おとなしそうに見えて、実は『自分のことしか考えていない人』とのかかわり方 「セルフコーチング」のおススメPart.2

ワンランクUPポイント

  1. 「あなたの言動に傷ついた」「勝手に私の心を悪く読み取るのはやめて」というフィードバックが重要。
  2. 指導記録をつけておき、実地指導者は数名でかかわるなどして、1人で抱えない。

おとなしそうに見えて自意識過剰な人

自意識過剰な人というと「俺、すごくないですか!」とか「私って、かわいいでしょ」とぐいぐいアピールしてくるような人のことをイメージしなませんか?
もちろん、こういう人は間違いなく、自意識過剰です。実は、おとなしそうに見えたり、優しそうに見えたりするのに、つねに自分のことで頭がいっぱいという人も自意識過剰です。
今回は「おとなしそうに見えるけど自意識過剰なタイプの人」との関わり方と安全な距離の取り方を考えてみます。

現状の自分がどうあれ、「コーチングでは自分自身を認める」ことから始まる

1.自意識過剰なんて到底考えられない

「コーチング」をしているとどうしても出会ってしまうこの自意識過剰なタイプの人。こういうタイプの人は、「自分の気持ちを人に言えない」とか「自分はいつも人のことをばかり気にしてしまう」と思っているので、まさか自分が自意識過剰なのだとは到底、考えられません。

「コーチング」は自分自身の現状と向き合って理想の自分(こうありたい。こんなふうになりたい)とのギャップを埋めていくものなので、「今」の自分を冷静に見つめることができないと前に進めません。「ダイエットして3㎏痩せる!」と言いながら体重計に乗らないのと一緒です。

2.現状を受け止めることが目標への第一歩

例えば、「現在50kg」という現状を受け入れ、(悲しいけれど)3kg体重が減るまで食事と運動に気をつけて体重を測定して……と努力を続けていれば徐々に目標に近づけます。今が自分が何㎏なのかがはっきりしないと、毎日体重計に乗っても、減ってるのか増えてるのかがわからずに努力の成果も確認できません。

そのため、不本意でも現状を受け止めることが目標に向かって歩む第一歩となります。そういう意味でいうと「おとなしそうに見えるけれど自意識過剰なタイプの人」は、その入り口にすら立つことができないのです。

「ああ言われた、こう言われた、こうされた」と自意識が過剰になる

1.大切な決断はすべて「他者主導」

1時間の「コーチング」のセッションの中で、「昔の職場の上司Sさんから、“あなたのその話し方、イラっとする”と言われて、人前で話すと緊張するようになりました」と言う人がいます。
こうした人は放っておくと「ああ言われた、こう言われた、こうされた」という他者から迫害を受けた過去の話ばかりをします。そのままにしておくと1時間そればかりになってしまいます。

コーチングはそもそも未来に「こうなりたい」「こうしたい」ということを話す分野ですから、「そういうご経験から“人の話をちゃんと聞けるコーチになりたい”と思ったんですね。いつまでにコーチ取得しましょうか?」と目標を明確化しようと試みます。
しかし、多くの場合、「実は、同僚のIさんから嫌われていて、嫌がらせを受けているので、コーチトレーニングの休みがとれるかどうかわからないんです」となり、大切な決断も「他者(Iさん)主導」になってしまうのです。

2.自分の現状に向き合えない人

「有給休暇を取るとか、休みをコントロールするのはご自分で可能ではないでしょうか?」と言っても、「でもIさんが……。私ってダメですね、いつもこんなふうに人のことばかり考えてしまうんです」となります。

「昔の上司のSさん、同僚のIさんのことを考えているのは間違いないんですけど、Sさん、Iさんの存在を通して「自分のことに過剰に意識が向いてる状態」(自意識過剰)だと思いますよ」と、フィードバックしても「私が自分のことを考えているっていうんですか!?」と、多くの人は自分の現状に向き合えません。なので、目標に向かって進むこともできない、となるのです。

