傾向を知るには,どのような方法があるでしょうか。
ストロークテストを受けるという方法もありますが,
簡単にでき日々の学生指導にも役立つ,一石二鳥の方法があります。
それは,担当した学生に,自分の指導の振り返りができるようなアンケートに協力してもらうことです。
私は,この方法で自分の言動を振り返ることができ,「こういう場合はこんなふうに伝えよう」など,
具体的な肯定的ストロークのバリエーションが増えました。
その結果,学生の意欲を高めながら実習指導ができるようになり,楽しくなりました。
資料1に,そのアンケートの質問項目を指導者を主語にして紹介します。参考にしていただければ幸いです。
いかがでしょう。
これなら具体的に自分の指導の仕方について振り返ることができます。
とは言うものの,アンケートの結果をダイレクトに知ることは,指導者側が傷付くリスクを負うかもしれません。
そこで,早速アンケートから得られた回答をストローク分析してみます。
「学生のやる気をアップさせた自分の言動は,肯定的・条件付きだったな」と分析できると,
「ああ,こんなことも言ってあげればよかったな」と気づきます。
さらに,「こういう伝え方はどうかな?」というふうに,
事前にストローク分析に照らし合わせてバリエーションを増やしていくこともできます。
たった「一言」で,人のやる気を引き出すことができる魅力的な指導ができたらステキですよね。
指導者には,学生アンケートのやる気がダウンしたかかわりについての回答にがっかりせず,
否定的・条件付きのストロークととらえてほしいと思います。
かかわり方を指摘されているだけで,指導側の人格が否定されているわけではないのです。
そのかかわり方についてはストローク分析で見直し,「
このかかわりは無条件の否定になるのか。よし,なくしていこう!」と前向きに修正していけばよいだけの話なのです。
後編に続く
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