結局あなたは「感じのよい人?」「悪い人?」
目次
今の自分は「感じがよいのか、そうでないのか」を知
ちょっとドキッとする今月のタイトルですが、われわれは自分自身の接遇やコミュニケーションをとっている姿を見ることができません。
自分の額を自分の目で見ることができないように、人間には盲点が存在するので、自分自身を見ることは不得意です。
でも、看護師であるわれわれは観察力がみがかれていますよね。そうです、われわれは人を見ることは得意なのです。ここでは、他の人を見るように自分の表情や態度や伝え方などを俯瞰(ふかん)して「結局のところ」を知りましょう。そして「感じがよい人」はさらに感じよく、ちょっといまいちという人は自分の課題を発見し、具体的に改善して「感じのよい人」になっていきましょう。
また、皆さんのなかには院内研修の講師をしている方もいらっしゃることでしょう。そうした方はプレゼンテーション力アップのためにも本内容を活用してくださいね。
「人は見た目が9割」って本当なのか
よく「人は見た目が9割」とも言われますね。「えっ、そうなの?」という方は「人は見た目が9割」と検索するとこの類の本がたくさんヒットしますから、何冊か購入してぜひ読んでみましょう。それらの本には、多くの心理学者などが実験した結果、「やっぱり見た目って大事なのね」というエビデンスがたくさん紹介されています。
学会などでも研究の内容と考察はすごくいいのに、なんだか「さえない発表」ってよくありますよね。それは「見た目」+「伝え方」がイマイチだから、とそんなふうに私は考えています。
私の会社では介護士に講義をしたり、介護福祉士に痰の吸引ができるように教える教員を養成しています。
じつは看護師は7時間の講習を受けると、介護福祉士に対して「痰の吸引をしてもいいですよ」という認定証 を発行することができる、医療的ケア教員にすぐにな れるのです。
ひと口に、教員といっても教え方がじょうずな人もいれば、そうでない人もたくさんいますよね。わかりやすく、しっかりと相手に教えることができるように、 私の会社で育成した教員には講師トレーニングを受講してもらっています。トレーニングでは、「見た目」や 「身だしなみ」から「話し方」や「ジェスチャー」といった伝え方の部分をブラッシュアップ、そしてインパクトのある自己紹介の方法などを習得してもらいます。学会発表の機会が多いという方や認定看護師で院内研修をよくするという方、院内の教育委員会の方などがよくこの講師トレーニングを受講しにいらっしゃいます。
今回はこの講師トレーニングで使用している「プレゼンテーション力アップシート」をご紹介しながら、「感じのよさとは何なのか」を考えていくことにしま しょう(図1)。シートの一番上に出てくるのは、まずはやっぱり「見た目」。初頭効果というのもあるので、特にプレゼンテーションの最初の印象形成は大切です。話し始めたときに「あっ、なんかよさそう」「感じ がいいな」というのは本当に大切なことなのです。
あなたの見た目、姿勢、動作は相手にどう映っているでしょうか
図2の写真の人物はお恥ずかしながら私なのですが、やはり右の写真って「感じがよくない」ですよね。 本当はとってもいい看護をする人なのに……って言っても、それは目には見えません。「思いやり」や「やさしさ」などを取り出して確認することはできません。 なので、人は見える形を重要視してしまうのかもしれません。
プレゼンテーション力アップシート(図1)で 次の項目にくるのは「姿勢」です。姿勢が悪かったり、モジモジと動きながら話したり、ゆらゆらと揺れながら説明したり、よけいなジェスチャーがあったりすると、とても気になります。退院後の生活についてなど、 大事な説明をしてくれている看護師であっても、こうしたクセがあると、患者さんはそこに注意を奪われてしまい集中できず、話が入ってこない……。こんな残 念なことが意外とよくあります。
以前、前髪が長い看護師がクセなのか、何度も前髪を触った手で点滴を刺そうとしたら「汚いから手を洗ってください」と患者さんからクレームをもらった、ということがありました。感染症に敏感になっている世の中では、悪気はなくてもこうしたクセは相手に不快を与えてしまうことになります。つまり、なんか「感じ悪い」のです。また、表情の管理も大切です。
二面性:好きな患者さんにはニコニコ、苦手な患者さんやスタッフへはブスっと
患者さんの前では笑顔だけど、スタッフへの接遇が悪いという人もいます。注意すると「私は患者さんにはちゃんとしてますから」とか言い返してきます。
しかしこっちの人にはニコニコで、こっちの人にはブスっとしているっていうのは「私には裏表がありますよ」と言っているようなものです。患者さんはよく見ています。こっちにニコニコしたあとの、苦手なスタッフがそばを通ったときのしかめっ面。しっかりと見ていて「二面性のある人だ」と判断していたりします。裏表がある人は、最初の印象がよくない人よりもずっと嫌われます。期待値が高いと、下がるのも早いからです。
教育コンサルタントとして病院に伺うと、私の前ではニコニコしている人が実際に投書箱に前述のような内容が入っていてがっかりすることもあります。
目つきが悪くなっていませんか。眉間のシワはなかなか消えません
視力が弱いという人も要注意です。メガネやコンタクトレンズの近視が進んでないかどうかチェックしておかないと、ついつい眉間にシワを寄せて見ることになります。先日もメガネの度が合っておらず、眉間にシワが寄 る40代の看護師さんがいましたが、患者さんやス タッフから「あの人、怖い」と恐れられていました。 20代の若々しいときには許されても、お姉さま 世代になると許されないことは多々ありま す。眉間のシワってなかなか消えないですしね。シワになる前に気をつけていきたいものです。
あなたの声の大きさは、場に合っていますか
私もお姉さま世代となり、最近、耳鳴りがひどくなってきました。耳鳴りがしていると、自然と声が大きくなります。自分が聞こえないので大きくなってしまうのですが、感覚器の問題は自分の内部の感覚なので、なかなか認識しづらいものです。友だちも知り合いも「なんとなくこの人って聴力が弱いのかな?」と気づいていることも多いのですが、本人が傷つくといけないからと 「ちょっと、声大きいよ」とは注意してくれずに、本人も気づかないということもあります。
この予防には、話したあと、相手の表情をしっかりと見たり、ときには場にそぐわない声の大きさになっていたりしないかと、周囲に確認するクセをつけておきましょう。
ノンワードとは「意味のないつなぎの言葉」。プレゼンで出るのは準備不足の証
「えっと」「まあ、その~」「あの~」などの意味のな い言葉をノンワードと呼びます。聞いていて非常に耳障りなノンワードは、プレゼンテーションならアウトです。
自信がないからとか緊張するタイプだからとか言う人もいますが、そうした人は「次に何を話そうか、伝えようか」と考えていないことが多いのです。ほとんどの場面で準備不足。会話やカンファレンスであまり発言しない人が急に当てられるとしどろもどろになって、「ええっと」「あの~」と言ったりしますが、それも準備不足の証です。カンファレンスに参加する前にはせめて1度は発言しようと、議題に対してなど自分なりの考えをもつなど準備し臨むようにしましょう。
こうした真摯な姿勢が、態度になって相手に伝わり 「感じがよい」を生むのです。