PDCAを回す

PDCAを回す

ワンランクUPポイント

  1. PDCAサイクルもコスト意識も新人研修に取り入れる。
  2. 新人のうちは日報をPDCAのフォームで書かせ、フィードバックの機会を設けよう。
  3. フィードバックしてくれる人々がいるうちに「仕事の精度」を上げていくのがもっともシンプルで近道。

PDCAサイクルもコスト意識も新人時代から

「PDCAサイクル」という言葉は皆さんもきっとどこかで聞いたことがあると思います。
病院や介護施設などでは管理者研修等で学習することが多いかもしれませんが、私は病院の新人看護職員研修から「PDCAを回す」という内容を入れています。

新人にとっては少し難しいかもしれませんが、仕事の質を上げるには、このPDCAサイクルを教えるのが最適なので3年前くらいから入れるようにしました。
そして得られたのは、「新人のうちからしっかりと学ぶことで早々とPDCAを回すことができるようになる」という結論です。
コスト意識についても新人看護職員研修の内容に入れていますが、これに関してもやはり早期に教えることで育てることが可能だというのが私の持論です。

PDCAのPとはプラン、つまり計画のことです。プランニングは仕事時間の約半分をかけるつもりで行うことが重要です。プランニングがすべてといっても過言ではないほど大切です。

医療職として働くと朝、病棟でちょっとした朝礼かミーティングをして、すぐに「現場」というところが多いかもしれません。でもそれでは効果的にリフレクションができません。我々は看護学生ではありませんが、今日1日の「計画」を発表し、具体的な業務をDo(実行)してふり返るということが仕事の質を上げることにつながります。
短時間でもよいので、まず、この業務に何分かけるか、初めての処置は何分かかるかという「見込み時間」と簡単なやり方を考えてから実行する習慣をつけましょう。

PDCAサイクル&日報とは

私の会社では新卒であろうが管理職であろうがすべての人に新人時代は「PDCAサイクル&日報」 を書いてもらいます。それで1日の終わりに仕事の質についてリフレクションをしています。

手書きの用紙かGoogleフォーム(Googleのサービスの一つとして提供されているWeb上で用途に合わせたフォームを作成することができるツール)を使いますが、修正しやすいのはGoogleフォームで、見やすいのは紙ベースです。
また、Googleフォームの場合は、フィードバック後、すぐに修正できるのが便利ですが、最初に入力した時間などの記述を残すようにしておかないと、指導の経過が新しい入力によって流れて行ってしまいますので、意識して残すようにしたほうがよいと思います。

テレワーク等で離れたところで働いているときなどはPDCAを意識した日報を書かせることは、業務報告を兼ねることができます。実際の例をいくつかご覧ください。

業務日報
(図表1)

図表1はスタンダードな日報。こうしたスタイルの日報を活用している組織も多いと思いますが、これだと経時記録になりがちで、どのくらいの時間をこの業務に費やし、どのようにやっていくかの計画を書けないことが多いので、私の会社の新人は図表2のようなものを活用しています。

PDCAサイクル&日報
(図表2)

これだと、自分の時間の値踏みが妥当だったのかどうかがすぐにわかります。プランニングに自信がなければ、実行の前に指導者に相談するとよいと思います。「この仕事にこんなに時間はかからないでしょ」「このやり方でなくて直接電話して確認して5分でやって」など自分自身より仕事の精度が高い人からのアドバイスをもらってから仕事にかかるほうが効率的だからです。

★PDCAサイクル&日報の用紙は、「医療者のための新人共育ノート」の巻末付録P162にございます!!

療者のための新人共育ノート 強みを引き出し やる気を高める ー 奥山美奈 (著)


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新人の成長を促すPDCAサイクル&日報

以下は「新規事業の訪問看護にまつわる業務」でPDCAサイクル&日報を実際に使った事例です。
当初、新人スタッフAさんは利用者Bさんの「購入物品片付け、不足品の注文」に2時間という計画を立案してきました。
このAさんは訪問看護が未経験だったので事前にとあるステーションの実習としてBさん宅を訪問させており、その際に私は「物品注文などの業務が発生するので、事前に物品戸棚の写真を撮影させてもらってくるように」と指示をしていました。

にもかかわらず2時間という設定をしてきたので確認すると、やはり写真を撮ってくることを忘れていたのです。調べる時間を含めての2時間という設定だったのです。
結果的に、写真を撮ってきていないことを聞いた私が実習先の施設に電話して、「使っている物品リストのようなものがあればファックスしていただけませんか」と依頼したらすぐに送ってくれ、物品注文には30分しかかかりませんでした。
計画を見て業務を行う前にフィードバックする機会を設けていなければ、写真を撮ることを忘れた事実を隠すために1時間半余計に時間をかけていたのです。

このようなことがあったとき、「こんなに早く物品注文ができてよかった。やはり先輩に相談するって大事だな」と素直に思うパーソナリティの人なら、このあと、ぐんぐん仕事の質はあがります。PDCAを意識して仕事をこなしているとおのずと仕事の精度が上がってくるのです。そのためのツールなのですが……このAさんは喜んでいるようには見えませんでした。

頑張れ! 新人

最初のうちこそ、このように記録をしてふり返りができるようにしていますが、2カ月もすればPDCAサイクルが定着するので、いちいち書き取らなくともよくなってきます(もちろん書いておく人はもっと成長します)。ですが、自分の失敗を隠す人や、仕事を「早くやろう」と思う概念がない人は成長しませんし、仕事の質も上がっていきません。

また、コスト意識が高ければ、「看護師しかできない、または看護師がやった方が効果的な業務」と「看護師免許は必要ない業務」をわけて弊社の事務に仕事を依頼することもできました。この看護スタッフの月給を時給換算すると1800円で、弊社の事務スタッフの時給は1100円。コストのことを考えれば、物品注文リストを事務スタッフに託し、自分はケアマネへの挨拶回りなど、看護師が行ったほうがよい仕事をやるという選択もできたでしょう。

こうした選択がなぜできないか、それは新人が身につけるべき20の行動(図表3)の中の「10.考える」が、身についていないからです。看護師歴20年であろうが、新人であろうが、正しく素直に「考える」ことができれば、仕事の質はあがり、どんどん量をこなせるようになります。PDCAを回すことを意識して日々、リフレクションをしていれば1年で一通りの仕事はこなせるようになります。

「新人が身につけるべき20の行動」
(図表3)新人が身につけるべき20の行動

弊社にも看護師がたくさん入職してきましたが、「この仕事はやったことないんで。初めてなんで」と言い訳をしたり、指示された仕事をやっていないときに「そもそもこれは私の仕事なんですか」と苦情を言ったり(上司から指示された仕事が部下の仕事です)、他者や状況に責任転嫁をするようなあり方の人はすぐに退職していきました。

これらの人々にもPDCAサイクルの研修はしましたし、20の行動も教えていましたが、「自分のこととして聞いていなかった」のだと思います。フレッシュな新人のうちに、素直に自身の課題に気がつき、フィードバックしてくれる人々がいるうちに「仕事の精度」を上げていくのがもっともシンプルで近道だと思います。頑張りましょう!

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