コロナ過時代だからこそ「攻めの新人教育」にチャレンジしよう!

ワンランクUPポイント
1、2021年度新人は「ライセンスを持った実習生」と思って育成。
2、表現力を鍛えるにはセルフコーチングシートに基づいた「攻めの自己紹介」をするのがおすすめ。
3、コロナ過を機に「使えるものはなんでも使う」スタンスで、ぜひ教え方改革を。

コロナ禍で臨地実習に行けなかったり、講義もオンデマンドだったりした2021年度の新人。
これまでとはガラリと違う学び方をしてきた新人には、いったいどんな教育をすればいいのでしょうか。

看護師として歩み始める彼女、彼らにやりがいを感じさせ、専門職業人として定着させるためにはどんなかかわり方が必要なのでしょうか。

実地指導者や教育担当者は、本来ならば実習で習得してくるはずのコミュニケーション能力を育てながら、業務で独り立ちできるまで新人を育成しなければなりません。

私自身、元教員として、1人の人 問の育成に責任を負うのはかなりの重圧だと痛感しています。
でも、その重みと比例して、しっかりと育ったときのやりがいはひとしおです。

2021年度新人は、要はライセンスを持った実習生だと思ってかかわりましょう。「実習でもやってきてないし、できなくて当然」とまっさらな状態に教える気持ちでいけば大丈夫です。

今回はパンデミック下においても、教育に携わる方々が少しでも「人を育てる喜び」を感じてもらえるよう、私が新人研修でやっている具体的な方法をご紹介しようと思います。

新人の表現力を鍛え、やる気も高める「攻めの自己紹介」のやり方

1.研修・指導の進め方

まずは、図表1のセルフコーチングシート(以下:シート)を番号どおりの順番で記入させます。事前課題とする場合は所要1時間が目安です。
図表1
これは私が実際に研修等で活用しているものです。番号順に書くだけで過去と現在がつながり、自己理解を深めながら未来を考えられるように意図して作成してあります。

新人がシートを書きやすいようにモデルを提示しましょう。これは直接関わることが多い指導者が記入したものをモデルにするのがおススメです。

モデルを読み込むことで、はからずとも新人が指導者のルーツを知り親近感を抱くようになるからです。OJTなら主にかかわる実地指導者やプリセプターが書き、集合研修なら主にリードする教育担当者がいいでしょう。(学校でいえば担任のようなものだからです)。

シート⑪「他者からの欠点のリフレーム」とは、研修参加者から自分の欠点を別の見方で伝えてもらい、それを記入していくという項目です。「自分の欠点はこんなふうに捉えることもできるんだ」と、積極的に他者とかかわる大切さを悟らせるように設計しています。

新人は、自分の欠点を人から「気にしなくてもいいんだよ」と言ってもらう機会になるので、研修終了後には「気持ちが軽くなった」「自分は自分でもいいんだと思えた」「頑張れそう」といった感想を述べます。つまりは研修の設計次第で新人の気分をマネジメントすることができるのです。

研修や指導後には、新人のモチベーションが上がったかどうかアンケート調査などで効果測定をすると指導者の励みにもなり、一石二鳥です。

また、シート⑫「指導者より」という項目は、⑪より数段高いレベルの内容にしましょう(笑)。さすが指導者だなと思わせられるよう、あらかじめ準備をしておくのをオススメします。新人が自分の欠点と書いてくるもので多いものは図表2の通り。

これらに関しては「極上のリフレーム」の言葉を準備しておかれるといいと思います。

2.発表+動画撮影で表現力を鍛える

十分な実習を経験していない2021年度新人については、表現力を鍛えるしかありません。最近の新人は発言できないという人もいますが、発言しない理由の多くは準備不足です。私は学生教育にもかかわっていますが、しっかりと話す内容を準備させれば結構、できるものだと実感しています。

シートに記入できれば自己紹介の準備は万全ですので、それを基に発表をさせていきます。

「奥山美奈です。これからセルフコーチングシートに記入した内容を発表します」と名前を名乗らせ、あいさつをし、聴衆の目を見てしっかりと自分の考えが伝わるように話すようにと伝えます。

シートの記入で自分の思考整理はできていますので、研修ではグループにして発表させていきます。実地指導者とのOJTなら指導者に向けて話させます。

発表は表現力を高めるためのプレゼンテーショントレーニングも兼ねていると目的を伝え、動画に撮影しておきましょう。発表は携帯電話で撮影可として、各自で振り返ることができるようにすると効果的です。

発表後に自分の発表を見る時間を作り、(全部ではなく一部)自身の表現力とプレゼンテーション能力を評価させます。図表3は弊社の講師トレーニングで活用しているプレゼンテーション力トレーニングシートです。

ぜひ、これで自己評価とグループでの他者評価をさせてみてください。グループで発表が一番よかった人を選び、表彰するのもいいでしょう。

図表3

3.必要時間の目安 OJTなら必要時間最短5分!

事前課題とする集合研修なら30分で完了します。自己紹介は1人5分。新人40人の場合は、4人ずつ10グループにして4人×5分で20分、残り10分で指導者がまとめます。指導者も同じシートで自己紹介すれば関係も深まります。

「恩師」という存在になれる幸せ

1人の人を育て上げると「恩師」と呼ばれることもあり、その人に一生感謝されます。人間、未熟な自分を育ててくれた人には恩を感じるものなのです。

私が教員になりたての頃、顧問としてテニスを教えている生徒が試合に負けて泣きそうになっていたことがありました。その子はテニスは初心者でした、運動神経はとてもよかったので勝てない自分に苛立っていました。

その生徒に私は「泣くと悔しさが流れる。流さずバネにしたときに勝てる」と言ったことがあったそうです(私は忘れていました)。

その生徒が「先生、この言葉のおかげで勝てました」とお礼を言うのです。ビビッと衝撃が走りました。このとき、私は教育の重みを感じたのと同時に、何百倍ものやりがいを感じました。

2021年度新人は十分な実習の経験をしていませんが、それは「なんのクセもついてない」と言えるかもしれません。

高校テニス部の顧問をして、小中から経験のある生徒にはフォームによくないクセがついていることも多く、それを直すのは難しいと実感しました。それならむしろ経験がない方が伸びます。

コロナ禍はもしかすると教育力の底上げにつながる出来事なのかもしれない。現場で新人教育を行ってきて、そんなふうに私は思っています。

例えば、携帯で新人の看護技術の動画を撮影して振り返ったり、ベテランの手技を撮影させてデモンストレーションとして勉強したり、ICTを駆使してオリジナルな教材をつくったり….。

今の時代だからある便利な道具を駆使して新人を一人前に育て上げてみてください。独り立ちさせることにコミットして「使えるものはなんでも使う」スタンスでいく。

私の友人で看護教育に長く携わっている福島芳子さんは「古典看護学」から「現代看護学」へのスライドが大切と言います。私も同感です。

今こそ、看護教育にイノベーションを起こすときなのかもしれません。担当する皆さんのアイディアで教育はとても楽しい経験になります。

また、「教えることは教わること」なので、うまく伝わらなかったとき、自分自身の伝え方の未熟さに気がついたりします。

つまりは教えることでともに育つ「共育」のゾーンに入れます。教育の楽しさとやりがいを指導的立場の方々に実感していただければと願います。

 

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