部下からのパワハラ【1】「注意したいけど言えない」から脱却しよう!
※看護 2019年10月号 (Vol.71, No.12)日本看護協会出版会に掲載されたものです。
いよいよ来年度からパワハラ規制法が施行されます。これまでは現場のガマンでなんとかまかり通っていたこともこれからはそういう訳にはいきません。
ここではいち早くパワハラに気づいて対策を取り、より働きやすい組織を作るお手伝いができるように情報をお伝えします。
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目次
部下からのハラスメント
Q1 返事をしない、無視をする、仕事を依頼するとあからさまに嫌な顔して指示した仕事をしない部下が数名います。
A,Bは関係が非常によく二人でいるとニコニコやりとりしていますが、
他の後輩スタッフの申し送り時にも嫌そうな顔で聞き、
「患者さん、洗髪を希望しています。できたらお願いします」と送ってもほとんどやってくれません。
一応、今年度から私が管理職になったので、どうしてケアをやってくれないのかをと聞くと、
「できそうな時間、なかったのでしませんでした」とか「今の状態で洗髪は必要性を感じなかったので」と返ってきます。
もっとビシッと注意しないといけないのかとも思いますが、言った後、もっとこうした態度がひどくなるかと思うと、
なかなか言うことができなくています。最近のA,Bは、新人や他の後輩スタッフにいろんな事を吹き込み、
その人達も仲間に引き入れようとしてるようです。
最近は他のスタッフの中にもA,Bと同じように返事をしなかったり、
仕事を頼むと「できそうになかったのでしませんでした」という人が多くなって困っています。
Ans「それって部下から上司へのハラスメントです。適切な対応をしましょう」
教育コンサルタントとしていろんな病院へお邪魔しているとよく、上記のように
「返事をしない、無視する、仕事を依頼するとあからさまに嫌な顔して指示した仕事をしない部下に困っている」
といったことを相談されます。
聞くとこういう人々は現場マネジャーにはこうした態度を取りますが、
経営層や患者さんには高感度の高い接し方をするので、投書などにも名前が載ってこない。
なので更に、指導しにくいのだといいます。
皆さんは、どんな対応をしていらっしゃるでしょうか。
パワーハラスメントには6つの行為による類型がありますが、このパターンは「人間関係の切り離し」型のパワハラにあたります。
「無視や仲間外し」などはこの型に当てはまります。
ハラスメントというと上司から部下へのものと思いがちですが、
実際には「部下から上司へのパワハラ」もたくさん起こっているのです。
パワハラの定義を再確認してみましょう。
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職場のパワーハラスメントの定義
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
定義によると、職場の優位性を背景にしているとあります。
上記の相談者は最近昇格し、この部署に配属された管理職で、このA,Bさんよりも歳下です。
また、職歴もこの部署での経験もA,Bさんより浅いという現状です。
この場合、どちらが今の職場内で優位性があるかと言えば、A,Bさんらです。
長くこの病棟で働いていて歳も上のA,Bさんらが職場では圧倒的に有利なのです。
A,Bさんらは相談者や他のスタッフが仕事を依頼しにくい環境を作っているので、「職場環境を悪化」させています。
また、この相談者や他のスタッフを悩ませ、「精神的な苦痛」を与えているのですから、これは「パワハラ」にあたります。
これまでなら「こういうスタッフいるよね」で通ったでしょうが、
規制法施行後のこれからは、こうしたことは通らなくなっていきます。また、何より患者さんの「洗髪したい」という要求をないがしろにしてしまっては、
看護の質低下から患者減少につながり、経営悪化を引き起こす可能性もあります。
パワハラの放置はサービスの低下から経営の悪化を呼び込むので、こうしたA,Bさんらの仕事に対する態度は、
この部署の管理職個人のマネジメントの範疇に留めず、組織的に改善を要求するといった毅然とした姿勢と仕組みの構築が必要となってきます。
本当に機能する「ハラスメント相談窓口の設置」や「定期的な講義による啓発」とハラスメントを起こせないよう「人事評価制度」の中にハラスメント行動を規制する評価項目を入れるなどがそれです。
なぜ、A,Bさんらは強くでてくる?