「人の心を悪いほうに勝手に読みとる」クセに対して根拠を確認する

1.「人の心を読める」は勘違い

こうした自意識過剰の人に「同僚のIさんがあなたを嫌っているというのは、どんなことでわかりますか?」と聞くと、たいていはまともに答えられません。人の心は読めません。読めると勘違いしているだけだからです。★1

こうした人のセッションをしていると、コーチングの最中に「先生は今、私にドン引きしてますよね」などと、こちらの心を読んだかのように言ってくることがあります。こんなときには、「私が今、〇〇さんにドン引きしてるって考えた根拠を教えてもらえますか?」と質問するようにします。すると、相手は「表情を見てればわかるんです」などと言ってきますから、「ドン引きなんてするわけないですよ」と、否定するようにします(否定的な言葉の否定)。

そして、「私がそんなふうに〇〇さんを見ているって勝手に悪いように思われて、すごくショックで悲しい」と感情を伝えます。
「自分はおとなしい」「自分は人のことばかり考えている」(ホントは自分のことばかり考えている自意識過剰な人なのですが……)と思っている人は、「自分の言動が人を傷つけることがある」とは思っていないので、こちらの「あなたの言動に傷ついた」「勝手に私の心を悪く読み取るのはやめて」というフィードバックが重要です。
こう伝えることは、「おとなしそうな自意識過剰な人」と適切な距離をとることにつながります。

2.人の心を読む“成功体験”がもとに

こうした人が「人の心を読む」(再び言いますが、読めると勘違いしているのです)のをやめづらいのは、これまで「人の心を先回りして読んで、うまくいった成功体験がある」からです。私たち看護師は「患者さんの気持ちを考えよう」と教育されてきていることもあり、「人の気持ちを先回りして読む」ことが「よいことだ」という認識があるとも思います。

波乱万丈な人生経験や武勇伝を話し出したら話題を変える

今まで、私の出会った自意識過剰な人は、そんなに親しい間柄でもないのに「壮絶な過去を自己開示してくる」という特徴がありました。数回しか会っていない人に、自分が補導された経験や親が自殺したこと、壮絶ないじめにあっていたことなど、過去をベラベラと話してしまうのです。それは「“自己開示病”という病気があるのではないか?」と思ってしまうほどでした。ふり返ると、そうした話をしているときの彼ら、彼女らの表情は不自然だったなと思います。

親が亡くなった話をしているのに、うっすらと笑っていたり、人を殴って補導された話をしているときや壮絶ないじめにあっていた話をしているとき、なにか演技的な感じがしました。今思えば、自分に注目を集めることができる、それらの波乱万丈な話は、それこそ彼ら、彼女らの自意識を満足させていたのかもしれません。

指導記録をつけておき、1人で抱えない

「ああ言われた、こう言われた、こうされた」という表現を多用する人は、「自分を苦しめるさまざまなことは、いつも自分の外側にあり、自分は何も悪くない。むしろ被害者だ」と思っているので、かかわらないほうが無難です。
でも、そうした人がスタッフともなるとかかわらないわけにもいきません。仕事を教えるなどでかかわらざるを得ない場合は、しっかりと「指導記録」をつけるようにします。★2

また、指導に使う書籍や参考文献もしっかりと記録に残すようにしましょう。
「〇〇先輩からこう教わったから」
「〇〇さんが仕事をちゃんと教えてくれなかったから」
と、おとなしい自意識過剰な人に責任転嫁されないようにしておきましょう。
そして、実地指導者は数名でかかわる、アソシエイト役のスタッフに指導経過を共有するなどして1人で抱え込まないようにすることも大切です。

 

★1 オススメは奥山美奈著医療者のための共育コーチング 心を動かしチームを動かす』(日本看護協会出版会)

★2 オススメは奥山美奈著医療者のための新人共育ノート(日本看護協会出版会)

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