先輩、上司とのコミュニケーションってなぜすれ違う??
私は病院研修でいろんな病院の看護部長さんや師長さんにお会いします。
そのとき、部長さんや師長さんに
と聞くと、ほとんどの方はこう答えます。
でも、逆にスタッフの側の方々に
と聞くと、ほとんどの人が
と答えます。
中には上司に相談すると、結局は自分の若いころの話になり「今は昔より恵まれてんだからしっかりしなさい!」的なやりとりになるので絶対しないようにしているという人もいます。
部下は「話してもムダ」と感じているのに対し、上司は「ちゃんと聴いている」と思っている。
いったいなぜ、こんなふうにすれ違ってしまうのでしょうか?
目次
すれ違いはコミュニケーションの「型の違い」で起こる
子どもが小さかったころ、私は専業主婦をしていました。
年子で子どもを産んだので、1歳ちょっとの長女はおんぶ、次男はベビーカーに乗せてスーパーに買い物に行くのが日課でした。ベビーカーにS字フックをつけて買い物袋をぶら下げていたのですが、お米などの重いものをぶら下げるとベビーカーの操縦が上手くできず、買い物にふだんの倍の時間がかかって大変でした。
そんな日は、夫を仕事から帰って来た夫を捕まえてこんな会話をします。
と、まあこんな感じのやりとりをしていました。
このすれ違いはコミュニケーションの型の違いでおこります。
解消型コミュニケーションと解決型コミュニケーション
上記の例で私が夫に求めていたのは、
「子どもふたりを連れて買い物するのは大変なんだね。いつもご苦労さま」とか
「肩でももんであげようか?」とか
「君が家のことがんばってくれてるから俺も仕事に集中できるんだよ、ホントにありがとう」
なぁんていうラブラブな言葉でした。
これは解消型コミュニケーションといいます。
相手の感情を受けとめるように話を聴く方法で不満や負担を解消していくコミュニケーションです。
一方、夫が私にとっていたのは解決型コミュニケーションといいます。
相手が困っていることをいろんな方法を提案することで解決してあげようとするコミュニケーション方法です。
ひところ「男性脳と女性脳は違う」というようにいわれたことがありましたが、一般的に男性は解決型、女性は解消型のコミュニケーションを求める傾向があります。
※参考文献 対人力を磨く22の方法 奥山美奈著 メディカ出版
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部下は「解消」を求め、上司は「解決」を提案してすれ違う
上記のようなパターンのすれ違いが、臨床での上司と部下の間にも起こっています。
例え話で説明しましょう。
教え子のNさんは大学病院に勤めて5年です。スタッフの1人が産休で休みに入りましたが補充がありません。人手不足で業務が回らずもう限界、来年こそ辞めたいといいます。
管理職に今の気持ちを伝えたことがあるそうですが、師長にひと言「あなたは病院側にスタッフを増やせって言ってるの?それは組織としてできません」と一喝されたそうです。
Nさんは「みんな忙しくても頑張ってることをわかってほしかっただけなのに…」とがっかり。
それからは「上司に話しても時間のムダ」と思うようになり、以来師長には自分の気持ちを話すことは止めたそうです。
求めていたのは解決じゃなくて…?