管理職はときに毅然とした態度とパワハラについての豊富な知識を得ることが自分と周囲を救う
管理職になったばかりの方々の中には、
「私なんてまだまだなのに管理職だなんて、、、」という遠慮が残っている人もいたりします。
私個人としては、管理職になったばかりで偉ぶるような人よりも、この相談者のような謙虚な方に好感を持ちますが、
あまりにも謙虚すぎるとA,Bのようなスタッフを引き寄せてしまうようにも思います。
管理職に昇格して2ヶ月目くらいにはもうしっかりと役割を受け止め、順応する必要があると思います。
私は、新管理職のトレーニングや研修などをすることが多いのですが、
「権威に順応しすぎて威圧的になる方」と「度が過ぎる謙虚さで役割に徹することができない方」と「柔軟性を持って役割に順応する方」とがいると感じてきました。
パワハラ規制法がばっちりと施行されると、「柔軟性を持って役割に順応する方」以外はパワハラに悩まされることになるかもしれません。
「権威に順応しすぎて威圧的になる方」 → 自分がパワハラ 類型2
「度が過ぎる謙虚さで役割に徹することができない方」→ パワハラを呼ぶ 類型3
「柔軟性を持って役割に順応する方」 → パワハラに悩まない
と、こんな感じでしょうか。
いずれにしても、まずはハラスメントに関しての知識を得ること、スタッフへの周知と啓発が大切です。
「この言動がハラスメントになるなんて知らなかった」ということがないように知識を普及していくことがまずは、抑制につながります。そしてこの相談者のように「パワハラを呼び込んでしまう」ようなタイプなら、管理職のご自身が変わっていくことが急務です。
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「注意したいけど、なかなか言えない」からの脱却
「パワハラしている方が悪い」
もちろんそうです。それに違いありません。
そして、パワハラしている方は来年からはパワハラ規制法違反、つまり罪になるのです。
ここでは注意したいけど言えないという相談者の改善点についてお話します。
「注意したいけどなかなか言えない」という葛藤は、私が資格認定しているコーチングでは
「二重の輪のコーチング」というもので解決します。
そうなんです、言いたいけど言えないは変えることができるんです。
そこでは「注意することを止めているものは何か」を明らかにし、注意ができるようコーチングしますが、
「止めているもの」は、注意するともっとA,Bがもっと反発してきたり、
ますます「仕事を依頼できない」状況が悪化するんじゃないかという恐れだったりします。
相談者の方が、今のように迫力がなくオドオドした感じで注意したなら、やはり、そうなってしまう可能性は高いでしょう。
まずは、相談者さんは、Qのセリフの「一応、私は管理職」という表現の「一応」という言葉の使用を止めましょう。
「ケアをお願いする」「お願い」も「できれば~してもらえますか?」という依頼系の言葉も使わないようにします。
「ケアをお願いする」は「ケアを引き継ぐ」に、「できれば~してもらえますか?」は「洗髪実施で。」
という具合に明確な指示にします。
謙虚なあり方は言葉にも現れます。
「~してもらえますか?」という依頼形の言葉は患者さんに発するには相手の意思を尊重する素敵な言葉です。
でも、上司と部下の関係といった場合、「できれば~してください」という表現は解釈の仕方によって
「できなければしなくてもいい」というあいまいな指示となってしまいがちです。
「○○さんが希望しているので、洗髪を実施するように」という明確な指示ならこうしたスキを与えませんし、上司の指示には従わないわけにはいかなくなります。
もし、従わなければ「従うように」と面談して言えばいいのです。
すると洗髪希望の患者さんの受け持ちスタッフが「Aさん洗髪、してくれたんですね、ありがとうございます」と、Aさんに感謝し、病棟の雰囲気をよくすることにつながります。
自分自身の気持ちをごまかさない(合理化しない)
また、依頼形の指示が多い理由のひとつに「自分に自信がない」という根本原因が隠されていたりするものです。
