成果を上げるチームになるために 「チームコーチング」のおススメPart.2

ワンランクUPポイント

  1. 「チャレンジ」がチームをつくる。そして、その成果を共に喜び合うことで成長する。
  2. 「チャレンジ」することに二の足を踏んでいると、「チャンス」は逃げていく。

 

今回は東京都立川市にある「ケアセブン訪問看護リハビリステーション」(以下:ケアセブン)がチームコーチングでどんな成果を上げることができたのかをご紹介します。

「一緒に働く仲間をもっと増やしたい」
「風通しがよく、多職種が一丸となって目標に向かえるチームになりたい!」

所長の山田怜子さんとスタッフの熱い思いから始まったチームコーチング。筆者が支援させていただいてから9カ月ほどたった今、この間に挑戦したことは何か、そして、所長やメンバーのこの思いはいったいどのくらい叶ったのかをふり返ってみたいと思います。
「燃えるチームをつくりたい!」と思っていらっしゃるリーダーの皆さまの参考になれば幸いです。

「訪問看護eラーニング」教材の作成が「チームで一丸となる」きっかけに

私がかかわらせていただいたケアセブンチームは、当初「多職種との連携がなかなかうまくいかない」ということで悩んでいらっしゃいました。

訪問看護ステーションには看護師が起業し、社長も管理者も看護師というところもあれば、そもそも別の事業を営んでいる企業が出資してステーションを経営する異業種参入のところもあります。
ケアセブンは後者(異業種参入)で、建築業を営む会社が福祉事業部として立ち上げたステーション。いわゆる本当の意味での多職種=異業種の職員が100人ほどいる事業体です。当初は、建築の立場と看護の立場とが理解し合うのはなかなか難しいという状態でした。

「嘆いていても何も始まらないよ。まずは、やろう!」という山田所長の号令の下、さまざまな課題を抱えながらもケアセブンチームは取り組みはじめました。
まずは、会社が望む「利益率の向上」と「採用経費の削減」の取り組みを始めました。利益を上げ、そこから自分たちの要望も認めてもらう――チームメンバーはそんなふうに考え方をシフトさせたのです。

ケアセブンチーム

利益率の向上と採用経費の削減の具体的な方法は、訪問看護ステーション向けの教材をつくるということへの「チャレンジ」でした。私はS-QUE研究会(次世代病院管理のあり方に関する研究会)の訪問看護研修にかかわっており、訪問看護eラーニングの教材を総合監修させてもらっているので、山田所長に「チームで一丸となるきっかけとして、S-QUEのeラーニング教材の動画を撮影してみてはどうですか?」と打診してみました。すると、ふたつ返事でOKが返ってきました。

自分たちの看護の動画で勉強をしてもらうことはもちろん誇らしいことですが、なんと言ってもこうした取り組みは事業所のPRになります。訪問看護ステーションで働く人々が見る学習教材の制作に協力することが、ゆくゆくは「ケアセブンで看護がやりたい」となり、スタッフ採用につながるかもしれないし、「ケアセブンの訪問看護に頼もう」と利用者さんの紹介につながるかもしれません。

そんな未来を見つめ、ケアセブンチームは動画制作への協力を最速で決断しました。今では1年を通じてすべての訪問看護師が撮影に協力しています。こうした撮影を依頼しても、「でも、スタッフの個人情報が……」「利用者さんの同意書が……」と悩んでしまい、即決できる事業所はほとんどありません。「事業所のPRをしていこう」「同じ思いで働く仲間を増やそう」とチームがまとまっているからこそ、新しい取り組みにチャレンジができるのです。

以下は、同行訪問看護のバーチャル体験ができる動画「ひとりでできるもん!」シリーズの第4回です。

https://www.youtube.com/watch?v=-IKaojENl_w

実際にケアセブンの訪問看護師が登場します。アットホームで笑顔の絶えないケアセブン流の看護の様子が伝わってきます。

「幸運の女神には前髪しかない!」

チームになっていくには「共有空間」「共有時間」、そして「共有体験」が必要です。

「共有空間」「共有時間」、そして「共有体験」

特に「共有体験」があるからこそ対話も交流も増えていきます。動画制作はケアセブンのめざす「看護」が提供できているかどうかの検証の機会にもなり、チームの成長をも可能にしました。ただ「待って」いてもチームになれるのではないし、不平や不満や課題も「待って」いるだけでは解決しません。チームとは「積極的になっていく」ものだからです。

ちなみに2022年秋、「ケアセブンチーム」の利益率は3.5倍になりました! 山田所長はスタッフの給料アップについて、堂々と社長に交渉していくそうです(笑)。何かにチャレンジしようとするとき、「今、いろいろあるので、落ち着いてから……」と言う人が多くいますが「能動的に動くからこそ、いろいろなことが解決する」こともあるのです。

「公の場に出ることで私たちの訪問看護技術にクレームを言われたら……」なんて考えて二の足を踏んでいるとチャンスは逃げていってしまいます。「幸運の女神には前髪しかない」「チャンスの女神には後ろ髪がない」とはよく言ったものですね。

「潜在看護師復職支援セミナー」への参加

ケアセブンのスタッフ・井尾さんは、ご自身も訪問看護の経験なしでケアセブンに就職し、「手取り足取りで育ててもらった」と話します。「感謝の思いをケアセブンの仲間に伝えたい」という気持ちと「潜在看護師となって不安を抱えている人の力になりたい」という思いから、井尾さんは私が講師を務める東京都ナースプラザ主催「潜在看護師復職支援セミナー」に、休日返上でボランティア参加してくれました。

井尾さんは、自分の職場への感謝の気持ちと訪問看護への思い、そして自らの経験を熱く語ってくれました。セミナー終了後のアンケートには、
「訪問看護はハードルが高いと思っていたけど井尾さんの経験談を聴いて挑戦してみようと思った」
「家族みたいな仲間とチームで働けるのがうらやましい。私も早くいい職場に出会いたい」
といった感想があり、多くの人に希望を届けることができたようです。

チームは「共通の理念と価値観」で動く

新型コロナウイルス感染症の影響で、訪問看護ではスタッフが直行直帰となることも多く、「お互いのコミュニケーションが取れない時代」と言われるようになりました。でも、チームは「相手の体がそこにある」ということを重要視はしません。

今は必要ならZoomですぐにつながることもできるし、なんと言ってもチームは「共通の理念と価値観」で強く結ばれています。ケアセブンチームの共通のキャッチフレーズは「くらしに安心と笑顔を」です。それぞれのメンバーがこの言葉を胸に、家族のような温かい看護を今日も提供しています。

zoomで繋がる

1人での判断を余儀なくされることの多い訪問看護の世界だからこそ、チームの価値観を共有することがキーポイントとなります。
判断に困ったとき、理念をもとに「みんなだったらどうするかな?」と考え、行動する。
「チャレンジ」がチームをつくる。
そして、その成果をともに喜び合う。
あらためて「チーム」とは個人の力を何倍も引き上げることのできるすばらしいものだと思います。

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