彼女に仕事の場面で「もう限界」と思うのはどんなときなのかを聴いてみました。慢性的な人手不足で常に何かに追われて仕事をしなければならない看護の現場。患者さんに事務的に対応しなければならないことが彼女は1番辛いのだそうです。
例えば検温にいっても早く測って次の部屋を回らなくちゃと思うと、患者さんが話しかけてきても「また来ますね」といって会話を切りあげなくてはいけない。約束したからと勤務が終わってから患者さんのところにいって話を聴いてステーションに戻ると、主任に「そういうので時間外はつけないでね」と冷たく言われる。
「自分のやりたかった仕事って、看護ってこういうのだったの?」と思う時、彼女は「もう限界」と感じるそうです。私は病院研修でいろんな看護師さんの思いを聴きますが、多くの人がNさんと同じような気持ちを抱えています。
- 「患者さんの訴えを聴いてあげる時間がない」
- 「流れ作業のようなやりとりをしないと業務が終わらない」
- 「患者さんに十分なケアをしてあげる余裕がない」
こういった悩み、つまり罪悪感をもったまま仕事をしている看護師さんがとても多いのです。
罪悪感が解消されずにたまってくると、看護師さんのモチベーションがグンと下がってしまいます。
よくやる気がないといった表現をしますが、本来人間にはやる気は自然にそなわっているものです。みなさんはやる気のない赤ちゃんをみたことがあるでしょうか。伝え歩きができるようになった赤ちゃんは、転んでも転んでも歩くことにチャレンジしますね。
やる気や成長しようとするエネルギーは、心の底からフツフツと湧いてくる本能なのです。
本来人間は昨日より今日、今日より明日と伸びて行こうとするものなのです。
やる気がでないのは先の罪悪感のように心に重石のようなものが日々たまっていき、そのままの状態で放置しているからなのです。
気球は火を起こしそのエネルギーで上昇していきますが、重りを捨てることでも上昇していきます。人に置き換えて考えると、不満や負担、気がかりや罪悪感などの重りを下す(解消する)ことでもやる気は上がっていくものなのだということです。
「もう限界」というNさんがかろうじて来年までがんばろうと思っているのはなぜでしょうか。それはNさんの気持ちをよく理解してくれる副主任さんがいるからなのだそうです。
副主任さんはスタッフを増やしたり、業務改善をしたりと何かを解決できる立場ではないので、ただただNさんの話をじっくりと聴き、感情を受けとめてくれるのだそうです。
人は悩みごとを聴くとつい、「なんとか解決してあげなくては!」と力が入ってしまいます。変な期待をもたせてはいけないと力が入った結果、上記の師長のように「あなたは病院側にスタッフを増やせっていってるの?それは組織としてできません。」と答えてしまうのかもしれません。
Nさん自身スタッフが増えないことぐらいはわかっています。
求めていたのは解決ではなく解消型のコミュニケーションだったのです。
痛いところを突かれるほど、人は話を聴けなくなる
「ママは仕事、仕事ばっかりでどこにも連れていってくれない。私のことが大事じゃないんだ!」私は娘のこの言葉に心がズキンとしてしまいます。
それはどこにも連れていっていないというのが図星だからです。さらに「私のことが大事じゃないんだ!」という言葉に私自身が傷ついて「そんなふうにまで思わせて…」と悲しくなってしまいます。
でも心がズキンとしていながらも「こんなに仕事をがんばっているのはあなたの将来のためなのよ!」と怒鳴って自己防衛する自分もいます。
きっと上記の師長もNさんや他のスタッフにいつも「こんなに苦労させて申し訳ない。早くなんとかしなくては」と誰よりも思っているのでしょう。
人が足りない、そんなことは百も承知で毎日毎日なんとか解決しなくては!と、スタッフの何倍も頭を悩ましているのが管理職です。でも、痛いところを突かれれば突かれるほど、人は人の話を聴けなくなります。
副主任がNさんの話を聴けるのはある意味、解決できる立場にいないからなのでしょう。
相手の立場に立ってみないとわからないことも
私は子どもを持つまで「自分はあまり愛されてこなかった」と思って生きていました。でも実際に子どもを育ててみるとその考えがなんと浅はかであったかがわかりました。2、3日ミルクをあげなければ赤ちゃんは簡単に命を落とします。
間違って変なものを飲み込んでも自分では対処ができません。
赤ちゃんは誰かがいつも見守っていなければ生きのびることができないのです。
つまり、誰からの愛情も受けずに大きくなるということは不可能だということです。
たしかに私の親の見守り方には不備があったかもしれません。でも、確実に私は親の愛を受けてきたことがわかりました。恥ずかしい話ですが子どもを育ててはじめて、そのことに気がつきました。
やはり私も「親の心子知らず」だったのです。何がいいたいのかというと、やはり人は「同じ立場に立ってみてはじめてわかる」ということがたくさんあるのだと思うのです。
※参考文献 対人力を磨く22の方法 奥山美奈著 メディカ出版
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みなっちからのメッセージ☆
目の前の上司をみて「こんな嫌な人いないよ」と思うときもたくさんあるでしょう。
先輩や上司とのコミュニケーションですれ違ったとき、「上の立場にならなければわからないこともたくさんあるのかもしれないなぁ」と思ってさらっと流していくことも大切です。
すると嫌だなという思いにとらわれず、あなたの心が気球のようにふわふわと軽くなると思います。こんなふうに思って上司とかかわっていればきっと、あなたが上司の立場なったとき思いやりの深いスタッフに恵まれると思いますよ。だって時代はくり返されるのですから。
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