「注意したいけどなかなか言えない」という管理職の方々はたくさんいらっしゃいます。
もちろん、そう悩む方というのは、相手を傷つけたくないという気持ちが強いとても優しい方です。
これからは、注意しようかどうしようかで迷った時、ちょっとだけ
「今、相手のことと自分のことのどちらをより考えているかな」と、自問自答してみてください。
「言うことで嫌われたくない」「もっと無視されると怖い」と自分を思う気持ちの方が勝っているなら、
今の時点では、相手ではなく自分が傷つきたくないという方向にベクトルがあっているのかもしれません。
そうした時は、そのことを素直に認めてください。
間違っても「相手が傷つくといけないから言えない」と思ったり、言ったりしないで欲しいのです。
自分を守る気持ちが強い状態で「相手のことを思って言えない」と言ってしまうと、
それを聞いた人々は合理化(気持ちをごまかしている)していることに気づきます。
人は自己保身からでた言行不一致にはとても敏感だからです。
「言って嫌われたくない」と自分を思う気持ちが強いことを認めることができた時は、
ビシッと言ってあげることで、A,Bはあなた怖さに
「仕事の依頼をないがしろにしたり、無視したりができなくなるかもしれない」
つまり、「パワハラをしないでいられるかもしれない」「Aさん洗髪やってくれてありがとう」
と言われる機会を与えることができるかもしれないと、こんなふうに考えてみましょう。
A,Bは、あなたのことは少し煙たく思うかもしれませんが、悪い行動を取らずにすみます。パワハラをしなくてすむのです。
こうしたのが、自分のことよりも相手のことを考えた言動というのです。自分のことより相手をよくすることを考え優先する、つまり「没我」(無私私欲で物事に熱中すること。この場合はA,Bの指導)
「管理職なんだし、嫌われたっていいや」とある意味、開き直りも必要なのです。
皆さんだって全ての管理職を尊敬してるわけでもないし、好きなわけでもないしょう。また、嫌いな人が一人もいないというわけじゃないと思います。
人は意外と簡単に人を嫌いになりますが、たった一人の人から嫌われるのも、とても気になる生き物なのです。
相手のことを考えて言ってあげたのに嫌われたという時は、「ま、管理職だし仕方ないか」と、さらっと流しましょう。権威をもつという立場とは、ある意味人から恐れられるものなのですから。好かれようとばかり考えてしまうとスタッフに迎合することにもなりかねません。
「A,Bさんだって変わることができるかもしれない、人の可能性にかけてみよう」と、こんなふうに考えてビシッとしましょう。
そして人は、こんな管理職にリーダーシップを感じるのものです。なぜなら他者への「愛」を感じるから。
職場は仲良しグループでなくていいのです。思いやりあふれるスタッフも、ちょっとやんちゃなスタッフも、ちょっとイジワルなスタッフだっているものです。相談者のあなたが、耳に痛いこともビシッと言うというあり方、役割をしっかりとることで、A,Bのよいところを引き出すことができ、それをよいマネジメントと呼ぶのです。しっかりA,Bの悪い部分はしっかり注意し、罪を犯させずに導く。長所進展短所是正です。それができる立場が管理職なのです。「注意したいけどなかなかできない」と思う時、それは、スタッフに対する「愛」の不足ではないのか?と自問自答してみましょう。積極的に人から嫌われたいと思う人はいないものです。あなた自身もまったく叱られずに来たわけではないと思います。それは、その人があなたから嫌われるかもしれないリスクを負いながらも、あなたの成長のために一歩踏み出してくれた「愛情」の証拠で歴史でもあります。
その人があなたの成長より自分が嫌われることを恐れたら今のあなたはいないのです。このことも忘れてはいけません。
リーダーシップに恋をするという言葉があります。しっかりとマネジメントをし、リーダーシップを発揮するあなたの「愛の深さ」に部下は恋をし、リスペクトするものなのです。頑張りましょう。
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